問題1 次の資料にもとづき、材料Xの当月の棚卸減耗費を求め、棚卸減耗費を計上する仕訳を示しなさい。なお、棚卸減耗はすべて正常な範囲内である。
〔資料〕帳簿上の月末在庫量は50kg、実地棚卸量は40kgであり、実際価格は@310円である。使用する勘定科目:材料、製造間接費。
問題2 次の資料にもとづき、材料Yの棚卸減耗費(正常8kg、異常2kg)を求め、仕訳を示しなさい。
〔資料〕帳簿上の月末在庫量は45kg、実地棚卸量は35kgであり、実際価格は@290円である。使用する勘定科目:材料、製造間接費、月次損益。
問題3 次の資料にもとづき、材料Aの材料費(予定価格法)を計算しなさい。
〔資料〕実際消費量は継続記録法により160kg、予定価格は@275円である。
問題4 次の資料にもとづき、材料Bの材料消費価格差異を求め、仕訳を示しなさい。
〔資料〕実際消費量:160kg、予定価格@280円。月初在庫:20kg(@260円)、当月購入:180kg(@310円)、月末在庫:40kg(棚卸量)、総平均法により実際単価を計算。
問題5 次の資料にもとづき、材料Cの材料消費価格差異を求め、仕訳を示しなさい。
〔資料〕実際消費量は棚卸計算法による170kg。予定価格@320円。月初在庫:20kg(@270円)、当月購入:180kg(@300円)、月末在庫:30kg(実地棚卸量)、先入先出法により実際価格を算出。
解答1
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
製造間接費 | 3,100 | 材料 | 3,100 |
解答2
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
製造間接費 | 2,320 | 材料 | 2,900 |
月次損益 | 580 |
解答3
材料費 = 275円 × 160kg = 44,000円
解答4
実際単価 = (20kg×260円+180kg×310円)÷ 200kg = 305円
実際価格による材料費 = 305円 × 160kg = 48,800円
予定価格による材料費 = 280円 × 160kg = 44,800円
材料消費価格差異 = 44,800円-48,800円 = △4,000円
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
材料消費価格差異 | 4,000 | 材料 | 4,000 |
解答5
実際価格による材料費 = 5,400+54,000-9,000=50,400円
予定価格による材料費 = 320円 × 170kg=54,400円
材料消費価格差異 = 54,400円-50,400円 = 4,000円(貸方差異)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
材料 | 4,000 | 材料消費価格差異 | 4,000 |
第1章 材料費に関する原価差異の理解
この章で学ぶこと
- 材料消費価格差異の基本概念と計算方法
- 予定価格法の考え方と実際価格との関係
- 棚卸減耗費とその処理の違い(正常・異常)
- 材料勘定と仕訳の具体的な記帳方法
第2章 材料消費価格差異とは?
材料消費価格差異とは、材料費を予定価格で計算した場合と、実際価格で計算した場合の差額を指します。材料を実際に使用したとき、企業が想定していた価格と実際にかかった価格とのズレがこの差異として表れます。
材料消費価格差異 = 予定価格による材料費 − 実際価格による材料費
■ 予定価格法とは?
原価計算の迅速性や統一性を確保するために、材料費はあらかじめ決めた「予定価格」で計算する方法が「予定価格法」です。仕掛品などへの振替処理も予定価格で行います。
◎ 計算例
実際消費量が160kg、予定単価が280円/kg のとき:
材料費 = 280円 × 160kg = 44,800円
第3章 実際価格による材料費の計算
材料の実際価格による計算には、次のような方法があります:
- 先入先出法(FIFO)
- 総平均法(Weighted Average)
これらの方法に基づいて計算された実際の材料費と予定価格で算出した材料費との差額が、材料消費価格差異になります。
◎ 差異の意味
- 差異がプラス(有利差異) → 予定より安く仕入れられた
- 差異がマイナス(不利差異) → 予定より高くなった
◎ 仕訳例(不利差異:借方差異)
(借) 材料消費価格差異 2,400円 (貸) 材料 2,400円
第4章 棚卸減耗費の処理
■ 棚卸減耗費とは?
帳簿上の在庫数量と実地棚卸による在庫数量に差異がある場合に、その差異に実際価格をかけて求める費用です。
棚卸減耗費=実際価格 ×(帳簿在庫量−実地棚卸量)
◎ 正常な減耗と異常な減耗の違い
- 正常な棚卸減耗:製造間接費に振替(原価性あり)
- 異常な棚卸減耗:営業外費用や特別損失として処理(非原価性)
◎ 仕訳例(正常減耗10kg、@295円)
(借) 製造間接費 2,950円 (貸) 材料 2,950円
◎ 仕訳例(正常8kg・異常2kg)
(借) 製造間接費 2,360円 (借) 月次損益 590円 (貸) 材料 2,950円
第5章 材料勘定と差異勘定の記帳
■ 材料勘定
材料の入出庫と差異を記録するための勘定。予定価格と実際価格のズレは、材料消費価格差異勘定に仕訳転記します。
借方 | 貸方 |
---|---|
材料購入(実際価格) | 仕掛品(予定価格) |
材料消費価格差異 | |
棚卸減耗費(実際価格) |
■ 材料消費価格差異勘定
材料勘定の貸借と対応して、差異を記録します。
材料消費価格差異の学習ポイントまとめ
- ポイント1:材料費の計算に「予定価格法」を使うと、実際の材料消費量に予定単価を掛けて材料費を計算する。
- ポイント2:予定価格で計算した材料費と実際価格で計算した材料費の差額は、「材料消費価格差異」として処理される。差額がプラスなら有利差異、マイナスなら不利差異となる。
- ポイント3:材料消費価格差異は、「材料勘定」から「材料消費価格差異勘定」に振り替える形で記帳される(借方または貸方)。
- ポイント4:棚卸減耗費は帳簿上の数量と実地棚卸量の差から算出し、実際価格を用いて金額を計算する。
- ポイント5:棚卸減耗費のうち、正常なものは「製造間接費」として処理し、異常なものは「営業外費用」や「月次損益」に計上する(非原価性扱い)。
問題解説
解説1
棚卸減耗費とは、帳簿上の材料在庫量と実際棚卸量に差がある場合に発生する、実際価格で評価された差額分の費用です。この問題では、帳簿上の在庫50kgと実地棚卸量40kgの差である10kgが減耗とされ、その価格は@310円なので、棚卸減耗費は3,100円となります。減耗が正常な範囲である場合、この費用は製造間接費として処理されるため、借方に製造間接費3,100円、貸方に材料3,100円の仕訳が行われます。正常範囲の棚卸減耗は製品製造のために避けられない損耗として扱われ、間接費として原価に含まれる性質を持ちます。
解説2
棚卸減耗費が正常・異常に分かれる場合、それぞれの処理が異なります。今回は帳簿上の在庫45kgに対し、実地棚卸が35kgで差は10kg。そのうち正常分が8kgで@290円×8kg=2,320円、異常分が2kgで@290円×2kg=580円です。正常分は製造間接費として処理されるため、借方に製造間接費2,320円、貸方に材料2,900円。異常分は原価性がないため月次損益に振り替えられ、借方に月次損益580円が加わります。このように、正常か異常かによって処理する勘定科目が変わる点がポイントです。
解説3
材料費を予定価格で計算する予定価格法では、材料の実際消費量に予定価格を乗じて計算します。この方法は材料価格の変動に左右されず、迅速な原価計算が可能であるという特徴があります。問題では、実際消費量160kgに予定価格@275円を乗じて44,000円となります。これは実際の材料購入価格にかかわらず、事前に定めた価格で計算されるため、管理会計上の利便性が高く、差異分析にもつながる計算基礎となります。
解説4
この問題では、予定価格法による材料費と実際価格による材料費との差から材料消費価格差異を算出します。予定価格280円に実際消費量160kgをかけて予定材料費は44,800円。実際価格は、月初20kg(@260円)と当月180kg(@310円)からなる平均単価305円を用い、実際材料費は48,800円。差異は-4,000円となり、これは借方差異(不利差異)とされます。仕訳は借方に材料消費価格差異4,000円、貸方に材料4,000円。平均単価の計算と差異の判断が重要なポイントです。
解説5
棚卸計算法に基づき、実際消費量を元に材料消費価格差異を計算します。予定価格による材料費は@320円×170kg=54,400円。実際材料費は月初在庫20kg(@270円)=5,400円、当月購入180kg(@300円)=54,000円、月末在庫30kg(@300円)=9,000円で、実消費額は50,400円。差異は4,000円の貸方差異(有利差異)となり、材料勘定から材料消費価格差異勘定の貸方に仕訳されます。先入先出法や月末在庫の価格設定も正確な差異計算に必要です。