問題1 次の取引について、標準原価計算制度における仕訳を示しなさい。標準価格は1個あたり200円、実際購入価格は180円、購入数量は1,000個である。材料受入価格差異勘定を用いること。
問題2 以下の差異を売上原価に振り替える仕訳を行いなさい。すべて借方差異とする。
・材料消費価格差異:2,400円
・材料消費量差異:3,000円
・直接労務費差異:5,000円
・製造間接費差異:4,000円
問題3 標準原価差異のうち、異常な原価差異として処理すべきものはどれか。最も適切なものを1つ選びなさい。
ア.材料受入価格差異
イ.材料消費量差異
ウ.能率差異
エ.操業度差異
問題4 次の資料に基づき、材料受入価格差異を算定しなさい。
標準価格:300円/kg、実際購入価格:330円/kg、実際購入量:600kg
問題5 標準原価差異をすべて売上原価、期末製品、期末仕掛品に配賦する必要があるのはどのような場合か。最も適切なものを1つ選びなさい。
ア.標準原価差異が軽微な場合
イ.異常な原価差異が発生した場合
ウ.標準原価差異が多額に生じた場合
エ.標準原価制度を採用していない場合
解答1
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
材料 | 200,000 | 買掛金 | 180,000 |
材料受入価格差異 | 20,000 |
解答2
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
売上原価 | 14,400 | 材料消費価格差異 | 2,400 |
材料消費量差異 | 3,000 | ||
直接労務費差異 | 5,000 | ||
製造間接費差異 | 4,000 |
解答3
ウ.能率差異
解答4
材料受入価格差異 = (標準価格 − 実際価格)× 実際購入量
=(300円 − 330円)× 600kg = −18,000円(借方差異)
解答5
ウ.標準原価差異が多額に生じた場合
とは
【標準原価差異の会計処理 要約】
本資料では「標準原価差異の会計処理」について、原則的な処理方法から例外的な処理方法まで体系的に説明されている。以下、各章の要点をまとめる。
■1.標準原価差異の会計処理
標準原価差異は、正常な差異か異常な差異かによって処理が異なる。正常な差異は原価に含めて売上原価または在庫に配賦され、異常な差異は非原価項目として特別損失などに計上される。標準原価差異は会計年度末に財務諸表に反映される。
■2.材料受入価格差異の会計処理
材料受入価格差異とは、標準価格と実際購入価格との差額×実際購入量で求められる。これは材料購入時に発生し、材料勘定で記帳される。年末にはこの差異を材料消費分と期末在庫に配賦することで、材料勘定の残高を実際価格ベースに調整する。
■3.標準原価差異の原則的会計処理
材料受入価格差異を除くすべての差異(消費量差異、賃率差異、作業時間差異、能率差異、操業度差異など)は原則として売上原価に振り替えられる。損益計算書上は、借方差異であれば売上原価に加算、貸方差異であれば減算する。
■4.標準原価差異の例外的会計処理
差異が比較的多額と判断される場合、原価差異は売上原価のみならず、期末製品・仕掛品にも配賦する。この処理は2つのステップで構成される。
STEP1では、材料消費価格差異(材料受入価格差異の消費分)を売上原価・期末製品・期末仕掛品・材料消費量差異に配賦。配賦基準は標準消費量である。
STEP2では、材料消費量差異・直接労務費差異・製造間接費差異を売上原価・期末製品・期末仕掛品に配賦する。これにより、各勘定が実際原価に近い金額に調整され、財務諸表の正確性が向上する。
【まとめのポイント】
- 標準原価差異の正常・異常により処理方法が異なる
- 材料受入価格差異は消費分と在庫分に配賦する
- 多額の差異は売上原価だけでなく在庫にも配賦する(例外処理)
問題解説
解説1
この問題では、標準価格200円に対して実際購入価格180円と、実際の方が安かったため価格差異が発生しています。標準原価計算制度では、材料の購入時に標準価格で記帳し、実際価格との差額を「材料受入価格差異」として処理します。仕訳は、材料勘定に標準価格×数量(200円×1,000個=200,000円)を計上し、買掛金には実際価格×数量(180円×1,000個=180,000円)を記帳。その差額20,000円が価格差異(貸方差異)となり、借方に材料受入価格差異として計上されます。これは後に消費量に応じて売上原価または在庫に配賦される項目です。
解説2
この問題では、標準原価差異がすべて借方差異(=実際原価が標準より高い)で発生しており、それらを売上原価に振り替える処理を行います。標準原価差異の会計処理における原則的な方法では、差異をすべて損益計算書の売上原価に集約します。仕訳は、借方に売上原価14,400円、貸方に4つの差異(材料消費価格差異、材料消費量差異、直接労務費差異、製造間接費差異)を並列で計上します。この仕訳によって、実際原価を反映させた売上原価に調整されます。
解説3
「能率差異」は、作業時間の効率に起因する差異であり、通常では予定に対して実際の作業時間が多すぎたり少なすぎたりする場合に発生します。これは異常な事象(突発的な機械の故障や労務トラブルなど)によって生じる可能性があり、企業の努力では回避困難なものとされるため、「異常な原価差異」として損益計算書の特別損失などに計上されます。他の選択肢(ア〜エ)のうち、材料受入価格差異や消費量差異は正常な差異の範囲内で処理されるものです。
解説4
材料受入価格差異の計算式は、(標準価格 − 実際価格)× 実際購入量です。本問では標準価格300円、実際価格330円、実際購入量600kgなので、(300 − 330)× 600 = −18,000円の借方差異が発生します。これは、材料購入価格が想定より高かったため、実際原価が増加しており、その分だけ将来の売上原価や期末在庫が調整される必要があることを意味します。
解説5
標準原価差異が「比較的多額に生じた場合」、売上原価だけでなく期末製品・期末仕掛品にも差異を配賦する必要があります。これを例外的会計処理といい、より正確な財務諸表表示のために、製品の実際原価に近づける処理です。一方、差異が軽微な場合や通常の処理であれば、すべてを売上原価に賦課する原則的会計処理で対応します。異常な差異はそもそも特別損失として処理されるため、ここでは該当しません。