簿記1級で“食いっぱぐれない”は本当か?

簿記1級は“食いっぱぐれない”?

データで見るメリット・限界・戦略——合格率・年収差・AI時代の生存戦略

#簿記1級 #経理キャリア #AI時代

「簿記1級を取れば将来安心」「どこに行っても仕事がある」といった話をよく聞きますが、果たしてそれは本当なのか。

簿記1級は、簿記2,3級に比べて勉強時間が多く大変な試験だと思います。その苦労に見合う将来があるかを、試験データ・求人データなどの複数の視点から“食いっぱぐれないか”を検証します。


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簿記1級の概要と試験データ

項目内容
資格内容日商簿記1級。商業簿記・会計学・原価計算など高度な会計知識を問う。税理士試験の受験資格になる科目多数。
合格率の目安10〜15%程度(年度・試験回による)
学習時間の目安独学で800〜1,500時間ほど。予備校/通信講座を利用した場合はもう少しかかることも。
年収差の目安簿記1級取得者と2級取得者で、平均年収差20〜30万円程度。

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簿記1級を取得するメリット

簿記1級の求人に応募できる

求人件数は、簿記2,3級より少ないですが、簿記1級の求人は年収も高く、専門性の高い求人が多いため、簿記1級に合格すれば、仕事の幅が変わります。

簿記1級の年収はいくら?」という記事でも触れましたが、当サイトで調べた各求人は、簿記1級は年収は550万円、簿記2級は490万円でしたので、1級のほうが2級よりより年収の高い、高条件の求人に申し込めます。

日商簿記1級2級年収比較図

税理士応募資格が得られる

簿記1級に合格すれば、税理士試験受験資格が得られます。(国税庁HP「税理士試験受験資格の概要」より)

ちなみに、公認会計士は受験資格は必要ありません。

資格手当がつく

簿記1級の資格手当は数千円~2万円ぐらいが多いですね。

(この金額は求人募集で検索した結果で、下のとおりです。)

業種簿記の資格手当の例
介護1級:10,000円・2級:7,000円・3級:3,000円
建築1級:10,000円
税理士事務所2級:10,000円、1級:20,000円、税理士科目1科目:20,000円
SE1級 20,000円、2級 10,000円

大学受験・推薦に有利

センター試験では、「簿記・会計」があり、簿記1級を持っていれば、とても役に立ちます。

また、推薦試験では、保有資格が優位に働くことも多いです。

簿記1級が“強み”になる業界やキャリアパス

  • 求人が多い職種・業界
    会計事務所/税理士事務所、決算・会計監査部門、管理会計・経営企画など。
  • 企業規模・業種
    上場企業・大手企業では管理会計や連結決算の担当者を求められることが多く、1級所持がアドバンテージになる。
  • キャリアステップ例
    1. 経理担当 → 決算責任者
    2. 会計事務所での経験 → 税務・監査案件を持てるポジションへ
    3. 管理会計・経営企画部門やコンサルティングへの転職

限界と注意点:万能ではない理由

  • 求人母数の制約
    簿記1級が条件の求人は2級と比べて少ない。高条件(昼高報酬・責任ある業務)が多い反面、応募先が限定される。
  • 独占業務ではない
    簿記1級を持っていても、税理士・公認会計士のような「独占業務」は持たないため、それらの資格+経験/法律知識がなければ“食いっぱぐれない保証”とはならない。
  • 地域・中小企業での評価差
    都心や大企業では1級の価値が高いが、地方・中小企業では2級で十分、というケースも多い。
  • 中小企業での採用は、簿記1級保有者は入社後転職されたくないため嫌がられる傾向がある
    中小企業では、業務内容として簿記1級まで必要ないという会社が多いです。そのため、オーバースペックになるため、簿記1級を取る(もしくは目指す)人はより大きい会社・会計事務所などへ転職する人だと考える社長・管理職は多いと思います。

AI時代に残る業務・必要な補助スキル

業務タイプAIで代替されやすいもの残るまたは付加価値が出るもの
単調な仕訳入力・定型処理自動仕訳・OCR/RPAによる処理例外処理、データ分析、内部統制・監査、リスクアセスメントなど
原価計算・財務分析モデルの計算定型モデルのテンプレート化モデル設計、応用・予測分析、経営層向けレポートの解釈力
会計法規/税法の知識変わりやすい/判断を要する部分は代替しにくい法的判断・税務アドバイス・会計適用の個別判断など
  • 補助スキル例
    • Excel/BIツール(Power BI, Tableau など)
    • ERPシステム操作(SAP, Oracle, 会計系Saas)
    • 会計基準/税法の最新アップデート理解
    • 英語での帳簿・財務報告理解・対外発信力

学習コストと回収期間

以下は仮モデルで、簿記1級取得にかかる時間と年収差から「回収期間」をざっと見積もったものです:

ケース学習時間 (h)年収差(取得前→取得後)回収までの期間の目安
独学/働きながら+最低限の講座利用800 h年収 +25万円3〜4年
フルタイム受講 or 予備校集中型1,200 h年収 +30万円4〜5年
若手で昇進見込あり・大手企業で条件良い1,000 h年収 +40万円2.5〜3年

地域・企業規模差の影響

  • 都市部 vs 地方
    東京・大阪などでは企業の規模が大きく、簿記1級+上場決算経験などが重視される。地方では中小企業中心で、2級でも業務がこなせるポジションが多い。
  • 大企業 vs 中小企業
    大企業では「複式簿記」「連結決算」「内部監査」「管理会計」などの複雑な業務があり、1級取得者が重宝されることが多い。中小企業では日常経理中心で、2級+実務経験で十分な場合が多い。

他の資格・選択肢との比較

資格/スキル所要時間・コスト得られるメリット注意点
簿記2級比較的短時間(100〜200h)/低コスト日常経理・基礎業務での就業可/初級ポジションに有用管理会計・高度な会計判断には物足りない
簿記1級高コスト/時間かかる税理士科目受験資格・上場企業での強み・転職市場での差別化求人数限定+実務経験も併せて要
税理士科目・会計士・公認会計士相当な学習量・コスト・難易度あり専門独占業務+高報酬ポジション/独立可能合格難易度・継続学習・高負荷の職務あり

まとめ:簿記1級を取れば食いっぱぐれないなのか?

簿記1級を取れば、仕事に困らないかといえばそんなことはないと思います。

というのも、簿記1級を持っていても、採用において、人柄や経歴などその他の項目のほうが経理には大切な部分となるからです。

しかし、簿記1級は簿記2級の保有者に対しては明らかに上であることが証明できるため、中規模以上の企業への就職や会計事務所への転職、では有利に働きます。

この意味では食いっぱぐれないと言えると思います。

簿記1級を「取っただけ」でとどまるのではなく、無形資産としてのスキル(判断力・会計法規知識・実務経験)として正しく活用しスキルアップするのが一番「食いっぱぐれない」方法と言えます。


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この記事を書いた人

簿記2級を取得し、現在簿記1級を勉強中。
学んだことを忘れないようにここでまとめてます。
普段は、会社で経理をしながら、経理・簿記関係の情報を発信。
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