自社利用のソフトウェアの償却の仕訳

問題 <自社利用のソフトウェアの償却の仕訳>

問1 当社は、自社業務効率化のため、新たな顧客管理システム(自社利用ソフトウェア)の開発を進めていました。本日、ソフトウェア開発を外部業者に委託する契約が締結され、当該ソフトウェアの開発費用総額が5,000,000円と確定しました。また、このソフトウェアは開発完了後、自社業務の費用を確実に削減すると見込まれています。この契約締結時の仕訳として適切なものを解答用紙に記入しなさい。なお、支払いは別途現金で行われたものとする。

問2 当社は、バリューチェーン全体の効率化を図るため、自社で利用する生産管理ソフトウェアを6,000,000円で取得しました。このソフトウェアの利用可能期間を5年と見積もり、定額法で償却しています。取得年度の翌年度に計上すべき減価償却費を計算しなさい。

問3 市場販売目的のソフトウェアを、無形固定資産として9,000,000円で計上しました。見込有効期間は3年で、販売開始時における見込販売数量は以下の通りでした。

1年目:300個、2年目:400個、3年目:200個 (合計:900個) 1年目の実績販売数量は300個でした。 2年目の期首に市場環境の変化により見込販売数量を見直した結果、2年目:200個、3年目:100個に変更されました(合計:300個)。過年度の見積りは合理的であったとします。 このソフトウェアの2年目の減価償却費を計算しなさい。

問4 当社は、自社利用の会計ソフトウェアを8,000,000円で取得し、利用可能期間を4年と見積もり、定額法で償却しています。 1年目の減価償却費を計上した後、2年目の期末において、このソフトウェアの技術革新の進展により残存利用可能期間が2年であることが判明しました。過年度の見積りは合理的であったとします。 このソフトウェアの3年目の減価償却費を計算しなさい。

問5 「会計上の見積りの変更」に関する以下の記述のうち、最も適切なものはどれか。

ア.見積りの変更が期末に判明した場合、当期の会計処理は変更後の条件に基づいて行う。

イ.自社利用のソフトウェアの資産計上は、将来の収益獲得または費用削減が確実でなくても可能である。

ウ.市場販売目的のソフトウェアにおける見込販売数量の変更は、「会計上の見積りの変更」に該当する。

エ.自社利用のソフトウェアの減価償却は、残存価額を原則として取得価額の10%とし、定額法で償却する。

<答え>

問1

借方科目金額(円)貸方科目金額(円)
ソフトウェア5,000,000現金5,000,000

問2 1,200,000円

問3 4,000,000円

問4 2,000,000円

問5


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無形固定資産:自社利用のソフトウェアと会計上の見積りの変更

今回は「自社利用のソフトウェア」の会計処理と、その後の「会計上の見積りの変更」について詳しく解説していきます。

1.自社利用のソフトウェアとは?

自社利用のソフトウェアとは、企業が自社の業務で使用し、将来の収益獲得や費用削減に貢献することを目的として制作するソフトウェアを指します。例えば、顧客管理システム、生産管理システム、会計システムなどがこれに該当します。自社で制作する場合だけでなく、完成品として購入した場合も含まれます。

このソフトウェアの制作費や購入費は、一定の条件を満たせば、貸借対照表(B/S)の無形固定資産の区分に『ソフトウェア』として計上されます。

(1)自社利用のソフトウェアの資産計上の要件

自社利用のソフトウェアの制作費を資産として計上できるかどうかは、**「将来の収益獲得または費用削減が確実であるか否か」**で判断します。

具体的に、将来の収益獲得または費用削減が確実と認められるケースとしては、以下のような場合があります。

  • ソフトウェアを用いて外部にサービスを提供する契約が既に締結されている場合
  • 完成品のソフトウェアを他社から購入した場合

一方で、独自の仕様を持つ社内利用ソフトウェアを自社で制作したり、外部に委託して制作したりするだけでは、その時点では将来の収益獲得や費用削減が確実になったとは言えません。この「確実性」の判断が、資産計上の重要なポイントとなります。

(2)自社利用のソフトウェアの減価償却の方法

自社利用のソフトウェアを資産計上した場合、その価値は時間の経過とともに減少していくと考えられますので、減価償却を行います。償却の方法は以下の通りです。

  • 残存価額:0
  • 償却方法:定額法
  • 償却期間:利用可能期間(原則として5年以内

例えば、自社利用のソフトウェアを6,000円で取得し、利用可能期間を5年と見積もった場合、毎年の減価償却費は 6,000円 ÷ 5年 = 1,200円 となります。

2.会計上の見積りの変更

企業活動においては、将来の予測に基づいて会計処理を行うことが多々あります。しかし、時間の経過とともに状況が変化し、当初の見積もりを見直す必要が生じることがあります。これを**「会計上の見積りの変更」**と呼びます。

ソフトウェアの会計処理においても、この見積りの変更は重要な論点となります。

(1)見積りの変更の対象となるソフトウェア

見積りの変更は、以下のようなケースで発生します。

  • 市場販売目的のソフトウェア:見込販売数量や見込販売収益に変更が生じた場合。
  • 自社利用のソフトウェア:利用可能期間に変更が生じた場合。

(2)見積りの変更時の会計処理の考え方

見積りの変更があった場合、最も重要なのは**「見積りを変更した時点」に注目して会計処理を行う**という点です。変更後の条件を使った計算は、「見積りを変更した時点」より後の期間において行います。

具体的な適用時期は以下の通りです。

  • 見積りの変更が期首に行われた場合:当期から変更後の条件に基づいて会計処理を行います。
  • 見積りの変更が期末に行われた場合:当期は変更前の条件に基づいて会計処理を行い、次期から変更後の条件に基づいて会計処理を行います。

例えば、期末に見積りの変更が判明したとしても、その期の会計処理は変更前の条件で行い、翌期から新しい条件を適用することになります。これは、有形固定資産の減価償却において耐用年数の変更があった場合と同様の考え方です。


【問題解説】

問1 この問題は、自社利用のソフトウェアの資産計上に関する仕訳問題です。ソフトウェアの制作費を資産として計上できるかどうかは、「将来の収益獲得または費用削減が確実であるか否か」で判断されます。本問では、外部業者への委託契約が締結され、かつ自社業務の費用削減が「確実に」見込まれるとされています。この確実性の要件を満たすため、開発費用5,000,000円は無形固定資産であるソフトウェアとして計上することができます。

仕訳を考える際には、ソフトウェアという資産が増加し、現金という資産が減少するという資金の流れを捉えます。ソフトウェアは貸借対照表の借方に計上されるため、増加は借方、減少は貸方となります。したがって、借方に「ソフトウェア」5,000,000円、貸方に「現金」5,000,000円を記入します。この仕訳により、企業の資産としてソフトウェアが計上され、将来の費用削減に貢献する経済的資源が明確になります。

問2 この問題は、自社利用のソフトウェアの減価償却費の計算に関する基本問題です。自社利用のソフトウェアの減価償却は、残存価額ゼロ、定額法、償却期間は利用可能期間(原則として5年以内)で行われます。本問では、取得価額6,000,000円、利用可能期間5年と与えられています。

定額法による減価償却費の計算式は次の通りです。 減価償却費 = 取得価額 ÷ 利用可能期間 この場合、減価償却費 = 6,000,000円 ÷ 5年 = 1,200,000円となります。 取得年度の翌年度も、この計算式に基づいて減価償却費を計上するため、1,200,000円が計上されます。自社利用のソフトウェアは、その利用によって収益獲得や費用削減に貢献するため、その取得費用を合理的な期間にわたって費用配分することが求められます。

問3 この問題は、市場販売目的のソフトウェアにおいて、期首に見積りの変更があった場合の減価償却費の計算です。「会計上の見積りの変更」は、「見積りを変更した時点」に注目し、その時点より後の期間は変更後の条件で会計処理を行います。本問では2年目の期首に見積りの変更が行われたため、2年目からは変更後の見込販売数量に基づいて償却を行います。

まず、1年目の償却費を計算します。 未償却残高を計算するために、まず1年目の償却を確定させます。市場販売目的のソフトウェアは通常、見込販売数量などに基づいて償却します。 初期の見込販売数量合計:300個 + 400個 + 200個 = 900個 1年目の償却費 = 9,000,000円 × (1年目見込販売数量300個 ÷ 合計見込販売数量900個) = 9,000,000円 × (300/900) = 3,000,000円

次に、1年目償却後の未償却残高を計算します。 未償却残高 = 9,000,000円 – 3,000,000円 = 6,000,000円

2年目の期首に見積り変更があったため、2年目以降は変更後の見込販売数量を適用します。 変更後の見込販売数量(2年目以降の合計):200個 (2年目) + 100個 (3年目) = 300個 2年目の減価償却費 = 未償却残高6,000,000円 × (2年目見込販売数量200個 ÷ 変更後合計見込販売数量300個) = 6,000,000円 × (200/300) = 4,000,000円

このように、期首の見積り変更は、当期の会計処理から影響を与えるため、変更後の情報を適用して減価償却費を計算することが重要です。

問4 この問題は、自社利用のソフトウェアにおいて、期末に見積りの変更があった場合の減価償却費の計算です。自社利用のソフトウェアの減価償却は定額法で行われます。また、「会計上の見積りの変更」が期末に判明した場合、当期(2年目)は変更前の条件で会計処理を行い、次期(3年目)から変更後の条件で会計処理を行います。

まず、1年目と2年目の減価償却費を計算します。 初期の減価償却費 = 8,000,000円 ÷ 4年 = 2,000,000円 1年目減価償却費:2,000,000円 2年目の期末に見積り変更があったため、2年目の会計処理は変更前の条件で行います。 2年目減価償却費:2,000,000円

次に、2年目償却後の未償却残高を計算します。 未償却残高 = 8,000,000円 – 2,000,000円 (1年目) – 2,000,000円 (2年目) = 4,000,000円

3年目からは変更後の条件を適用します。残存利用可能期間が2年と判明したため、残りの未償却残高をこの2年で均等に償却します。 3年目の減価償却費 = 未償却残高4,000,000円 ÷ 残存利用可能期間2年 = 2,000,000円

このように、期末に見積りの変更があった場合、当期は変更前の会計処理を継続し、翌期から新しい条件を適用するというルールを正確に理解しておくことが、解答の鍵となります。

問5 この問題は、「会計上の見積りの変更」に関する知識を問う選択肢問題です。各選択肢を検討しましょう。

  • ア.見積りの変更が期末に判明した場合、当期の会計処理は変更後の条件に基づいて行う。 これは誤りです。見積りの変更が期末に判明した場合、当期は変更前の条件で会計処理を行い、次期から変更後の条件で会計処理を行います。
  • イ.自社利用のソフトウェアの資産計上は、将来の収益獲得または費用削減が確実でなくても可能である。 これは誤りです。自社利用のソフトウェアの制作費は、将来の収益獲得または費用削減が確実な場合に資産計上できるとされています。確実でなければ費用として処理されます。
  • ウ.市場販売目的のソフトウェアにおける見込販売数量の変更は、「会計上の見積りの変更」に該当する。 これは正しい記述です。市場販売目的のソフトウェアにおいて、見込販売数量や見込販売収益に変更が生じた場合、それは「会計上の見積りの変更」に該当します。
  • エ.自社利用のソフトウェアの減価償却は、残存価額を原則として取得価額の10%とし、定額法で償却する。 これは誤りです。自社利用のソフトウェアの減価償却は、残存価額ゼロ、定額法、償却期間は利用可能期間(原則として5年以内)で行われます。

したがって、最も適切な記述はウとなります。


【まとめ】

  • ポイント1:自社利用のソフトウェアの資産計上要件 将来の収益獲得または費用削減が確実と認められる場合に、制作費等を無形固定資産として計上できます。外部へのサービス提供契約が締結済みの場合や完成品を購入した場合は確実と認められますが、自社制作や外部委託のみでは確実とは言えません。
  • ポイント2:自社利用のソフトウェアの減価償却方法 残存価額はゼロ、償却方法は定額法、償却期間は**利用可能期間(原則5年以内)**で減価償却を行います。
  • ポイント3:会計上の見積りの変更の適用範囲 市場販売目的のソフトウェアにおける見込販売数量・収益の変更や、自社利用のソフトウェアにおける利用可能期間の変更などが「会計上の見積りの変更」に該当します。
  • ポイント4:見積りの変更時の会計処理の基準 最も重要なのは**「見積りを変更した時点」**に着目することです。変更後の条件は、その時点より後の期間に適用されます。
  • ポイント5:期首・期末での見積り変更の適用時期 期首に見積りが変更された場合は当期から新しい条件で会計処理を行い、期末に変更された場合は当期は変更前の条件で処理し、次期から新しい条件で会計処理を行います。
簿記の勉強ではなく実務上の扱いについて

法人税等のルールで金額によって処理方法が異なり、資産計上する場合と経費計上する場合があります。

  • 取得価額が10万円未満の場合: 少額減価償却資産として経費処理が可能です。経理上は「消耗品費」の勘定科目を用い、年内に費用として経費計上します。
  • 取得価額が10万円以上20万円未満の場合: 「一括償却資産」として扱われるため、3年間で計上することが可能です。
  • 取得価額が20万円未満の場合: 「一括償却資産」として処理することができ、これにより耐用年数3年で減価償却できます。

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この記事を書いた人

簿記2級を取得し、現在簿記1級を勉強中。
学んだことを忘れないようにここでまとめてます。
普段は、会社で経理をしながら、経理・簿記関係の情報を発信。
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