【簿記1級対策】新株予約権・新株予約権付社債の発行から期末処理のポイント

問題

問1 当社は、X5年7月1日に新株予約権を発行しました。以下の条件に基づいて、この発行時の仕訳を示しなさい。

  • 新株予約権の発行数:50個(新株予約権1個につき10株)
  • 新株予約権の払込金額:1個につき80円
  • 行使価額:1株につき30円
  • 払込金はすべて当座預金とした。

問2 問1で発行した新株予約権のうち、X6年9月1日に30個が権利行使されました。以下の条件に基づいて、この権利行使時の仕訳を示しなさい。

  • 行使価額:1株につき30円
  • 交付する株式はすべて新株を発行した。
  • 資本金の計上額は会社法規定の最低限度額とする。
  • 払い込まれた金額はすべて当座預金とした。

問3 問1で発行した新株予約権のうち、X6年10月1日に残りの20個が権利行使されました。以下の条件に基づいて、この権利行使時の仕訳を示しなさい。

  • 行使価額:1株につき30円
  • 交付する株式のうち、50株は自己株式(帳簿価額1,300円)とし、残りは新株を発行した。
  • 資本金の計上額は会社法規定の最低限度額とする。
  • 払い込まれた金額はすべて当座預金とした。

問4 当社は、X1年4月1日に新株予約権付社債を発行しました。以下の条件に基づいて、この発行時の仕訳を示しなさい。なお、区分法により会計処理し、払込金は当座預金とした。

  • 社債の償還期間は4年。券面利息は付さない。
  • 償却原価法(定額法)を適用する。
  • 社債の額面金額は4,000円(40口、1口あたり100円)
  • 新株予約権の付与割合は、社債1口につき1個。新株予約権1個につき10株を発行する。
  • 社債の払込金額:1口につき80円
  • 新株予約権の払込金額:1個につき20円

問5 問4で発行した新株予約権付社債のうち、X3年4月1日に新株予約権の50%(20個)が代用払込により権利行使され、新株が発行されました。以下の条件に基づいて、この代用払込による権利行使時の仕訳を示しなさい。

  • 区分法により会計処理する。
  • 資本金の計上額は会社法規定の最低限度額とする。


<答え>

問1

借方金額貸方金額
当座預金4,000新株予約権4,000

問2

借方金額貸方金額
新株予約権2,400資本金5,700
当座預金9,000資本準備金5,700

問3

借方金額貸方金額
新株予約権1,600自己株式1,300
当座預金6,000その他資本剰余金600
資本金2,850
資本準備金2,850

問4

借方金額貸方金額
当座預金4,000社債3,200
新株予約権800

問5

借方金額貸方金額
新株予約権400資本金1,100
社債1,800資本準備金1,100

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新株予約権と新株予約権付社債の会計処理:発行者側の視点

企業が資金調達を行う際によく利用される「新株予約権」と、それに派生する「新株予約権付社債」について、特に発行者側の会計処理に焦点を当てて解説していきます。

新株予約権とは

新株予約権とは、発行した株式会社に対して権利を行使することによって、あらかじめ決められた価額でその会社の株式の交付を受けることができる権利をいいます。これは会社法上の権利であり、企業が従業員のインセンティブ付与や資金調達の手段として活用することがあります。

新株予約権を取得するメリット(補足)

新株予約権の会計処理を理解する上で、まず取得者側(権利を持つ側)のメリットを簡単に把握しておくと、発行者側の処理もイメージしやすくなります。例えば、A社株式を買える権利(新株予約権)を取得した投資家がいるとします。もし将来的にA社株式の時価が上昇すれば、権利を行使して、あらかじめ決められた低い価額で株式を取得し、市場で売却することで差額の利益を得ることができます。逆に株価が上昇しなければ、権利を行使しなければ良いだけなので、損失は新株予約権の購入代金(払込金額)に限定されます。取得者側は新株予約権を有価証券として扱います。

発行者側は、この新株予約権の発行によって、まず「払込金額」を受け取り、その後権利が行使された際には「行使価額」を受け取る、という2回の払い込みを受けます。

新株予約権の発行時の会計処理(発行者側)

新株予約権を発行し、その対価として払込金額を受け取った時点では、まだ株式が交付されるわけではありません。そのため、この時点では「資本金」として計上するのではなく、純資産の部に「新株予約権」という勘定科目で計上します。

【設例:発行時の仕訳】 当社は、X5年4月1日に新株予約権100個を発行しました。新株予約権1個あたりの払込金額は100円でした。

この場合、発行時に受け取った金額は以下のようになります。 払込金額:@100円 × 100個 = 10,000円

仕訳は次のようになります。

借方金額貸方金額
当座預金10,000新株予約権10,000

(新株予約権の発行時)

新株予約権の権利行使時の会計処理(発行者側)

新株予約権の権利が行使されると、発行者は「新株予約権」の帳簿価額(発行時の払込金額)と、新たに払い込まれた「行使価額」を合計した金額を株主資本として計上します。具体的には、純資産の部に計上されていた「新株予約権」を取り崩し、行使価額として受け取った現金とともに「資本金」へと振り替えます。

ここで重要になるのが、会社法で定められた資本金の計上に関する規定です。通常、株式の発行によって払い込まれた金額の2分の1以上を資本金として計上しなければならず、残額は「資本準備金」として計上することができます。また、自己株式を交付する場合、その自己株式の処分によって生じた差益は「その他資本剰余金」として処理されます。

【設例:権利行使時の仕訳】 上記の設例において、X6年4月1日に新株予約権のうち90個が権利行使されました。行使価額は1株につき50円、新株予約権1個につき20株が交付されます。払込金額は全額資本金とします。

このケースでは、まず新株予約権の1個あたりのデータから総額を整理します。

  • 権利行使された新株予約権の払込金額:@100円 × 90個 = 9,000円
  • 行使価額:1個あたり20株 × @50円/株 = 1,000円/個
  • 権利行使によって払い込まれる行使価額総額:@1,000円 × 90個 = 90,000円

仕訳は次のようになります。

借方金額貸方金額
新株予約権9,000資本金99,000
当座預金90,000

(新株予約権の権利行使時)

払込金額と行使価額を合わせた99,000円が資本金となります。

新株予約権の権利行使期間満了時の会計処理(発行者側)

新株予約権が行使されないまま権利行使期間が満了し、失効した場合、発行者側は純資産の部に計上されていた「新株予約権」の残高を、損益計算書(P/L)の特別利益に「新株予約権戻入益」として計上します。

【設例:失効時の仕訳】 上記の設例において、X7年3月31日に、新株予約権の残り10個が権利行使されずに期限が到来しました。

  • 失効した新株予約権の払込金額:@100円 × 10個 = 1,000円

仕訳は次のようになります。

借方金額貸方金額
新株予約権1,000新株予約権戻入益1,000

(新株予約権の失効時)

なお、取得者側では、失効した新株予約権の帳簿価額を「新株予約権未行使損」としてP/L特別損失に計上します。

新株予約権付社債とは

次に、新株予約権と社債が一体となった「新株予約権付社債」について見ていきましょう。 新株予約権付社債とは、文字通り新株予約権が付与された社債のことをいいます。

「社債」は負債の部に計上される項目であり、「新株予約権」は純資産の部に計上される項目です。この2つがワンセットになることで、新株予約権の所有者(投資家)は、権利行使時の現金払い込みに代えて、保有している社債を払い込みに充てることができる、というメリットが生まれます。これを「代用払込」といいます。通常の(独立した)新株予約権は現金で払い込むのに対し、新株予約権付社債では社債による代用払込が選択できる場合がある、と理解してください。

新株予約権付社債の種類

新株予約権付社債には、主に以下の2つのタイプがあります。

  1. 転換社債型新株予約権付社債(CB)
    • このタイプは、新株予約権の権利行使時に必ず代用払込を行うことがあらかじめ決められています。つまり、負債である「社債」が純資産である「資本金」へと“転換”されることを前提とした社債です。
  2. 転換社債型以外の新株予約権付社債
    • このタイプでは、権利行使時に代用払込を行うか、それとも現金で払い込むかを選択することができます。代用払込を選択しない場合は、新株予約権部分については通常の現金払込による権利行使と同様の処理となります。

新株予約権付社債の会計処理(発行者側)

新株予約権付社債の発行者側の会計処理には、「区分法」と「一括法」という2つの方法があります。これらの違いは、新株予約権付社債を構成する「新株予約権部分」と「社債部分」を分けて処理するか、まとめて処理するかの点にあります。

区分法による会計処理

区分法は、新株予約権付社債を「社債」と「新株予約権」に区分して会計処理する方法です。この方法は、転換社債型と転換社債型以外のどちらの新株予約権付社債でも認められています

社債部分については、償還期間に応じて償却原価法(定額法など)を適用し、帳簿価額を調整していくことになります。

【設例:区分法による発行時の仕訳】 当社は、X1年4月1日に新株予約権付社債を発行しました。社債の額面金額は100,000円、払込金額は95,000円。新株予約権の払込金額は5,000円でした。償還期間は5年です。

  • 発行時に受け取った合計金額:95,000円(社債)+ 5,000円(新株予約権)= 100,000円

仕訳は次のようになります。

借方金額貸方金額
当座預金100,000社債95,000
新株予約権5,000

(新株予約権付社債の発行時)

【設例:区分法による権利行使時(代用払込)の仕訳】 上記設例から2年経過したX3年4月1日に、新株予約権のすべてについて代用払込による権利行使を受け、新株を発行しました。払込金額は全額資本金とします。

代用払込に充てられる社債の金額は、その時点の社債の帳簿価額となります。償却原価法(定額法)により社債の帳簿価額を計算します。

  • 1年あたりの償却額:(額面100,000円 - 払込金額95,000円)÷ 5年 = 1,000円
  • X3年4月1日時点の社債帳簿価額:95,000円 + (1,000円 × 2年) = 97,000円

仕訳は次のようになります。

借方金額貸方金額
新株予約権5,000資本金102,000
社債97,000

(代用払込による権利行使時)

新株予約権の払込金額と社債の帳簿価額の合計が資本金になります。

【設例:区分法による権利行使時(現金払込)の仕訳】 上記設例から2年経過したX3年4月1日に、新株予約権のすべてについて現金払込による権利行使を受け、新株を発行しました。新株予約権の権利行使価額は100,000円です。払込金額は全額資本金とします。

仕訳は次のようになります。

借方金額貸方金額
新株予約権5,000資本金105,000
当座預金100,000

(現金払込による権利行使時)

現金払込の場合、新株予約権部分については通常の新株予約権の権利行使と同様に処理されます。社債部分は、新株予約権の行使とは関係なく社債として処理を続けます。

一括法による会計処理

一括法は、新株予約権付社債の「社債部分」と「新株予約権部分」を分けずに、すべてを「社債」として一括して処理する方法です。この方法は、転換社債型新株予約権付社債においてのみ認められています。なぜなら、転換社債型は必ず代用払込が行われるため、社債と新株予約権を区分する実益が乏しく、簡便な処理が許容されているからです。

【設例:一括法による発行時の仕訳】 当社は、X1年4月1日に転換社債型新株予約権付社債を発行しました。社債の額面金額は100,000円、払込金額は95,000円、新株予約権の払込金額は5,000円でした。

発行時に受け取った合計金額は100,000円ですが、これをすべて「社債」として計上します。

借方金額貸方金額
当座預金100,000社債100,000

(転換社債型新株予約権付社債の発行時)

【設例:一括法による権利行使時(代用払込)の仕訳】 上記設例から2年経過したX3年4月1日に、新株予約権のすべてについて代用払込による権利行使を受け、新株を発行しました。払込金額は全額資本金とします。

一括法の場合、権利行使によって社債の帳簿価額がすべて資本金へと転換されます。

借方金額貸方金額
社債100,000資本金100,000

(代用払込による権利行使時)

このように、一括法では社債の帳簿価額がそのまま資本金に振り替えられる形となります。

計算問題を解く上でのポイント

新株予約権や新株予約権付社債の計算問題では、複数の金額や条件が提示されるため、混乱しがちです。問題を解く際には、「新株予約権1個あたり」や「新株予約権付社債1口あたり」でデータを整理すると、計算がスムーズに進みます。特に、払込金額、行使価額、交付される株式数などの基本データをしっかりと把握することが重要です。




【問題解説】

問1 解説

この問題は、新株予約権を発行した際の会計処理を問うものです。新株予約権の発行時には、払い込まれた金額はまだ資本金にはならず、純資産の部に「新株予約権」として計上することがポイントです。これは、まだ株式が交付されていない状態であるためです。

まず、払い込まれた総額を計算します。

  • 新株予約権の払込金額は1個につき80円、発行数は50個です。
  • したがって、払込総額 = @80円 × 50個 = 4,000円 となります。

この4,000円が当座預金に払い込まれ、貸方には「新株予約権」として計上されます。仕訳は、当座預金が増加し、純資産の部の新株予約権も増加する形となります。この処理は、将来の権利行使に備えて、権利行使の対象となる価値を明確にしておくためのものです。新株予約権の行使価額については、発行時の仕訳には直接影響しませんが、将来の権利行使時に必要となるデータとして、常に意識しておく必要があります。

問2 解説

この問題は、新株予約権が権利行使された際の会計処理を問うものです。特に、会社法規定の最低限度額を資本金とする点が重要です。権利行使時には、発行時に計上した「新株予約権」の帳簿価額を取り崩し、同時に行使価額として現金を受け入れ、これらを合算して「資本金」と「資本準備金」に振り分けることになります。

まず、権利行使によって生じる各金額を整理します。

  1. 減少する新株予約権の簿価:問1で計上した払込金額@80円 × 30個 = 2,400円
  2. 権利行使によって払い込まれる行使価額
    • 新株予約権1個につき10株交付され、行使価額は1株につき30円です。
    • 1個あたりの行使価額 = 10株 × @30円 = 300円
    • 権利行使された30個の行使価額総額 = @300円 × 30個 = 9,000円
  3. 払い込まれた総額(資本金・資本準備金の対象額)
    • 新株発行に相当する金額 = 新株予約権簿価2,400円 + 行使価額9,000円 = 11,400円

「資本金の計上額は会社法規定の最低限度額とする」とあるため、この新株発行に相当する金額11,400円の2分の1を資本金とし、残りの2分の1を資本準備金とします。

  • 資本金 = 11,400円 ÷ 2 = 5,700円
  • 資本準備金 = 11,400円 ÷ 2 = 5,700円

この仕訳では、貸方で当座預金が増加するとともに、純資産の部の新株予約権が減少し、資本金と資本準備金が増加します。これにより、新株予約権が実際に株式に転換された会計的な実態が表現されます。

問3 解説

この問題は、問2と同様に新株予約権の権利行使時の会計処理ですが、今回は自己株式を交付するケースが含まれているため、より複雑になります。特に、自己株式の処分対価と帳簿価額との差額(処分差益または処分差損)の処理、そしてそれが資本金・資本準備金の計算に与える影響を理解することが重要です。

まず、権利行使によって生じる各金額を整理します。

  1. 減少する新株予約権の簿価:問1の残り20個分、払込金額@80円 × 20個 = 1,600円
  2. 権利行使によって払い込まれる行使価額
    • 1個あたりの行使価額 = 10株 × @30円 = 300円
    • 権利行使された20個の行使価額総額 = @300円 × 20個 = 6,000円
  3. 払い込まれた総額(資本金・資本準備金の対象額)
    • 新株予約権簿価1,600円 + 行使価額6,000円 = 7,600円
  4. 交付する株式の内訳
    • 総交付株式数 = 10株/個 × 20個 = 200株
    • 自己株式で交付する株数:50株 (帳簿価額1,300円)
    • 新株として発行する株数:200株 – 50株 = 150株

次に、払い込まれた総額7,600円を自己株式の処分と新株発行に割り当てます。

  • 自己株式の処分に相当する金額:7,600円 × (50株 / 200株) = 1,900円
  • 新株の発行に相当する金額:7,600円 × (150株 / 200株) = 5,700円

ここで、自己株式の処分差額を確認します。

  • 処分対価1,900円 – 自己株式帳簿価額1,300円 = 600円(自己株式処分差益) 処分差益が出ているため、資本の空洞化の問題は生じません。この処分差益は「その他資本剰余金」として処理します。

新株発行に相当する金額5,700円について、「資本金の計上額は会社法規定の最低限度額」とするため、その2分の1を資本金、残りを資本準備金とします。

  • 資本金 = 5,700円 ÷ 2 = 2,850円
  • 資本準備金 = 5,700円 ÷ 2 = 2,850円

これらの計算結果を基に、適切な仕訳を構成します。自己株式の減少、当座預金の増加、新株予約権の減少、そして資本金、資本準備金、その他資本剰余金の増加を適切に計上することが求められます。

問4 解説

この問題は、新株予約権付社債を区分法で発行した場合の会計処理を問うものです。区分法では、新株予約権付社債を「社債」部分と「新株予約権」部分に分けて認識し、それぞれ異なる勘定科目で計上します。これが一括法との決定的な違いです。

まず、新株予約権付社債全体の払込総額を把握し、それを社債部分と新株予約権部分に区分します。

  • 社債の発行数:40口
  • 社債1口あたりの払込金額:80円
  • 社債部分の払込総額(発行時の帳簿価額)= @80円 × 40口 = 3,200円
  • 新株予約権の付与数:社債1口につき1個、なので40口 × 1個/口 = 40個
  • 新株予約権1個あたりの払込金額:20円
  • 新株予約権部分の払込総額 = @20円 × 40個 = 800円

発行によって当座預金に払い込まれる金額は、社債部分と新株予約権部分の合計となります。

  • 当座預金増加額 = 3,200円 + 800円 = 4,000円

仕訳では、借方に当座預金の増加額を、貸方に社債部分と新株予約権部分をそれぞれ「社債」と「新株予約権」として計上します。社債部分については、償還原価法(定額法)が適用されるため、発行時の帳簿価額から償還期間にわたって額面金額に向けて調整されることを念頭に置く必要があります。この時点ではまだ償却計算は不要ですが、将来の権利行使時や償還時に影響してきます。

問5 解説

この問題は、区分法で発行された新株予約権付社債が、代用払込によって権利行使された際の会計処理を問うものです。代用払込の場合、新株予約権の行使価額に相当する部分が現金ではなく、社債の帳簿価額によって賄われる点が特徴です。また、会社法規定の最低限度額を資本金とする点も考慮が必要です。

まず、権利行使される新株予約権の数を特定し、それに伴う各金額を計算します。

  • 権利行使される新株予約権の数:40個の50% = 20個

次に、権利行使によって減少する新株予約権と、代用払込に充てられる社債の帳簿価額を計算します。

  1. 減少する新株予約権の簿価:問4で計上した払込金額@20円 × 20個 = 400円
  2. 代用払込に充てられる社債の帳簿価額
    • 償却原価法(定額法)の1年あたり償却額:(額面4,000円 – 払込金額3,200円) ÷ 4年 = 200円
    • X3年4月1日時点の社債帳簿価額(発行から2年経過):3,200円 + (200円 × 2年) = 3,600円
    • 代用払込に充てられる社債の口数:20個の新株予約権に対応する社債20口
    • 代用払込に充てられる社債の帳簿価額 = (3,600円 ÷ 40口) × 20口 = 1,800円 (または、社債全体が3,600円で20口は全体の50%なので、3,600円 × 50% = 1,800円)
  3. 払い込まれた総額(資本金・資本準備金の対象額)
    • 新株予約権簿価400円 + 代用払込に充てられた社債帳簿価額1,800円 = 2,200円

「資本金の計上額は会社法規定の最低限度額とする」ため、この2,200円の2分の1を資本金、残りを資本準備金とします。

  • 資本金 = 2,200円 ÷ 2 = 1,100円
  • 資本準備金 = 2,200円 ÷ 2 = 1,100円

この仕訳では、借方で純資産の部の新株予約権が減少し、負債の部の社債も減少し、貸方で資本金と資本準備金が増加します。代用払込の場合、現金ではなく社債が払い込まれる形となるため、当座預金の動きがない点に注意が必要です。

【まとめ】

  • ポイント1:新株予約権の定義と会計処理の基本
    • 新株予約権は、将来、あらかじめ決められた価額で株式を取得できる権利です。
    • 発行者側は、発行時に払込金額を「新株予約権」(純資産)として計上し、権利行使時には行使価額と合わせて「資本金」に振り替えます。
    • 失効した場合は、「新株予約権戻入益」(特別利益)として処理します。
  • ポイント2:新株予約権の権利行使時の「資本金の計上額」と「自己株式」の扱い
    • 権利行使時に払い込まれた金額のうち、会社法規定の最低限度額(原則として2分の1以上)を資本金とし、残りを資本準備金とします。
    • 自己株式を交付した場合は、自己株式処分差益はその他資本剰余金として処理します。差損が出た場合は資本金・資本準備金の計算に影響します。
  • ポイント3:新株予約権付社債の定義と「代用払込」「転換社債型」の理解
    • 新株予約権付社債は、新株予約権が付与された社債で、権利行使時に**現金に代えて社債で払い込む(代用払込)**ことができます。
    • 転換社債型新株予約権付社債は、代用払込が強制されるタイプです。
  • ポイント4:新株予約権付社債における区分法と一括法の違い、適用範囲
    • 区分法は、社債部分と新株予約権部分を分けて処理し、すべての新株予約権付社債に適用できます。代用払込時には社債の帳簿価額を使用します。
    • 一括法は、両部分をまとめて「社債」として処理する簡便な方法で、転換社債型新株予約権付社債にのみ適用可能です。
  • ポイント5:計算問題におけるデータ整理の重要性
    • 新株予約権や新株予約権付社債の計算問題を解く際は、「新株予約権1個あたり」や「新株予約権付社債1口あたり」で、払込金額、行使価額、交付株式数などの基本データを整理すると、正確かつ効率的に解答できます。

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この記事を書いた人

簿記2級を取得し、現在簿記1級を勉強中。
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