管理会計の基礎と経営意思決定:原価・利益管理から貨幣の時間価値まで

問題

【資料】 以下の問題では、年利率(割引率)を8%とし、以下の現価係数表および年金現価係数表を使用してください。計算で端数が生じる場合は、最終解答の円未満を四捨五入してください。

現価係数表(割引率8%)

期間(年)現価係数
1年0.9259
2年0.8573
3年0.7938
4年0.7350
5年0.6806

年金現価係数表(割引率8%)

期間(年)年金現価係数
1年0.9259
2年1.7832
3年2.5771
4年3.3121
5年3.9927

問1 現在1,000,000円を年利率8%で預金した場合、3年後の将来価値はいくらになりますか。


問2 5年後に2,000,000円を受け取る権利がある場合、その2,000,000円の現在の価値はいくらですか。


問3 ある機械を導入すると、1年後から4年間にわたり、毎年500,000円のキャッシュフロー(純収益)が発生すると見込まれています。この将来のキャッシュフローの合計現在価値はいくらになりますか。


問4 投資案件Aと投資案件Bのどちらかを選択する場合の意思決定に関する以下の記述のうち、誤っているものを1つ選びなさい。

ア.複数の投資案件を比較する際には、貨幣の時間価値を考慮して現在価値に換算する必要がある。 イ.将来得られるキャッシュフローの現在価値が高い案件ほど、企業にとって有利である可能性が高い。 ウ.設備投資の意思決定は、企業の基本的な構造に関わる「構造的意思決定」に分類される。 エ.現在価値を計算する際の割引率が高いほど、将来のキャッシュフローの現在価値は高くなる。


問5 以下の情報に基づいて、3年後に一括で支払われる2,500,000円と、1年後から2年間にわたり毎年1,200,000円ずつ支払われる2つのキャッシュフローの現在の価値の合計額を計算しなさい。


<答え>

問1 1,259,712円

問2 1,361,200円

問3 1,656,050円

問4 エ.現在価値を計算する際の割引率が高いほど、将来のキャッシュフローの現在価値は高くなる。

問5 4,124,340円

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設備投資に関する意思決定に不可欠な「貨幣の時間価値」をマスターしよう!

簿記1級の学習、お疲れ様です。管理会計の分野では、企業の将来を左右する重要な意思決定を行う際に、様々な情報が必要となります。特に、高額な投資を伴う「設備投資に関する意思決定」では、単に現在の数字を見るだけでなく、**「貨幣の時間価値」**という概念を理解し、計算に組み入れることが不可欠です。

本記事では、この「貨幣の時間価値」の基本的な考え方から、実際の計算に役立つ「現価係数」や「年金現価係数」の使い方までを、簿記2級で培った知識を土台として、分かりやすく解説していきます。

1. 貨幣の時間価値とは?

「貨幣の時間価値」という言葉は少し難しく聞こえるかもしれませんが、その考え方は非常にシンプルです。それは、「お金の価値は時間の経過によって変わる」という考え方です。

例えば、皆さんは「現在の100万円」と「1年後の100万円」を比較したとき、どちらの価値が高いと感じるでしょうか?もし現在手元に100万円があれば、それを銀行に預金したり、投資に回したりすることで、利息や利益を得て増やすことができますよね。

仮に年利率5%で銀行に預金したとすると、現在の100万円は1年後には100万円 × 1.05 = 105万円になります。 つまり、「現在の100万円」は1年後には「105万円」に相当する価値を持っているのに対し、「1年後の100万円」はその額面通りの100万円のままです。この比較から、「現在の100万円の方が1年後の100万円よりも価値が高い」ということが言えます。

このように、異なる時点の金額を比較する際には、単に額面を比較するのではなく、時間の経過を考慮して同じ時点での金額に換算して比較する必要があります。これが、貨幣の時間価値を考慮した計算の基本的な考え方です。

2. 複利計算と割引計算の基本

貨幣の時間価値を考慮した計算には、主に「複利計算」と「割引計算」の2種類があります。

(1) 複利計算(将来価値を求める計算)

複利計算とは、現在の金額が将来いくらに増えるか(将来価値)を求める計算のことです。先ほどの銀行預金の例のように、現在の100万円が1年後に105万円になるという計算も、複利計算の一種です。

複利計算では、期間ごとに得られた利息が元金に組み入れられ、次の期間にはその増えた元金に対してさらに利息が計算されます。これを「複利」と呼びます。

例えば、年利率5%で現在の100万円を預金した場合、各年の将来価値は以下のようになります。

  • 1年後:\(1,000,000円 \times 1.05 = 1,050,000円\)
  • 2年後:\(1,000,000円 \times 1.05^2 = 1,102,500円\)
  • 3年後:\(1,000,000円 \times 1.05^3 = 1,157,625円\)

このように、複利計算では期間が長くなるほど、お金が指数関数的に増えていくことが分かります。

(2) 割引計算(現在価値を求める計算)

一方、**割引計算(割引現在価値計算)**とは、将来の金額の現在時点での価値(現在価値)を求める計算のことです。この計算に用いる利率を「割引率」といいます。

例えば、「1年後に確実に100万円手に入る」という場合、その100万円は現在のいくらに相当する価値があるでしょうか?年利率5%で考えると、現在約952,381円を預金すれば、1年後に100万円になります。 つまり、1年後の100万円の現在価値は約952,381円となります。

割引計算は、将来の金額に含まれる利息などを差し引くことを意味します。計算式は複利計算の逆で、将来の金額を「1 + 割引率」で割っていく形になります。

  • 1年後の1,050,000円の現在価値(割引率5%):\(1,050,000円 \div 1.05 = 1,000,000円\)
  • 2年後の1,102,500円の現在価値(割引率5%):\(1,102,500円 \div 1.05^2 = 1,000,000円\)
  • 3年後の1,157,625円の現在価値(割引率5%):\(1,157,625円 \div 1.05^3 = 1,000,000円\)

商業簿記や会計学でも、リース会計においてリース料総額の割引現在価値を計算することがありますが、これは将来のリース料に含まれる利息相当額を控除するために行われます。管理会計における設備投資の意思決定では、この割引計算が非常に重要な役割を果たします。

3. 割引計算を効率化する「現価係数」と「年金現価係数」

上記の割引計算は、割り算を使って行うことができますが、より効率的に計算するために「現価係数」や「年金現価係数」という数値が使われます。検定試験では、これらの係数が表として与えられることが一般的です。

(1) 現価係数

現価係数とは、割引計算によって、将来の単一の金額の現在価値を求めるときに使う数値です。将来の金額に現価係数を掛けることで、現在価値を簡単に計算できます。

\(現在の価値 = 将来の金額 \times 現価係数\)

先ほどの割引計算の例で見てみましょう。

\(将来の金額 \div (1 + 割引率)^n\)

この割り算の部分を掛け算に直すと、

\(将来の金額 \times (1 \div (1 + 割引率)^n)\)

となります。この\((1 \div (1 + 割引率)^n)\)が「現価係数」です。

例えば、割引率5%の場合:

  • 1年後の現価係数:\(1 \div 1.05 = 0.95238…\)
  • 2年後の現価係数:\(1 \div 1.05^2 = 0.90702…\)
  • 3年後の現価係数:\(1 \div 1.05^3 = 0.86383…\)

検定試験では、通常、これらの係数が小数点以下第4位まで示された「現価係数表」が提供されます(小数点以下第5位を四捨五入した値です)。

(2) 年金現価係数

年金現価係数とは、割引計算によって、将来の毎年一定の金額(年金)の現在価値の合計を求めるときに使う数値です。1年分の金額に年金現価係数を掛けることで、複数年にわたる一定金額の現在価値合計を効率的に計算できます。

\(年金の現在価値 = 1年分の金額 \times 年金現価係数\)

例えば、割引率5%で1年後から3年にわたり、毎年100万円の収入がある場合の現在価値の合計を考えてみましょう。 現価係数表(例:割引率5%)

  • 1年:0.9524
  • 2年:0.9070
  • 3年:0.8638

個別に計算して合計すると:

  • 1年後100万円の現在価値:\(1,000,000円 \times 0.9524 = 952,400円\)
  • 2年後100万円の現在価値:\(1,000,000円 \times 0.9070 = 907,000円\)
  • 3年後100万円の現在価値:\(1,000,000円 \times 0.8638 = 863,800円\)
  • 合計:\(952,400円 + 907,000円 + 863,800円 = 2,723,200円\)

年金現価係数を使うと、この計算はもっとシンプルになります。 年金現価係数は、各年の現価係数を合計したものです。

  • 3年分の年金現価係数:\(0.9524 + 0.9070 + 0.8638 = 2.7232\)
  • 年金現価の合計:\(1,000,000円 \times 2.7232 = 2,723,200円\)

このように、毎年同額のキャッシュフローがある場合には、年金現価係数を用いることで計算の手間を大幅に削減できます。

【問題解説】

問1 解答解説

この問題は、現在の金額が将来どのように増えるかを問う、複利計算の基本的な理解を試すものです。貨幣の時間価値の根幹をなす考え方の一つであり、現在の投資が将来どれだけの価値を生み出すかを予測する上で不可欠です。

複利計算では、単に元金に利息がつくのではなく、各期間で生じた利息が元金に組み込まれ、次期の利息はその増えた金額に対して計算されます。この「利息の利息」がつくことで、長期的には単利よりも大きな金額になります。

本問では、現在1,000,000円を年利率8%で3年間預金した場合の将来価値を求めます。 計算式は以下の通りです。

\(現在の金額 \times (1 + 年利率)^{期間}\) \(1,000,000円 \times (1 + 0.08)^3\) \(= 1,000,000円 \times 1.08^3\) \(= 1,000,000円 \times 1.259712\) \(= 1,259,712円\)

この計算結果は、現在の100万円が3年後には約126万円にまで増えることを示しており、時間とともに貨幣の価値が増大する複利の効果を明確に表しています。設備投資の回収期間や将来的な収益性を評価する際にも、この複利の考え方が応用されます。

問2 解答解説

この問題は、将来受け取る金額の現在の価値を問う、割引計算の理解度を測るものです。特に、単一の将来キャッシュフローの現在価値を求める際に「現価係数」をいかに活用するかがポイントになります。

割引計算は、将来の不確実性や機会費用(他の投資で得られるであろう収益)を考慮し、将来の金額が現在時点ではどれだけの価値を持つと評価されるかを示します。割引率が高いほど、将来の金額の現在価値は低くなります。これは、将来のお金を得るまでのリスクや、その資金を他に活用できた場合の機会損失が大きいと見なされるためです。

本問では、5年後に2,000,000円を受け取る権利の現在価値を、割引率8%の現価係数を用いて求めます。 現価係数表から、5年、割引率8%の現価係数は「0.6806」です。

計算式は以下の通りです。

\(将来の金額 \times 現価係数\) \(2,000,000円 \times 0.6806\) \(= 1,361,200円\)

この結果は、5年後に200万円を手に入れる権利が、現在では136万1,200円の価値に相当するということを意味します。つまり、現在136万1,200円を年8%で運用できれば、5年後には200万円になる計算です。企業が将来の収益や費用を評価し、今日の投資判断を行う上で、このような現在価値の計算は極めて重要です。

問3 解答解説

この問題は、複数年にわたって毎年一定額のキャッシュフローが発生する場合の、その合計現在価値を求めるものです。このような「年金」形式のキャッシュフローの評価には、年金現価係数が非常に効率的です。

年金現価係数は、各年の現価係数を合計したものであり、毎年同額の収益や支出が継続的に発生する投資案件の評価に特化しています。例えば、設備の導入によって毎年一定のコスト削減効果が見込まれる場合や、リース取引のように毎年同額の支払いが発生する場合などに活用されます。年金現価係数を使用することで、一つ一つのキャッシュフローを個別に割り引く手間を省き、計算を大幅に簡略化できます。

本問では、1年後から4年間、毎年500,000円のキャッシュフローが発生すると見込まれるため、4年間の年金現価係数を使用します。 年金現価係数表から、4年、割引率8%の年金現価係数は「3.3121」です。

計算式は以下の通りです。

\(1年分の金額 \times 年金現価係数\) \(500,000円 \times 3.3121\) \(= 1,656,050円\)

この計算結果は、将来4年間にわたって毎年50万円ずつ得られるキャッシュフローが、現在の時点では合計165万6,050円の価値を持つことを示しています。この値を設備投資額と比較することで、投資の経済的な合理性を判断することができます。例えば、この機械の購入費用が150万円であれば、投資は有利であると判断できます。このように、年金現価係数は、設備投資の意思決定において、将来の複数年にわたる経済効果を現在価値に集約し、評価するための重要なツールとなります。

問4 解答解説

この問題は、貨幣の時間価値と意思決定会計に関する基本的な知識の確認を目的としています。特に、割引計算の概念と設備投資の意思決定の種類について正しく理解しているかを確認します。各選択肢を一つずつ検討することで、誤りを見つけ出します。

  • ア.複数の投資案件を比較する際には、貨幣の時間価値を考慮して現在価値に換算する必要がある。 これは正しい記述です。異なる時点に発生するキャッシュフローを比較する際には、貨幣の時間価値を考慮し、すべてを同じ時点(通常は現在時点)の価値に換算することで、適切な比較が可能になります。
  • イ.将来得られるキャッシュフローの現在価値が高い案件ほど、企業にとって有利である可能性が高い。 これも正しい記述です。投資案件から得られる将来のキャッシュフローの現在価値が高ければ高いほど、その投資は現在の価値に換算しても大きなリターンをもたらすことを意味し、企業にとって有利な選択肢となります。
  • ウ.設備投資の意思決定は、企業の基本的な構造に関わる「構造的意思決定」に分類される。 これも正しい記述です。設備投資は、企業の生産能力や経営基盤に大きな影響を与える長期的な意思決定であり、「構造的意思決定」に該当します。この意思決定では、長期にわたる計算期間のため、貨幣の時間価値を考慮することが重要です。
  • エ.現在価値を計算する際の割引率が高いほど、将来のキャッシュフローの現在価値は高くなる。 これは誤っている記述です。割引率が高いということは、将来の金額からより多くの利息相当額を差し引くことを意味します。例えば、1年後の100万円を割引率5%で割り引くと約95.2万円ですが、割引率10%で割り引くと約90.9万円になります。したがって、割引率が高いほど、将来のキャッシュフローの現在価値は低くなります。

以上の検討から、選択肢エが誤りであることが分かります。この選択肢は、割引計算の基本的な特性を理解しているか、また割引率が現在価値に与える影響について正しく認識しているかを問うものです。

問5 解答解説

この問題は、異なる時点に発生する複数の単一キャッシュフローの現在価値をそれぞれ計算し、それらを合計する能力を問うものです。将来のキャッシュフローが毎年一定ではない場合や、一括で発生する場合に、現価係数を活用して現在価値を求める方法の応用です。

貨幣の時間価値の計算では、将来のキャッシュフローのパターンに応じて、適切な係数(単一の現価係数か、年金現価係数か)を選択して適用することが重要です。この問題では、キャッシュフローの発生時期と金額が異なるため、年金現価係数を直接使うことはできません。それぞれのキャッシュフローに対して個別に現価係数を適用し、その後で合計する必要があります。

本問では、以下の2つのキャッシュフローの現在価値を計算し、合計します。

  1. 3年後に一括で支払われる2,500,000円
  2. 1年後から2年間にわたり毎年1,200,000円ずつ支払われる(つまり1年後1,200,000円と2年後1,200,000円)

割引率は8%です。現価係数表から必要な係数を抜き出します。

  • 1年後:0.9259
  • 2年後:0.8573
  • 3年後:0.7938

それぞれの現在価値を計算します。

① 3年後に一括で支払われる2,500,000円の現在価値:

\(2,500,000円 \times 0.7938\) \(= 1,984,500円\)

② 1年後から2年間にわたり毎年1,200,000円ずつ支払われるキャッシュフローの現在価値:

  • 1年後の1,200,000円の現在価値:
\(1,200,000円 \times 0.9259\)

\(= 1,111,080円\) 2年後の1,200,000円の現在価値:

\(1,200,000円 \times 0.8573\)

\(= 1,028,760円\) 合計: \(1,111,080円 + 1,028,760円 = 2,139,840円\)

合計現在価値: 最後に、これら2つのキャッシュフローの現在価値を合計します。

\(1,984,500円 (①) + 2,139,840円 (②) = 4,124,340円\)

この計算結果は、異なる時期に発生する複数のキャッシュフローを、現在時点の価値に換算して合計するプロセスを示しています。複雑なキャッシュフローを持つ投資案件を評価する際に、このような手順で現在価値を算出することで、経済的な比較検討が可能になります。

今日のまとめ

  • ポイント1:貨幣の時間価値の基本概念
    • お金の価値は時間とともに変化するという考え方です。
    • 異なる時点の金額を比較する際は、同じ時点の価値に換算して比較することが重要です.
  • ポイント2:複利計算と割引計算
    • 複利計算は現在の金額の将来価値を求める計算です。
    • 割引計算は将来の金額の現在価値を求める計算であり、設備投資などの長期的な意思決定で不可欠です.
  • ポイント3:現価係数の活用
    • 現価係数は、将来の単一の金額の現在価値を求めるときに使う数値です。
    • 計算は「現在価値 = 将来の金額 × 現価係数」のパターンで行います。
  • ポイント4:年金現価係数の活用
    • 年金現価係数は、将来の**毎年一定の金額(年金)**の現在価値の合計を求めるときに使う数値です。
    • 計算は「年金の現在価値 = 1年分の金額 × 年金現価係数」のパターンで行います。
  • ポイント5:試験での重要性
    • 検定試験では、現価係数や年金現価係数の表が与えられ、これらを適切に使いこなす能力が問われます。それぞれの意味と計算での使い方をしっかりマスターしましょう。

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この記事を書いた人

簿記2級を取得し、現在簿記1級を勉強中。
学んだことを忘れないようにここでまとめてます。
普段は、会社で経理をしながら、経理・簿記関係の情報を発信。
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