予算実績差異分析の基本:営業利益差異の計算と分析手法

問題 

問1 以下の資料に基づき、X4年4月の予算貸借対照表における材料の金額を求めなさい。

〔資料〕

  1. 直接材料費の原価標準:600円/kg × 1kg = 600円
  2. X4年4月の予算データ
    • 計画販売量 4月:250個 5月:350個 6月:400個
    • 各月末の製品の所要在庫量は、翌月の計画販売量の10%である。
    • 各月末の材料の所要在庫量は、翌月の計画消費量の10%である。なお、月初、月末に仕掛品はない。

問2 以下の資料に基づき、営業利益差異を計算し、有利差異か不利差異かを答えなさい。

〔資料(全部原価計算)〕

項目予算実績
製品の販売単価@600円@580円
製品の販売数量300個320個
1個あたりの製造原価@400円@420円
販売費10,000円11,500円
一般管理費15,000円16,000円

問3 問2の資料に基づき、売上高差異を販売価格差異と販売数量差異にそれぞれ分解して計算し、有利差異か不利差異かを答えなさい。

問4 以下の資料に基づき、変動売上原価差異を変動売上原価価格差異と変動売上原価数量差異にそれぞれ分解して計算し、有利差異か不利差異かを答えなさい。

〔資料(直接原価計算)〕

項目予算実績
製品の販売単価@600円@580円
製品の販売数量300個320個
1個あたりの変動製造原価@180円@250円
1個あたりの変動販売費@ 30円@ 32円
固定費60,000円62,000円

問5 問4の資料に基づき、直接原価計算における要因別分析での販売数量差異を計算し、有利差異か不利差異かを答えなさい。


<答え>

問1 21,300円

問2 11,300円(不利差異)

問3 販売価格差異:6,400円(不利差異) 販売数量差異:12,000円(有利差異)

問4 変動売上原価価格差異:22,400円(不利差異) 変動売上原価数量差異:3,600円(不利差異)

問5 7,800円(有利差異)

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予算管理の全体像と予算編成

企業予算とは何か?

企業予算とは、経営者が将来の特定の期間における事業活動の内容を、金額で具体的に示した経営計画のことです。これは企業の活動を数値化し、目標設定と管理を行う上で非常に重要なツールとなります。

この企業予算を用いて経営を管理することを予算管理と呼びます。予算管理は、大きく分けて二つのフェーズで構成されます。

  • 予算編成(計画フェーズ): 事業活動の計画を金額で具体的に示し、企業予算を作成するプロセスです。
  • 予算統制(コントロールフェーズ): 事業活動の実際の結果を分析し、それを次の計画に活かすためのプロセスです。具体的には、作成した企業予算と実績を比較し、差異を分析することで行われます。

今回は、このうちの「予算編成」に焦点を当てて詳しく解説していきます。

予算編成の基本的な流れ

企業における経営管理は、常に「計画」と「統制(コントロール)」によって実行されます。予算管理における「計画」に相当するのが予算編成です。

予算編成においては、まず企業全体の目標(経営理念レベル)に基づいて、長期的な経営戦略が策定されます。この長期戦略の下、次期の1年間の短期的な利益計画の基礎となる「大綱的利益計画」が、CVP分析などの手法を用いて立てられます。

そして、この短期利益計画の大きな枠組みが定まった後、社長の方針なども踏まえて、具体的な予算である「基本予算」が編成されます。基本予算の編成の流れは以下の通りですが、具体的な詳細は企業によって異なるため、ここでは大まかな流れを理解することが重要です。

基本予算は、さらに「損益予算」と「財務予算」の二つに分類できます。

  1. 損益予算 損益予算は、文字通り、企業の損益に関する予算です。最初に販売予算(売上高予算)を策定することから始まります。販売予算が定まると、それに連動して、製造予算(製造原価に関する予算)、販売費及び一般管理費、そして営業外損益に関する予算が順次策定されます。これらの予算が全てまとまると、次期の予算損益計算書が作成されます。
  2. 財務予算 財務予算では、次期の設備投資の予算現金収支の予算が策定されます。現金収支予算は、上記の損益予算とも密接な関係を持っています。これら全ての財務に関する予算が総合されることで、次期の予算貸借対照表が作成されます。

各勘定科目の予算算出例

予算編成では、売掛金、製品、材料、買掛金、現預金など、個別の勘定科目の金額も予算として算出します。

  • 売掛金: 売上高のうち、期末までに回収されない掛け売上の残高として計算されます。例えば、販売月の月末までに50%を回収し、残りの50%を翌月回収する場合、月末の売掛金はその月の売上高の50%となります。
  • 製品: 各月末の製品の必要在庫量は、翌月の計画販売量に基づいて計算されることが多いです。例えば、翌月の計画販売量の10%を月末在庫として保持する場合、製品の予算額はその在庫量に原価標準を乗じて算出されます。
  • 材料: 各月末の材料の必要在庫量は、翌月の計画消費量に基づいて計算されるのが一般的です。例えば、翌月の計画消費量の10%を月末在庫とする場合、材料の予算額は翌月の計画消費量と原価標準から算出されます。
  • 買掛金: 材料仕入高のうち、期末までに支払われない掛け仕入れの残高として計算されます。例えば、仕入れた月の月末までに40%を支払い、残りの60%を翌月支払う場合、月末の買掛金はその月の材料仕入高の60%となります。
  • 現金(現金収支予算): 月初現金残高に売掛金回収などの現金収入を加え、買掛金支払いやその他の現金支出を差し引くことで、月末の現金残高を算出します。必要残高に満たない場合は、銀行からの借入れを計画することもあります。

これらの計算は、予算損益計算書や予算貸借対照表を作成する上で不可欠な要素となります。

予算実績差異分析の基礎

予算実績差異分析の目的

企業が作成した予算は、計画に過ぎません。実際に事業活動を行った結果と、当初の計画である予算との間には、必ず何らかの「差(差異)」が生じます。この差を分析し、その原因を特定するプロセスが予算実績差異分析です。

予算実績差異分析は、特に短期利益計画における予算営業利益実績営業利益との間に生じた差異を分析することを指します。この差異を分析する主な目的は、その原因を究明し、次期の予算編成に活かすことにあります。これにより、より精度の高い予算計画を立て、企業の経営効率を向上させることが可能になります。

営業利益差異の計算と有利・不利の判断

営業利益差異は、以下の計算式で求められます。

\(営業利益差異 = 実績営業利益 – 予算営業利益\)

計算結果がプラス(正の値)であれば「有利差異」となり、実績が予算よりも良かったことを意味します。 計算結果がマイナス(負の値)であれば「不利差異」となり、実績が予算よりも悪かったことを意味します。

原価の差異計算とは引き算の順番が逆になるため、注意が必要です。原価差異では「標準原価-実際発生額」で計算し、結果がプラスなら有利差異(実際発生額が標準より少ないため)となります。しかし、営業利益差異は収益(利益)の差異であるため、実績が予算を上回れば有利、下回れば不利となるのです。

営業利益差異の分析方法

営業利益差異の分析方法には、主に以下の二つがあります。

  1. 項目別分析(総額法、総額分析) 営業利益を構成する要素(売上高、売上原価、販売費など)のそれぞれの総額について、予算と実績を比較し、差異を計算する方法です。例えば、売上原価差異は、予算売上原価と実績売上原価の差として計算されます。
  2. 要因別分析(純額法、純額分析) 予算と実績の販売数量の差が、売上総利益や貢献利益に与えた影響を直接的に計算する方法です。項目別分析が損益計算書の項目ごとに比較するのに対し、要因別分析は販売数量の変動が利益に与える影響に焦点を当てます。

以下では、これらの分析方法について詳しく見ていきます。

項目別分析(全部原価計算の場合)

全部原価計算を採用している場合の項目別分析では、損益計算書の各項目(売上高、売上原価、販売費、一般管理費など)ごとに予算と実績の差異を計算します。

売上高差異の分析

売上高は「販売価格 × 販売数量」で構成されるため、売上高差異は「販売価格差異」と「販売数量差異」に分解して分析することができます。

  • 販売価格差異: 実績販売量に対して、実績販売単価が予算販売単価からどれだけ異なったかを表す差異です。
\(販売価格差異 = (実績販売単価 – 予算販売単価) \times 実績販売数量\)

販売数量差異: 予算販売単価に対して、実績販売数量が予算販売数量からどれだけ異なったかを表す差異です。

\(販売数量差異 = 予算販売単価 \times (実績販売数量 – 予算販売数量)\)
売上原価差異の分析

売上原価は「1個あたりの製造原価 × 販売数量」で構成されるため、売上原価差異も「売上原価価格差異」と「売上原価数量差異」に分解して分析することができます。

  • 売上原価価格差異: 実績販売量に対して、1個あたりの実績製造原価が予算製造原価からどれだけ異なったかを表す差異です。
\(売上原価価格差異 = (予算製造原価 – 実績製造原価) \times 実績販売数量\)

売上原価数量差異: 1個あたりの予算製造原価に対して、実績販売数量が予算販売数量からどれだけ異なったかを表す差異です。

\(売上原価数量差異 = 予算製造原価 \times (予算販売数量 – 実績販売数量)\)

差異の計算では、収益の差異(例:売上高差異)は「実績-予算」で、原価(費用)の差異(例:売上原価差異、販売費差異、一般管理費差異)は「予算-実績」で計算すると、有利・不利の判断が明確になります。

項目別分析(直接原価計算の場合)

直接原価計算を採用している場合の項目別分析でも、損益計算書の項目(売上高、変動売上原価、変動販売費など)ごとに予算と実績の差異を計算します。

変動売上原価差異の分析

変動売上原価は「1個あたりの変動製造原価 × 販売数量」で構成されるため、「変動売上原価価格差異」と「変動売上原価数量差異」に分解できます。

  • 変動売上原価価格差異: 実績販売量に対して、1個あたりの実績変動製造原価が予算変動製造原価からどれだけ異なったかを表す差異です。
\(変動売上原価価格差異 = (予算変動製造原価 – 実績変動製造原価) \times 実績販売数量\)

変動売上原価数量差異: 1個あたりの予算変動製造原価に対して、実績販売数量が予算販売数量からどれだけ異なったかを表す差異です。

\(変動売上原価数量差異 = 予算変動製造原価 \times (予算販売数量 – 実績販売数量)\)
変動販売費差異の分析

変動販売費は「1個あたりの変動販売費 × 販売数量」で構成されるため、「変動販売費価格差異」と「変動販売費数量差異」に分解できます。変動販売費価格差異は「変動販売費予算差異」とも呼ばれます。

  • 変動販売費価格差異: 実績販売量に対して、1個あたりの実績変動販売費が予算変動販売費からどれだけ異なったかを表す差異です。
\(変動販売費価格差異 = (予算変動販売費 – 実績変動販売費) \times 実績販売数量\)

変動販売費数量差異: 1個あたりの予算変動販売費に対して、実績販売数量が予算販売数量からどれだけ異なったかを表す差異です。

\(変動販売費数量差異 = 予算変動販売費 \times (予算販売数量 – 実績販売数量)\)

固定費差異は、全部原価計算と同様に「予算固定費 - 実績固定費」で計算されます。

要因別分析

要因別分析は、予算と実績の販売数量の差が、売上総利益や貢献利益に与えた影響を直接的に計算する分析方法です。項目別分析が損益計算書の各項目の総額を比較するのに対し、要因別分析は「純額」、つまり利益に与える影響に焦点を当てます。

要因別分析(全部原価計算の場合)

全部原価計算における売上総利益差異が生じる要因は、主に以下の3つです。

  1. 販売数量の予算と実績の差
  2. 販売価格の予算と実績の差
  3. 製品1個あたりの製造原価の予算と実績の差

この売上総利益差異は、以下の3つに分解して分析されます。

  • 販売数量差異: 1個あたりの予算売上総利益に対して、実績販売数量が予算販売数量からどれだけ異なったかを表す差異です。これは、販売数量が予算と異なったことで、売上総利益がいくら変動したかを直接計算するものです。
\(販売数量差異 = @予算売上総利益 \times (実績販売数量 – 予算販売数量)\)

(@予算売上総利益=@予算販売価格-@予算製造原価)

販売価格差異: 項目別分析の販売価格差異と同様の計算です。

\(販売価格差異 = (実績販売単価 – 予算販売単価) \times 実績販売数量\)

売上原価価格差異: 項目別分析の売上原価価格差異と同様の計算です。

\(売上原価価格差異 = (予算製造原価 – 実績製造原価) \times 実績販売数量\)

販売費差異と一般管理費差異は、項目別分析と同様の計算で求められます。

要因別分析(直接原価計算の場合)

直接原価計算における貢献利益差異が生じる要因は、主に以下の3つです。

  1. 販売数量の予算と実績の差
  2. 販売価格の予算と実績の差
  3. 製品1個あたりの変動費(変動売上原価、変動販売費)の予算と実績の差

この貢献利益差異は、以下の3つに分解して分析されます。

  • 販売数量差異: 1個あたりの予算貢献利益に対して、実績販売数量が予算販売数量からどれだけ異なったかを表す差異です。これは、販売数量が予算と異なったことで、貢献利益がいくら変動したかを直接計算するものです。
\(販売数量差異 = @予算貢献利益 \times (実績販売数量 – 予算販売数量)\)

(@予算貢献利益=@予算販売価格-@予算変動費)

販売価格差異: 項目別分析の販売価格差異と同様の計算です。

\(販売価格差異 = (実績販売単価 – 予算販売単価) \times 実績販売数量\)

変動費差異: 変動売上原価と変動販売費からなるため、これをさらに「変動売上原価価格差異」と「変動販売費価格差異」に分解することもあります。これらも項目別分析のそれぞれの価格差異と同様の計算です。

\(変動売上原価価格差異 = (予算変動製造原価 – 実績変動製造原価) \times 実績販売数量\) \(変動販売費価格差異 = (予算変動販売費 – 実績変動販売費) \times 実績販売数量\)

固定費差異は、項目別分析と同様の計算で求められます。

項目別分析と要因別分析の比較

直接実際原価計算を前提とした場合、項目別分析と要因別分析には共通点と相違点があります。

  • 共通点:
    • 販売価格差異変動売上原価価格差異変動販売費価格差異の3つは、いずれも価格面に起因する差異であり、どちらの分析方法でも計算結果は同じです。
    • 固定費差異についても、計算結果は同じです。
  • 相違点:
    • 項目別分析では、販売数量の予算と実績の差による影響は、売上高差異の一部としての販売数量差異変動売上原価数量差異変動販売費数量差異の3つとして個別に計算されます。
    • 一方、要因別分析では、貢献利益差異の一部として販売数量差異のみが計算されます。この要因別分析における販売数量差異は、項目別分析で計算される上記3つの数量差異の合計額に等しくなります。

これは、項目別分析が収益と費用(原価)それぞれについて、販売数量の増減がもたらした影響を計算するのに対し、要因別分析は利益(収益と費用の差としての純額)に対する影響を直接的に計算する、というアプローチの違いを示しています。要因別分析の販売数量差異は、予算での単位あたりの利益(売上総利益または貢献利益)に数量の差異を乗じることで、その数量変動が利益に与えた純粋な影響を捉えることを目的としています。

【問題解説】

問1 この問題は、予算編成における材料の月末在庫額を計算する問題です。材料の月末在庫額は、翌月の計画消費量に基づいて算出されるため、まずは5月の材料計画消費量を把握する必要があります。仕掛品がない場合、材料の消費量は製品の生産量に直結します。したがって、5月の計画生産量を逆算することから始めます。

製品の月末在庫量は「翌月の計画販売量の10%」という条件がありますので、4月末製品在庫と5月末製品在庫を計算します。

  • 4月末製品在庫(=5月月初製品在庫)は、5月の計画販売量350個の10%で35個です。
  • 5月末製品在庫(=6月月初製品在庫)は、6月の計画販売量400個の10%で40個です。

次に、5月の製品勘定を分析し、5月の計画生産量を求めます。

\(5月の計画生産量 = 5月の計画販売量 + 5月末製品在庫 – 5月月初製品在庫\) \(5月の計画生産量 = 350個 + 40個 – 35個 = 355個\)

製品1個あたりに必要な材料は1kg(原価標準から600円/kg × 1kg)なので、5月の材料計画消費量は355kgとなります。

最後に、X4年4月末の材料在庫額を計算します。4月末の材料所要在庫量は「翌月(5月)の計画消費量の10%」です。

\(4月末材料在庫量 = 5月の材料計画消費量 \times 10%\) \(4月末材料在庫量 = 355kg \times 10% = 35.5kg\)

材料の単価は600円/kgなので、X4年4月末の材料の金額は、

\(材料の金額 = 35.5kg \times 600円/kg = 21,300円\)

となります。この計算過程は、月末の在庫量を正確に把握し、そこから予算額を導き出す能力を問うものです。複数のステップを踏んで計算する必要があるため、それぞれのステップでの数値の関連性を理解することが重要です。

問2 この問題は、営業利益差異を計算し、その結果が有利差異か不利差異かを判断する基本的な問題です。営業利益差異は「実績営業利益 - 予算営業利益」で計算されます。まずは、予算と実績それぞれの損益計算書(営業利益まで)を作成し、各利益を把握する必要があります。

予算損益計算書

  • 予算売上高:@600円 × 300個 = 180,000円
  • 予算売上原価:@400円 × 300個 = 120,000円
  • 予算売上総利益:180,000円 – 120,000円 = 60,000円
  • 予算販売費:10,000円
  • 予算一般管理費:15,000円
  • 予算営業利益:60,000円 – 10,000円 – 15,000円 = 35,000円

実績損益計算書

  • 実績売上高:@580円 × 320個 = 185,600円
  • 実績売上原価:@420円 × 320個 = 134,400円
  • 実績売上総利益:185,600円 – 134,400円 = 51,200円
  • 実績販売費:11,500円
  • 実績一般管理費:16,000円
  • 実績営業利益:51,200円 – 11,500円 – 16,000円 = 23,700円

次に、営業利益差異を計算します。

\(営業利益差異 = 実績営業利益 – 予算営業利益\) \(営業利益差異 = 23,700円 – 35,000円 = △11,300円\)

計算結果がマイナス(△)であるため、不利差異となります。この問題のポイントは、収益(利益)の差異は「実績から予算を引く」という計算の順序を正しく理解し、有利・不利の判断を間違えないことです。予算と実績のP/Lを正確に作成することが、その後の差異分析の基礎となります。

問3 この問題は、問2の資料を使い、売上高差異を販売価格差異と販売数量差異に分解する項目別分析の問題です。売上高差異は「実績売上高 - 予算売上高」で計算され、その原因を価格と数量に分けて分析します。

まず、問2で計算した売上高を確認します。

  • 実績売上高:185,600円
  • 予算売上高:180,000円
  • 売上高差異:185,600円 – 180,000円 = 5,600円(有利差異)

次に、この売上高差異を販売価格差異と販売数量差異に分解します。 販売価格差異は、実績販売数量に、実績販売単価と予算販売単価の差を乗じて計算します。

\(販売価格差異 = (実績販売単価 – 予算販売単価) \times 実績販売数量\)

\(販売価格差異 = (@580円 – @600円) \times 320個 = △20円 \times 320個 = △6,400円\) これは不利差異となります。販売単価が予算よりも低かったことが原因です。

販売数量差異は、予算販売単価に、実績販売数量と予算販売数量の差を乗じて計算します。

\(販売数量差異 = 予算販売単価 \times (実績販売数量 – 予算販売数量)\)

\(販売数量差異 = @600円 \times (320個 – 300個) = @600円 \times 20個 = 12,000円\) これは有利差異となります。販売数量が予算よりも多かったことが原因です。

確認として、これら二つの差異の合計が売上高差異と一致するかを確認します。

\(△6,400円(販売価格差異)+ 12,000円(販売数量差異)= 5,600円\)

合計が売上高差異5,600円と一致するため、計算は正しいと言えます。この問題では、それぞれの差異が売上高に与える影響の方向性(有利か不利か)を正確に把握することが求められます。

問4 この問題は、直接原価計算における変動売上原価差異を、変動売上原価価格差異と変動売上原価数量差異に分解する項目別分析の問題です。変動費の差異計算も、原価(費用)の差異であるため、「予算から実績を引く」形式で有利・不利を判断します。

まず、変動売上原価の予算額と実績額を計算します。

  • 予算変動売上原価:@180円 × 300個 = 54,000円
  • 実績変動売上原価:@250円 × 320個 = 80,000円

変動売上原価差異は、

\(変動売上原価差異 = 予算変動売上原価 – 実績変動売上原価\)

\(変動売上原価差異 = 54,000円 – 80,000円 = △26,000円\) これは不利差異となります。

次に、この変動売上原価差異を変動売上原価価格差異と変動売上原価数量差異に分解します。 変動売上原価価格差異は、実績販売数量に、予算変動製造原価と実績変動製造原価の差を乗じて計算します。

\(変動売上原価価格差異 = (予算変動製造原価 – 実績変動製造原価) \times 実績販売数量\)

\(変動売上原価価格差異 = (@180円 – @250円) \times 320個 = △70円 \times 320個 = △22,400円\) これは不利差異となります。1個あたりの変動製造原価が予算よりも高かったことが原因です。

変動売上原価数量差異は、1個あたりの予算変動製造原価に、予算販売数量と実績販売数量の差を乗じて計算します。

\(変動売上原価数量差異 = 1個あたりの予算変動製造原価 \times (予算販売数量 – 実績販売数量)\)

\(変動売上原価数量差異 = @180円 \times (300個 – 320個) = @180円 \times △20個 = △3,600円\) これは不利差異となります。販売数量が予算よりも増加した(原価が増えた)ことが原因です。

確認として、これら二つの差異の合計が変動売上原価差異と一致するかを確認します。

\(△22,400円(変動売上原価価格差異)+ △3,600円(変動売上原価数量差異)= △26,000円\)

合計が変動売上原価差異△26,000円と一致するため、計算は正しいと言えます。原価(費用)の差異では、数量が増加すると不利差異となることに注意が必要です。

問5 この問題は、直接原価計算における要因別分析での販売数量差異を計算する問題です。要因別分析の販売数量差異は、単位あたりの予算貢献利益に、実績販売数量と予算販売数量の差を乗じることで直接的に計算されます。この差異は、数量の変化が貢献利益に与えた純粋な影響を示します。

まず、製品1個あたりの予算貢献利益を計算します。

  • 予算販売単価:@600円
  • 1個あたりの予算変動製造原価:@180円
  • 1個あたりの予算変動販売費:@30円
  • 1個あたりの予算変動費合計:@180円 + @30円 = @210円

1個あたりの予算貢献利益:

\(@予算貢献利益 = 予算販売単価 – 1個あたりの予算変動費合計\) \(@予算貢献利益 = @600円 – @210円 = @390円\)

次に、販売数量差異を計算します。

  • 実績販売数量:320個
  • 予算販売数量:300個
\(販売数量差異 = @予算貢献利益 \times (実績販売数量 – 予算販売数量)\)

\(販売数量差異 = @390円 \times (320個 – 300個) = @390円 \times 20個 = 7,800円\) これは有利差異となります。実績販売数量が予算を上回ったことで、予算で想定していた貢献利益をより多く獲得できたことを意味します。要因別分析の特徴は、このように販売数量の変動が直接的に利益に与える影響を把握できる点にあります。項目別分析の数量差異の合計と一致することも理解しておくと、より深くこの分析を理解できます。


【まとめ】

予算管理と予算実績差異分析の要点は以下の通りです。

  • ポイント1:企業予算と予算管理
    • 企業予算は、将来の事業活動を金額で示す経営計画です。
    • 予算管理は、企業予算の作成(予算編成)と、予算と実績の比較・分析(予算統制)から成ります。
    • 予算編成は計画、予算統制はコントロールに該当します。
  • ポイント2:予算編成の構成要素
    • 基本予算は次期の1年間の短期的な総合予算であり、損益予算と財務予算に分けられます。
    • 損益予算は販売予算から始まり、製造予算、販売費・一般管理費などを経て予算損益計算書が作成されます。
    • 財務予算は設備投資や現金収支の予算を策定し、最終的に予算貸借対照表が作成されます。
  • ポイント3:予算実績差異分析の基本
    • 予算実績差異分析は、予算営業利益と実績営業利益の差異を分析し、次期予算編成に活かすことが目的です。
    • 営業利益差異は「実績営業利益-予算営業利益」で計算し、結果がプラスなら有利差異、マイナスなら不利差異となります。
  • ポイント4:差異分析の二つの方法
    • **項目別分析(総額法)**は、売上高や売上原価など損益計算書の各項目の総額について予算と実績を比較します。
    • **要因別分析(純額法)**は、予算と実績の販売数量の差が売上総利益や貢献利益に与えた影響を直接計算します。
  • ポイント5:項目別分析と要因別分析の相違点(重要)
    • 販売価格差異各種価格差異(変動費含む)固定費差異は項目別分析と要因別分析で計算結果が共通します。
    • 数量差異の扱いが異なります。項目別分析では売上高、変動費それぞれに数量差異を計算しますが、要因別分析では「単位あたりの利益(売上総利益または貢献利益)×数量差異」として、利益への直接的な影響を一つの販売数量差異として計算します。要因別分析の販売数量差異は、項目別分析の各数量差異の合計と一致します。

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この記事を書いた人

簿記2級を取得し、現在簿記1級を勉強中。
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