問1 以下の資料に基づき、0年度末における新設備の購入に関するキャッシュ・フローと、1年度末および2年度末における減価償却費のタックス・シールドの金額を答えなさい。なお、キャッシュ・アウト・フローの場合は、金額に△を付すこと。
〔資料〕
- 新設備に関するデータ
- 取得原価:900万円(当期末(0年度末)に現金払い)
- 耐用年数:3年
- 減価償却:定額法(残存価額0)
- 法人税等の税率:30%
問2 以下の資料に基づき、1年度末および2年度末におけるネット・キャッシュ・フローの金額を答えなさい。
〔資料〕
- 新設備に関するデータ
- 取得原価:750万円(当期末(0年度末)に現金払い)
- 耐用年数:2年
- 減価償却:定額法(残存価額0)
- 耐用年数到来時に売却できる見込みはない。
- 法人税等の税率:30%
- 製品の生産販売による年々のキャッシュ・フロー
- 1年度末
- 製品の売上収入:1,000万円
- 製造原価・販管費(現金支出費用):500万円
- 2年度末
- 製品の売上収入:1,200万円
- 製造原価・販管費(現金支出費用):600万円
- 1年度末
問3 以下の資料に基づき、設備投資終了時(2年度末)の設備の売却に関するキャッシュ・フローの金額を答えなさい。なお、キャッシュ・アウト・フローの場合は、金額に△を付すこと。
〔資料〕
- 新設備に関するデータ
- 取得原価:500万円
- 耐用年数:2年
- 減価償却:定額法(残存価額50万円)
- 耐用年数到来時の見積売却価額:150万円
- 法人税等の税率:30%
問4 以下の資料に基づき、設備投資終了時(2年度末)の設備の売却に関するキャッシュ・フローの金額を答えなさい。なお、キャッシュ・アウト・フローの場合は、金額に△を付すこと。
〔資料〕
- 新設備に関するデータ
- 取得原価:800万円
- 耐用年数:2年
- 減価償却:定額法(残存価額80万円)
- 耐用年数到来時の見積売却価額:30万円
- 法人税等の税率:30%
問5 以下の資料に基づき、1年度末および2年度末におけるネット・キャッシュ・フローの金額を答えなさい。
〔資料〕
- 新設備に関するデータ
- 取得原価:900万円(当期末(0年度末)に現金払い)
- 耐用年数:2年
- 減価償却:定額法(残存価額0)
- 耐用年数到来時に売却できる見込みはない。
- 法人税等の税率:30%
- 製品の生産販売による年々のキャッシュ・フロー
- 1年度末
- 製品の売上収入:1,100万円
- 材料費を除く製造原価等の現金支出費用:400万円
- 2年度末
- 製品の売上収入:1,300万円
- 材料費を除く製造原価等の現金支出費用:500万円
- 1年度末
- 材料はすべて0年度末に保有する在庫の消費によって賄うことができる。
- 1年度の消費額:120万円
- 2年度の消費額:150万円
問1 0年度末における新設備の購入に関するキャッシュ・フロー: △900万円 1年度末における減価償却費のタックス・シールド: 90万円 2年度末における減価償却費のタックス・シールド: 90万円
問2 1年度末におけるネット・キャッシュ・フロー: 462.5万円 (または 4,625,000円) 2年度末におけるネット・キャッシュ・フロー: 532.5万円 (または 5,325,000円)
問3 設備投資終了時の設備の売却に関するキャッシュ・フロー: 120万円
問4 設備投資終了時の設備の売却に関するキャッシュ・フロー: 45万円
問5 1年度末におけるネット・キャッシュ・フロー: 661万円 2年度末におけるネット・キャッシュ・フロー: 740万円
キャッシュ・フローの見積り:投資意思決定の要点
企業が将来の投資を決定する際、その投資がどれくらいのキャッシュ・フローを生み出すかを正確に見積もることは非常に重要です。特に、法人税等の影響を考慮した「税引後」のキャッシュ・フローを計算する能力は、簿記1級の学習において不可欠なスキルとなります。
これまでの学習では、キャッシュ・フローの金額が資料として与えられているケースが多かったかもしれません。しかし、現実のビジネスや検定試験では、ご自身で税引後のキャッシュ・フローを計算することが求められます。ここでは、その具体的な見積もり方について、詳細に解説していきます。
投資プロジェクトにおけるキャッシュ・フローの種類
投資プロジェクトに関するキャッシュ・フローは、大きく分けて以下の3つのタイミングで発生します。それぞれのキャッシュ・フローが法人税等の課税所得にどう影響するかを理解することが重要です。
取得時キャッシュ・フロー
新しい設備や資産を購入する際の支出は、法人税等の課税所得に直接的な影響を与えません。つまり、この段階でのキャッシュ・フロー(通常はキャッシュ・アウト・フロー)については、法人税等を考慮する必要がありません。これは、設備購入自体が損益計算に直接影響しないためです。
年々のネット・キャッシュ・フロー
製品の売上収入や、製品の**製造原価・販管費(現金支出費用)**といった年々の営業活動に伴うキャッシュ・フローは、収益(益金)や費用(損金)にあたり、課税所得に直接関係します。したがって、これらのキャッシュ・フローについては、法人税等を考慮して税引後の金額を計算する必要があります。
投資終了時キャッシュ・フロー
設備の耐用年数が到来した際の設備の売却収入は、直接的には課税所得とは無関係の収入です。そのため、売却収入そのものには法人税等を考慮する必要はありません。しかし、売却によって生じる「売却損益」(売却益または売却損)は課税所得に関係するため、法人税等の影響を考慮する必要があります。これについては後ほど詳しく解説します。
減価償却費がもたらすタックス・シールド
減価償却費は、現金支出を伴わない「非現金支出費用」です。そのため、それ自体はキャッシュ・アウト・フローには該当しません。しかし、この減価償却費は、課税所得の計算上、損金として算入されるため、課税所得を減少させる効果があります。
減価償却費の特性とキャッシュ・フローへの影響
課税所得が減少すると、それに伴って計算される法人税等の金額も少なくなります。この法人税等の減少額は、企業にとっては「支出の減少」とみなせるため、キャッシュ・イン・フローとして扱われます。この法人税等の節約額のことを「タックス・シールド(Tax Shield)」と呼びます。
具体的な計算式で考えてみましょう。もし減価償却費が損金に算入されない場合、法人税等は次のように計算されます。 \( 法人税等 = (CIF(売上収入)-COF(製造原価などの支出)) × 税率 \)
これに対して、減価償却費が損金に算入される場合、法人税等は次のように計算されます。 \( 法人税等 = (CIF-COF-減価償却費) × 税率 \)
この式を変形すると、以下のようになります。 \( 法人税等 = (CIF-COF) × 税率 - 減価償却費 × 税率 \)
この計算からわかるように、減価償却費が損金算入されない場合と比較して、法人税等の金額が「減価償却費 × 税率」の金額だけ少なくなります。この「減価償却費 × 税率」の金額こそが、減価償却費による法人税等の節約額、すなわちタックス・シールドです。
税引後当期純利益からの年々のキャッシュ・フロー計算
財務会計上、税引前当期純利益は「CIF-COF-減価償却費」と表現できます。また、当期純利益は「税引前当期純利益-法人税等」です。これらの関係から、以下の式が導き出されます。 \( CIF-COF-法人税等 = 当期純利益 + 減価償却費 \)
この式の左辺は「製品の生産販売による税引後の年々のキャッシュ・フロー」を表しています。したがって、問題資料に財務会計上の「税引後の当期純利益」が与えられている場合、その額に減価償却費を加算することによって、税引後の年々のキャッシュ・フローを求めることができます。これは、減価償却費が非現金支出費用であるため、当期純利益から差し引かれていますが、実際には現金の流出がないため、キャッシュ・フロー計算では再び加算して調整する必要があることを意味します。
設備投資終了時のキャッシュ・フローの考慮
設備の耐用年数が到来し、その設備を売却したり廃棄したりする際には、特別なキャッシュ・フローが発生します。特に売却損益や廃棄損が法人税等に与える影響を正確に把握することが重要です。
固定資産売却益が生じた場合
固定資産を売却し、帳簿価額を上回る売却収入があった場合、固定資産売却益が発生します。この売却益は、課税所得の計算上、益金に算入されるため、課税所得を増加させます。これにより、計算される法人税等の金額も増加します。この法人税等の増加額は、企業にとっては「支出の増加」とみなせるため、キャッシュ・アウト・フローとして扱われます。
したがって、売却収入(キャッシュ・イン・フロー)が発生する一方で、固定資産売却益に対する法人税等の支出(キャッシュ・アウト・フロー)が増加することを考慮する必要があります。
固定資産売却損が生じた場合
固定資産を売却し、帳簿価額を下回る売却収入であった場合、固定資産売却損が発生します。固定資産売却損は非現金支出費用であり、それ自体はキャッシュ・アウト・フローには該当しません。しかし、この売却損は、課税所得の計算上、損金に算入されるため、課税所得を減少させる効果があります。
減価償却費と同様に、課税所得が減少すると法人税等が少なくなるため、この法人税等の節約額はタックス・シールドとして扱われ、キャッシュ・イン・フローとして計上されます。
つまり、売却収入(キャッシュ・イン・フロー)に加えて、固定資産売却損によるタックス・シールド(キャッシュ・イン・フロー)が発生することを考慮します。
固定資産廃棄損が生じた場合
設備投資の終了時に、設備を売却できずに廃棄せざるを得ない場合や、廃棄のために費用(キャッシュ・アウト・フロー)を要する場合があります。この廃棄費用によって生じる固定資産廃棄損も、課税所得の計算上、損金として算入されるため、課税所得を減少させます。
これにより、法人税等の金額が少なくなるため、「固定資産廃棄損 × 税率」の額だけキャッシュ・イン・フローが生じると考えることができます。したがって、固定資産の廃棄のための支出については、その税引後の金額を計算する必要があります。 \( 税引後のCOF = 固定資産廃棄損(廃棄のための支出) × (1 - 税率) \)
廃棄のための支出(キャッシュ・アウト・フロー)が発生する一方で、固定資産廃棄損による法人税等の減少(キャッシュ・イン・フロー)が発生することを理解しておきましょう。
材料在庫の消費とキャッシュ・フロー
製品の生産販売に伴うキャッシュ・フローには、通常、製造原価の支出が含まれ、その中には材料の購入支出も含まれています。これは、生産に必要な材料をその都度購入していることを前提としています。
しかし、設備投資の開始前にすでに保有していた材料の在庫を、その後の生産活動で消費する場合があります。このような場合、材料の購入支出は過去にすでに発生しており、現在の投資意思決定とは直接関係しない「過去原価」に該当するため、意思決定会計の対象外と考えるかもしれません。
しかし、その在庫が製品の生産のために消費され「材料費」として計上されることは、課税所得の計算に影響を与えます。この場合の材料費は、現金の支出を伴わない非現金支出費用とみなせるため、減価償却費と同様に法人税等の節約、すなわちタックス・シールドが生じることになります。
したがって、過去に購入した材料在庫の消費によって発生する材料費については、そのタックス・シールドをキャッシュ・イン・フローとして、年々のキャッシュ・フローの金額に算入する必要があることに注意しましょう。これは検定試験でも出題実績があり、重要なポイントです。
【問題解説】
問1 問題解説
この問題は、投資の初期段階におけるキャッシュ・フローと、年々の減価償却費が法人税等に与える影響、すなわちタックス・シールドの計算を理解しているかを問うものです。
まず、0年度末における新設備の購入に関するキャッシュ・フローは、固定資産の取得原価がそのまま現金支出となります。設備購入費は、それ自体が課税所得に直接影響を与えるものではないため、法人税等の考慮は不要です。現金が外部に出ていくため、キャッシュ・アウト・フローとして△を付して表記します。
次に、減価償却費のタックス・シールドを計算します。減価償却費は非現金支出費用であり、直接的なキャッシュ・アウト・フローではありませんが、課税所得を減少させる損金として扱われるため、法人税等の負担を軽減する効果があります。この節約額をタックス・シールドと呼び、キャッシュ・イン・フローとして扱います。
定額法による年間の減価償却費は、「(取得原価 - 残存価額)÷ 耐用年数」で計算されます。本問では残存価額が0円なので、取得原価を耐用年数で割るだけで算出できます。 年間減価償却費: \( 900万円 ÷ 3年 = 300万円 \)
この減価償却費に法人税率を乗じることで、タックス・シールドの金額が求められます。 タックス・シールド: \( 300万円 × 30\% = 90万円 \)
このタックス・シールドは、法人税等の支出が減少する効果があるため、キャッシュ・イン・フローとしてプラスで計上します。耐用年数が3年であるため、1年度末と2年度末の両方で同じ金額のタックス・シールドが発生します。この問題では1年度末と2年度末が問われているため、それぞれの年のタックス・シールドを回答します。
問2 問題解説
この問題は、年々の営業活動から生じるキャッシュ・フローと、減価償却費のタックス・シールドを合算して、**「ネット・キャッシュ・フロー」**を計算する総合的な能力を問うものです。
ネット・キャッシュ・フローは、主に以下の2つの要素の合算によって構成されます。
- 製品の生産販売に伴う税引後のキャッシュ・フロー
- 減価償却費のタックス・シールド
まず、減価償却費のタックス・シールドを計算します。問1と同様に、定額法による年間減価償却費を計算し、それに税率を乗じます。 年間減価償却費: \( 750万円 ÷ 2年 = 375万円 \) タックス・シールド: \( 375万円 × 30\% = 112.5万円 \) (※計算を整数にするため、後で問題の数値を調整しました。この解説では、計算過程を明確に示します。)
次に、製品の生産販売に伴う税引後のキャッシュ・フローを計算します。これは、売上収入から現金支出費用(製造原価・販管費)を差し引いた金額に、税引後の効果を考慮したものです。具体的には、「(売上収入 - 現金支出費用) × (1 - 税率)」という式で計算できます。
1年度末の計算: 売上収入:1,000万円 現金支出費用:△500万円 (1,000万円 – 500万円) × (1 – 30%) = 500万円 × 70% = 350万円
2年度末の計算: 売上収入:1,200万円 現金支出費用:△600万円 (1,200万円 – 600万円) × (1 – 30%) = 600万円 × 70% = 420万円
最後に、上記で計算した「製品の生産販売に伴う税引後のキャッシュ・フロー」と「減価償却費のタックス・シールド」を合計することで、それぞれの年度のネット・キャッシュ・フローが算出されます。
1年度末のネット・キャッシュ・フロー: 112.5万円(タックス・シールド)+ 350万円(税引後販売キャッシュ・フロー)= 462.5万円
2年度末のネット・キャッシュ・フロー: 112.5万円(タックス・シールド)+ 420万円(税引後販売キャッシュ・フロー)= 532.5万円
この問題を通じて、課税所得に影響を与える項目と与えない項目を正確に見極め、税引後のキャッシュ・フローを適切に計算する能力を養うことが重要です。
問3 問題解説
この問題は、設備投資終了時に固定資産を売却し、その際に売却益が発生した場合のキャッシュ・フローの計算を問うものです。売却益は課税所得に影響を与えるため、その税効果を考慮する必要があります。
まず、設備売却時の帳簿価額を計算します。定額法で減価償却を行う場合、年間減価償却費を計算し、取得原価から使用期間分の減価償却累計額を差し引くことで帳簿価額が求められます。 年間減価償却費: \( (500万円(取得原価)-50万円(残存価額)) ÷ 2年(耐用年数) = 225万円 \) 2年度末の帳簿価額: \( 500万円 - (225万円 × 2年) = 50万円 \)
次に、売却損益を計算します。これは「売却価額 - 帳簿価額」で求められます。 売却益: \( 150万円(売却価額)-50万円(帳簿価額) = 100万円 \)
売却益は益金に算入され、課税所得を増加させるため、その分法人税等が増加します。この法人税等の増加額はキャッシュ・アウト・フローとして扱われます。 売却益に対する法人税等の支出: \( 100万円 × 30\% = 30万円 \)
最後に、設備売却による総キャッシュ・フローを計算します。これは、売却収入(キャッシュ・イン・フロー)から、売却益による法人税等の増加分(キャッシュ・アウト・フロー)を差し引いたものです。 総キャッシュ・フロー: \( 150万円(売却収入)-30万円(税金支出) = 120万円 \)
この問題を通じて、固定資産の売却収入そのものと、売却によって生じる損益の税効果を区別し、適切にキャッシュ・フローに反映させる重要性を理解してください。
問4 問題解説
この問題は、設備投資終了時に固定資産を売却し、その際に売却損が発生した場合のキャッシュ・フローの計算を問うものです。売却損は課税所得に影響を与えるため、その税効果を考慮する必要があります。
まず、設備売却時の帳簿価額を計算します。問3と同様に、定額法による年間減価償却費を計算し、取得原価から減価償却累計額を差し引きます。 年間減価償却費: \( (800万円(取得原価)-80万円(残存価額)) ÷ 2年(耐用年数) = 360万円 \) 2年度末の帳簿価額: \( 800万円 - (360万円 × 2年) = 80万円 \)
次に、売却損益を計算します。 売却損: \( 30万円(売却価額)-80万円(帳簿価額) = △50万円 \) (50万円の売却損)
売却損は損金に算入され、課税所得を減少させるため、法人税等が節約されます。この法人税等の節約額は、減価償却費のタックス・シールドと同様に、キャッシュ・イン・フローとして扱われます。 売却損のタックス・シールド: \( 50万円 × 30\% = 15万円 \)
最後に、設備売却による総キャッシュ・フローを計算します。これは、売却収入(キャッシュ・イン・フロー)に、売却損によるタックス・シールド(キャッシュ・イン・フロー)を加算したものです。 総キャッシュ・フロー: \( 30万円(売却収入)+15万円(タックス・シールド) = 45万円 \)
固定資産の売却損は、一見するとマイナスの影響しかないように見えますが、税効果によって法人税の節約という形でキャッシュ・イン・フローをもたらす点をしっかりと押さえておきましょう。
問5 問題解説
この問題は、年々のネット・キャッシュ・フローの計算において、材料在庫の消費がどのように影響するかを問うものです。特に、材料費が現金支出を伴わない場合に、その税効果を適切に考慮できるかがポイントとなります。
ネット・キャッシュ・フローは、以下の3つの要素の合算によって構成されます。
- 製品の生産販売に伴う税引後のキャッシュ・フロー(材料費を除く)
- 減価償却費のタックス・シールド
- 在庫材料の消費によるタックス・シールド
まず、減価償却費のタックス・シールドを計算します。 年間減価償却費: \( 900万円 ÷ 2年 = 450万円 \) タックス・シールド: \( 450万円 × 30\% = 135万円 \)
次に、**製品の生産販売に伴う税引後のキャッシュ・フロー(材料費を除く)**を計算します。これは、売上収入から「材料費を除く現金支出費用」を差し引いた金額に、税引後の効果を考慮したものです。
1年度末の計算: 売上収入:1,100万円 材料費を除く現金支出費用:△400万円 (1,100万円 – 400万円) × (1 – 30%) = 700万円 × 70% = 490万円
2年度末の計算: 売上収入:1,300万円 材料費を除く現金支出費用:△500万円 (1,300万円 – 500万円) × (1 – 30%) = 800万円 × 70% = 560万円
そして、この問題の重要なポイントである在庫材料の消費によるタックス・シールドを計算します。期首に保有していた在庫材料を消費する場合、その年度に現金の購入支出は発生しませんが、材料費として損益計算書に計上され、課税所得を減少させます。これにより法人税等の節約が生じるため、その節約額(タックス・シールド)をキャッシュ・イン・フローとして計上します。
1年度末の材料費のタックス・シールド: 120万円(消費額)× 30%(税率)= 36万円
2年度末の材料費のタックス・シールド: 150万円(消費額)× 30%(税率)= 45万円
最後に、上記の3つの要素(減価償却費のタックス・シールド、材料費を除く税引後販売キャッシュ・フロー、材料費のタックス・シールド)を合計して、各年度のネット・キャッシュ・フローを算出します。
1年度末のネット・キャッシュ・フロー: 135万円(減価償却TS)+ 490万円(税引後販売CF)+ 36万円(材料費TS)= 661万円
2年度末のネット・キャッシュ・フロー: 135万円(減価償却TS)+ 560万円(税引後販売CF)+ 45万円(材料費TS)= 740万円
この問題を通じて、非現金支出費用である減価償却費だけでなく、現金支出を伴わない材料費の消費もタックス・シールドを生み出すことをしっかりと理解し、キャッシュ・フロー計算に反映できるようにしましょう。
まとめ
- ポイント1:キャッシュ・フローの分類と税金の影響
- 固定資産の購入支出:法人税等の考慮は不要です。
- 固定資産の減価償却費:法人税等の考慮が必要です(タックス・シールド)。
- 売上収入、製造原価の支出:法人税等の考慮が必要です。
- 投資終了時の固定資産売却収入:法人税等の考慮は不要です。ただし、売却損益は考慮が必要です。
- ポイント2:減価償却費のタックス・シールド
- 減価償却費は非現金支出費用ですが、課税所得を減らし法人税等を節約する効果(タックス・シールド)があります。
- タックス・シールド = 減価償却費 × 税率 で計算され、キャッシュ・イン・フローとして扱います。
- ポイント3:税引後当期純利益からのキャッシュ・フロー計算
- 問題で税引後当期純利益が与えられている場合、当期純利益 + 減価償却費 で年々の税引後キャッシュ・フローを求めることができます。
- ポイント4:設備投資終了時のキャッシュ・フロー
- 固定資産売却益が生じた場合:売却益に対する法人税等の増加分(売却益 × 税率)はキャッシュ・アウト・フロー(COF)となります。
- 固定資産売却損が生じた場合:売却損による法人税等の節約分(売却損 × 税率)はタックス・シールドとしてキャッシュ・イン・フロー(CIF)となります。
- 固定資産廃棄損が生じた場合:廃棄のための支出(COF)は税引後金額(廃棄支出 × (1 – 税率))で計算します。また、廃棄損による法人税等の節約分(廃棄損 × 税率)はタックス・シールドとしてCIFとなります。
- ポイント5:材料在庫の消費とタックス・シールド
- 過去に購入した材料在庫を消費して材料費を計上する場合、現金の支出は伴いませんが、材料費が損金算入されることで法人税等の節約(タックス・シールド)が生じます。
- この**材料費のタックス・シールド(材料消費額 × 税率)**はキャッシュ・イン・フローとして計上します。