相互配賦法-連立方程式法

問題 

問1:最終補助部門費の計算

以下の資料に基づき、連立方程式法を用いて電力部門と修繕部門の最終補助部門費を計算しなさい。なお、計算の結果、円未満の端数が生じる場合は四捨五入しなさい。

〔資料〕

  1. 当社は、補助部門費の配賦に相互配賦法(連立方程式法)を採用している。
  2. 各部門費(第1次集計費)
    • 第1製造部門:¥12,000
    • 第2製造部門:¥10,000
    • 電力部門:¥2,500
    • 修繕部門:¥1,500
  3. 補助部門からの用役提供割合
    • 電力部門:
      • 第1製造部門へ:60%
      • 第2製造部門へ:30%
      • 修繕部門へ:10%
    • 修繕部門:
      • 第1製造部門へ:45%
      • 第2製造部門へ:40%
      • 電力部門へ:15%

問2:製造部門への配賦額

問1の計算結果に基づき、電力部門から第1製造部門へ配賦される金額と、修繕部門から第2製造部門へ配賦される金額をそれぞれ計算しなさい。なお、円未満の端数が生じる場合は切り捨てなさい。


問3:補助部門費配賦の仕訳

問1および問2の計算結果に基づき、電力部門費と修繕部門費の配賦に関する仕訳を示しなさい。なお、仕訳の端数処理は、配賦額の合計が最終部門費に一致するように調整しなさい。


問4:部門費配賦方法に関する記述

部門費配賦方法に関する以下の記述のうち、最も適切なものを一つ選びなさい。

ア.直接配賦法は、補助部門間の用役授受を完全に無視するため、最も正確な配賦結果が得られる。

イ.階梯式配賦法は、補助部門間の用役授受を一部考慮するが、用役授受の順番によって配賦結果が変動する可能性がある。

ウ.連続配賦法は、連立方程式法に比べて計算が簡便であり、検定試験で一般的に推奨される。

エ.相互配賦法は、補助部門間の用役授受をすべて考慮するが、その計算は簡便的な方法に限られる。


問5:配賦率の算出と最終部門費の計算

以下の資料に基づき、連立方程式法を用いて修繕部門の最終補助部門費を計算しなさい。なお、小数点以下は第3位を四捨五入し、円未満の端数は切り捨てること。

〔資料〕

  1. 当社は、補助部門費の配賦に相互配賦法(連立方程式法)を採用している。
  2. 各部門費(第1次集計費)
    • 機械部門:¥15,000
    • 組立部門:¥13,000
    • 動力部門:¥3,000
    • 修繕部門:¥2,000
  3. 補助部門の用役提供実績
    • 動力消費量(kwh):
      • 機械部門:800
      • 組立部門:600
      • 修繕部門:200
      • 動力部門:-
      • 合計:1,600kwh
    • 修繕時間(時間):
      • 機械部門:50
      • 組立部門:30
      • 動力部門:20
      • 修繕部門:-
      • 合計:100時間


<答え>

問1:最終補助部門費の計算

電力部門費(X)、修繕部門費(Y)とすると、

\(X = 2,500 + 0.15Y \quad \cdots (1)\\\) \(Y = 1,500 + 0.10X \quad \cdots (2)\)

(2)を(1)に代入して

\(X = 2,500 + 0.15(1,500 + 0.10X)\\\) \(X = 2,500 + 225 + 0.015X\\\) \(X – 0.015X = 2,725\\\) \(0.985X = 2,725\\\)

\(X = 2,725 \div 0.985 \approx 2,766.5076 \rightarrow \mathbf{2,767}\)円

Xの値を(2)に代入して

\(Y = 1,500 + 0.10 \times 2,767\\\)

\(Y = 1,500 + 276.7\) \(Y = \mathbf{1,776.7}\)円

解答:

  • 電力部門の最終補助部門費:¥2,767
  • 修繕部門の最終補助部門費:¥1,776.7 (注:仕訳で使用する際は、別途指示がない限り整数に丸めます)

問2:製造部門への配賦額

  • 電力部門から第1製造部門へ配賦される金額 電力部門の最終補助部門費 ¥2,767 × 60% = ¥1,660.2 → ¥1,660
  • 修繕部門から第2製造部門へ配賦される金額 修繕部門の最終補助部門費 ¥1,776.7 × 40% = ¥710.68 → ¥710

問3:補助部門費配賦の仕訳

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額
第1製造部門費1,660電力部門費2,767
第2製造部門費830
修繕部門費277
第1製造部門費799修繕部門費1,777
第2製造部門費711
電力部門費267

計算内訳:

  • 電力部門費の配賦(最終部門費 ¥2,767)
    • 第1製造部門へ:¥2,767 × 60% = ¥1,660.2 → ¥1,660
    • 第2製造部門へ:¥2,767 × 30% = ¥830.1 → ¥830
    • 修繕部門へ:¥2,767 × 10% = ¥276.7 → ¥277
    • (合計:¥1,660 + ¥830 + ¥277 = ¥2,767。貸借一致)
  • 修繕部門費の配賦(最終部門費 ¥1,776.7 → 仕訳上は¥1,777と仮定)
    • 第1製造部門へ:¥1,777 × 45% = ¥799.65 → ¥799
    • 第2製造部門へ:¥1,777 × 40% = ¥710.8 → ¥711
    • 電力部門へ:¥1,777 × 15% = ¥266.55 → ¥267
    • (合計:¥799 + ¥711 + ¥267 = ¥1,777。貸借一致)

問4:部門費配賦方法に関する記述

イ.階梯式配賦法は、補助部門間の用役授受を一部考慮するが、用役授受の順番によって配賦結果が変動する可能性がある。

問5:配賦率の算出と最終部門費の計算

1. 配賦率の算出

  • 動力部門の用役提供割合(動力消費量合計1,600kwh)
    • 機械部門へ:800kwh ÷ 1,600kwh = 50%
    • 組立部門へ:600kwh ÷ 1,600kwh = 37.5%
    • 修繕部門へ:200kwh ÷ 1,600kwh = 12.5%
  • 修繕部門の用役提供割合(修繕時間合計100時間)
    • 機械部門へ:50時間 ÷ 100時間 = 50%
    • 組立部門へ:30時間 ÷ 100時間 = 30%
    • 動力部門へ:20時間 ÷ 100時間 = 20%

2. 連立方程式の立式 動力部門の最終部門費をX、修繕部門の最終部門費をYとすると、

\(X = 3,000 + 0.20Y \quad \cdots (1)\\\) \(Y = 2,000 + 0.125X \quad \cdots (2)\\\)

3. 連立方程式の解法 (2)を(1)に代入して

\(X = 3,000 + 0.20(2,000 + 0.125X)\\\) \(X = 3,000 + 400 + 0.025X\\\) \(X – 0.025X = 3,400\\\) \(0.975X = 3,400\) \(X = 3,400 \div 0.975 \approx 3,487.179 \rightarrow \mathbf{3,487.18}\\\)

Xの値を(2)に代入して

\(Y = 2,000 + 0.125 \times 3,487.18\\\) \(Y = 2,000 + 435.8975\\\) \(Y = \mathbf{2,435.8975}\\\)

解答:

  • 修繕部門の最終補助部門費:¥2,435 (円未満切り捨て)


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相互配賦法(連立方程式法)の徹底解説

部門別計算は、企業が製品やサービスの製造にかかった費用を、その発生源である部門ごとに集計・分類し、管理会計に役立てるための重要なプロセスです。特に、補助部門(製造活動を直接行わないが、製造部門をサポートする部門、例:電力部門、修繕部門など)で発生した費用をどのように製造部門へ配賦するかは、製品原価の正確な計算に直結するため非常に重要です。

部門費の配賦方法には、大きく分けて「直接配賦法」「階梯式配賦法」「相互配賦法」の3種類があります。この中で、最も計算が複雑である一方で、最も正確な原価計算を実現するのが「相互配賦法」です。本記事では、簿記1級で必須のテーマである、相互配賦法の中でも特に重要な「連立方程式法」について、その概念から具体的な計算手順まで、徹底的に解説していきます。

相互配賦法とは?

相互配賦法とは、補助部門間の用役(サービス)の授受をすべて考慮して、補助部門費を各部門へ配賦する方法です。例えば、電力部門が修繕部門に電力を供給し、同時に修繕部門が電力部門の設備を修繕するといった、相互にサービスを提供し合う関係を会計上も正確に反映させます。

この方法は、他の配賦方法(直接配賦法、階梯式配賦法)と比較して、最も実態に即した、すなわち最も正確な配賦計算を行うことができるとされています。なぜなら、直接配賦法が補助部門間の用役授受を全く考慮しないのに対し、階梯式配賦法が一部しか考慮しないため、相互配賦法が唯一、すべての相互関係を網羅的に捉えるからです。

相互配賦法の種類

相互配賦法には、大きく分けて「簡便的な方法」と「純粋な相互配賦法」の二つのアプローチがあります。

簡便的な方法

この方法は、補助部門費の配賦を「第1次配賦」と「第2次配賦」の2段階に分けて行います。第1次配賦では、補助部門間の用役授受をすべて考慮して配賦を行いますが、第2次配賦では、補助部門間の用役授受をすべて無視し、残った費用を直接配賦法によって製造部門に配賦します。これは、計算の手間を軽減するためのアプローチですが、その分、純粋な相互配賦法ほどの正確性はありません。

純粋な相互配賦法

純粋な相互配賦法は、補助部門間の用役授受を一貫してすべて考慮し、最も正確な配賦計算を行う方法です。この純粋な相互配賦法の中には、さらに「連続配賦法」と「連立方程式法」の2種類があります。

  • 連続配賦法(逐次配賦法) 連続配賦法は、第2次配賦以降も補助部門間の用役授受をすべて考慮し、第3次、第4次…と、配賦すべき補助部門費がほぼゼロになるまで配賦計算を繰り返す方法です。理論的には正確な結果が得られますが、非常に手間がかかり、特に検定試験での出題にはそぐわないとされています。無限に続く計算を、実務上あるいは試験上、どこかで打ち切る必要があるという欠点があります。
  • 連立方程式法(同時配賦法) 今回学習する連立方程式法は、連続配賦法と同様の計算結果を、連立方程式を用いることによって効率的に得る方法です。具体的には、他の補助部門からの配賦額を含めた「最終的な各補助部門費」を連立方程式によって求め、その最終的な補助部門費に基づいて製造部門や他の補助部門に配賦を行います。この方法は、実務でも試験でも非常に重要であり、確実にマスターすべきです。

連立方程式法の具体的なステップ

連立方程式法による補助部門費の配賦は、以下のステップで進められます。

ステップ1:部門費の把握と配賦基準の確認

まず、各部門で第1次集計された部門費(第一次集計費)を確認します。これは、各部門で直接発生した費用を指します。次に、補助部門が提供する用役の配賦基準(例:電力部門なら動力消費量、修繕部門なら修繕時間など)を確認し、各部門がその用役をどれだけ消費しているかの実績を把握します。

ステップ2:用役授受比率の算出

補助部門間の用役授受を正確に把握するために、各補助部門が他の部門(製造部門および他の補助部門)に対して提供した用役の割合(配賦率)を算出します。例えば、電力部門が合計1,000kwhの電力を提供し、そのうち修繕部門が100kwhを消費した場合、修繕部門は電力部門の用役の10%(100kwh ÷ 1,000kwh)を消費していることになります。この比率が、連立方程式を立てる上での重要な係数となります。

ステップ3:連立方程式の立式

ここが連立方程式法の最も重要なポイントであり、正確な立式が計算全体の成否を分けます。 各補助部門の「最終的な部門費」を未知数(例えば、電力部門費をX、修繕部門費をYなど)として設定します。そして、以下の基本形に沿って方程式を立てます。

最終的なA補助部門費 = A補助部門の第1次集計費 + B補助部門からの配賦額 + C補助部門からの配賦額

例として、電力部門(X)と修繕部門(Y)の2つの補助部門がある場合を考えます。

  • 電力部門の最終部門費(X)は、電力部門自身の第1次集計費に、修繕部門から電力部門へ配賦される費用(修繕部門の最終部門費Yに修繕部門から電力部門への配賦率を乗じたもの)を加えた額になります。 \(X = \text{電力部門の第1次集計費} + (\text{Y} \times \text{修繕部門から電力部門への配賦率})\)
  • 同様に、修繕部門の最終部門費(Y)は、修繕部門自身の第1次集計費に、電力部門から修繕部門へ配賦される費用(電力部門の最終部門費Xに電力部門から修繕部門への配賦率を乗じたもの)を加えた額になります。 \(Y = \text{修繕部門の第1次集計費} + (\text{X} \times \text{電力部門から修繕部門への配賦率})\)

このようにして、未知数の数と同じ数の方程式を立てることができれば、最終補助部門費を求める準備が整います。

ステップ4:連立方程式の解法

立てた連立方程式を解き、各補助部門の最終的な部門費(X, Yなど)を算出します。解き方には「代入法」と「加減法」がありますが、どちらの方法を用いても結果は同じです。検定試験では、計算の正確性とスピードが求められるため、自分が得意な方法を練習し、確実に解けるようにしておくことが重要です。

ステップ5:最終補助部門費の配賦

ステップ4で計算された「最終的な補助部門費」を、最初に算出した用役授受比率に基づいて、製造部門や他の補助部門へ配賦していきます。このとき、注意すべきは、第1次集計費ではなく、連立方程式を解いて求めた最終的な金額を配賦の対象とする点です。例えば、電力部門の最終部門費が2,000円と求まり、そのうち製造部門が60%消費している場合、製造部門には2,000円 × 60% = 1,200円が配賦されます。

ステップ6:製造部門費の集計

最後に、各製造部門の最終的な部門費を集計します。これは、各製造部門の第1次集計費に、配賦された補助部門費を加算することで求められます。この集計結果が、製品原価計算の基礎となります。

部門費配賦表での表示

相互配賦法(連立方程式法)を適用した場合の「部門費配賦表」では、特徴的な記入方法があります。 ポイントは、補助部門欄の合計が最終的にゼロになる点です。これは、正確な配賦計算が行われていれば、補助部門で発生した費用はすべて他の部門へ配賦され、補助部門自身の負担はなくなるという会計原則によるものです。

具体的には、部門費配賦表の補助部門欄には、第1次集計費に加えて、他の補助部門からの配賦額(プラス)、そしてその補助部門自身が他の部門へ配賦した最終部門費(マイナス、△表記)を記入します。これにより、各補助部門の列の合計がゼロになることを確認でき、計算の正確性を担保できます。


【問題解説】

問1:最終補助部門費の計算

この問題は、連立方程式法における最も基礎となる「最終補助部門費」の算出プロセスを問うものです。ポイントは、補助部門が互いに用役を提供し合っている関係性を方程式で表現することにあります。

まず、最終的な電力部門費をX、修繕部門費をYと設定します。次に、各補助部門の第一次集計費と、他の補助部門から受け取る配賦額を等式で結びます。電力部門は修繕部門から用役を受け、修繕部門は電力部門から用役を受けます。資料に示された用役提供割合「電力部門へ:15%」と「修繕部門へ:10%」は、それぞれ修繕部門が電力部門に提供する割合、電力部門が修繕部門に提供する割合を指します。したがって、電力部門(X)は自身の第一次集計費¥2,500に、修繕部門の最終部門費(Y)の15%(0.15Y)が加算され、修繕部門(Y)は自身の第一次集計費¥1,500に、電力部門の最終部門費(X)の10%(0.10X)が加算されるという関係が成り立ちます。

この関係を正確に方程式に落とし込み、代入法などで解くことで、互いの用役授受を考慮した「真の」部門費を算出できるのです。計算においては、小数点以下の処理(今回は四捨五入)に注意し、検定試験の指示に従いましょう。正確な立式と計算が、この問題の正答への道筋となります。

問2:製造部門への配賦額

問1で算出した最終補助部門費を、実際に製造部門へ配賦するステップを確認する問題です。ここで重要なのは、「最終補助部門費」を配賦のベースとするという点です。第一次集計費ではありませんので、誤って初期の集計費を基に計算しないよう注意が必要です。

電力部門の最終部門費¥2,767は、電力部門が提供した用役全体の価値を示しています。このうち、電力部門が第1製造部門へ60%の用役を提供しているため、配賦額は¥2,767 × 60%となります。同様に、修繕部門の最終部門費¥1,776.7のうち、第2製造部門が40%の用役を受けているため、配賦額は¥1,776.7 × 40%となります。計算結果の円未満の端数は、問題の指示に従い切り捨てて処理します。

このステップでは、連立方程式を解いて求めた金額が「実際に配賦される費用」であることを理解することが求められます。用役の提供割合を正確に乗じることで、製造部門に負担すべき補助部門費を割り当て、正確な製品原価計算の基礎を築きます。

問3:補助部門費配賦の仕訳

部門費配賦の仕訳は、計算した配賦額を会計帳簿に反映させるための具体的な処理を問うものです。勘定連絡図をイメージすると理解しやすいでしょう。補助部門費は、最終的に製造部門へ集約されるべき費用です。

仕訳の基本的な考え方は、配賦を受ける部門(製造部門や他の補助部門)の費用勘定を借方(増加)に、配賦を行う補助部門の費用勘定を貸方(減少)に記入することです。例えば、電力部門費を配賦する場合、電力部門費勘定は¥2,767減少します。その代わり、電力部門から用役を受けた第1製造部門費、第2製造部門費、修繕部門費が増加します。これらの借方合計が貸方の電力部門費の金額と一致することを確認することで、計算が正しいかどうかの検証にもなります。

修繕部門費についても同様です。修繕部門の最終部門費¥1,776.7を配賦する際、仕訳上は¥1,777として処理することで、借方と貸方の合計が一致するように調整します。この仕訳は、補助部門費が最終的に製造部門へと転嫁されていくプロセスを会計的に表現するものであり、原価計算の正確性を担保する上で不可欠な作業です。

問4:部門費配賦方法に関する記述

この問題は、部門費配賦方法全般に関する概念的な理解を問う選択肢問題です。各配賦方法の特性を正確に把握しているかが問われます。

  • ア.直接配賦法は、補助部門間の用役授受を全く考慮しないため、最も正確ではありません。用役授受がある現実とは乖離します。
  • イ.階梯式配賦法は、配賦の順番を決定し、一方通行の用役授受のみを考慮します。そのため、用役授受が相互にある場合、その順番によって配賦結果がわずかに変動する「順序依存性」という特性があります。これは適切な記述です。
  • ウ.連続配賦法は、理論的には正確ですが、計算が複雑で手間がかかります。検定試験では、効率的な連立方程式法が推奨されます。
  • エ.相互配賦法は、補助部門間の用役授受をすべて考慮する最も正確な方法です。しかし、その計算は連立方程式法などの純粋な方法であり、「簡便的な方法に限られる」という記述は不適切です。簡便的な方法は相互配賦法の一種ですが、最も正確な「純粋な相互配賦法」とは異なります。

以上の理由から、イが最も適切な記述となります。各配賦方法のメリット・デメリット、特性を比較して理解しておくことが重要です。特に、相互配賦法が「すべて考慮する」最も正確な方法であることをしっかり押さえましょう。

問5:配賦率の算出と最終部門費の計算

この問題は、配賦に用いる用役提供割合(配賦率)を自身で計算するところからスタートする応用問題です。与えられた資料から正しい比率を導き出す能力と、その比率を使って正確に方程式を立て、解く能力の両方が試されます。

まず、動力部門と修繕部門がそれぞれ他の部門にどれだけの用役を提供しているかを、実績データから算出します。例えば、動力部門が総動力消費量1,600kwhのうち修繕部門に200kwhを提供していれば、修繕部門への提供割合は200 ÷ 1,600 = 12.5%となります。同様に修繕部門のデータからも比率を算出します。この比率が、連立方程式における係数となります。

比率の算出後は、問1と同様に連立方程式を立てて解きます。問題文に記載された「小数点以下は第3位を四捨五入し、円未満の端数は切り捨てること」といった端数処理の指示は、正答を得る上で極めて重要です。計算の最終結果だけでなく、途中計算における端数処理も合否を分けるポイントとなることがありますので、細心の注意を払いましょう。


【まとめ】

部門別計算における「相互配賦法(連立方程式法)」は、簿記1級の原価計算で非常に重要なテーマです。ここまでの解説内容を、試験対策の視点から5つのポイントにまとめて確認しましょう。

  • ポイント1:相互配賦法は最も正確な配賦方法です 相互配賦法は、補助部門間で互いに用役を提供し合う関係を会計上もすべて考慮する、最も実態に即した正確な配賦計算方法です。直接配賦法や階梯式配賦法と比較し、その精度において優位性があります。この基本的な特性を理解しておくことが、他の配賦方法との違いを明確にする上で非常に重要です。
  • ポイント2:連立方程式法は効率的な計算手法です 純粋な相互配賦法には、連続配賦法と連立方程式法がありますが、連続配賦法が反復計算で手間がかかるのに対し、連立方程式法は代数的に一発で正確な最終部門費を算出できる効率的な方法です。検定試験でも、計算の簡便さから、この連立方程式法が中心に出題されます。
  • ポイント3:連立方程式の正確な立式が成功の鍵です 連立方程式法において、最も重要かつ難易度が高いのが方程式を正確に立てることです。各補助部門の最終部門費を未知数とし、「第一次集計費 + 他部門からの配賦額」という基本構造を常に意識し、用役授受比率を正確に係数として組み込む練習を繰り返し行いましょう。
  • ポイント4:最終補助部門費を配賦のベースとします 連立方程式を解いて求められた「最終的な補助部門費」は、他の補助部門からの用役受入額を含んだ、その補助部門がサービス提供に最終的に要した真の費用です。この最終的な金額を基に、各製造部門や他の補助部門へ用役消費割合に応じて費用を配賦します。第一次集計費を配賦してしまわないよう、この点をしっかり区別して理解することが重要です。
  • ポイント5:部門費配賦表での合計ゼロを確認しましょう 相互配賦法を適用した部門費配賦表では、配賦計算が正確に行われていれば、補助部門の合計欄が必ずゼロになります。これは、補助部門費が最終的にすべて製造部門に集約されるという会計上の考え方に基づくもので、計算の検証ポイントとして非常に有効です。このゼロになる特性は、計算ミスの発見にも役立ちます。

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この記事を書いた人

簿記2級を取得し、現在簿記1級を勉強中。
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普段は、会社で経理をしながら、経理・簿記関係の情報を発信。
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