問題1 次の資料に基づき、第1法による標準原価カード(製品1kgあたりの標準原価を示す表)を作成しなさい。
〔資料〕
- 直接材料費: 200円/kg × 1kg = 200円
- 直接労務費: 800円/時間 × 3時間 = 2,400円
- 製造間接費: 500円/時間 × 3時間 = 1,500円
- 工程の終点で減損が発生する。正常減損率は完成品に対して10%である。
問題2 次の資料に基づき、第2法による標準原価カードを作成しなさい。
〔資料〕
- 直接材料費: 200円/kg × 1kg = 200円
- 直接労務費: 800円/時間 × 3時間 = 2,400円
- 製造間接費: 500円/時間 × 3時間 = 1,500円
- 工程の終点で減損が発生する。正常減損率は完成品に対して10%である。
問題3 次の資料に基づき、第1法による原価標準を前提にパーシャル・プランによる仕掛品勘定の記入を行いなさい。
〔資料〕
- 月初仕掛品: 15kg(加工費の進捗度20%)
- 当月投入: 75kg
- 月末仕掛品: 20kg(加工費の進捗度50%)
- 減損: 10kg
- 完成品: 60kg
問題4 次の資料に基づき、第2法による原価標準を前提にパーシャル・プランによる仕掛品勘定の記入を行いなさい。
〔資料〕
- 月初仕掛品: 15kg(加工費の進捗度20%)
- 当月投入: 75kg
- 月末仕掛品: 20kg(加工費の進捗度50%)
- 減損: 10kg
- 完成品: 60kg
問題5 次の資料に基づき、第2法による原価標準を前提に標準原価差異を分析しなさい。
〔資料〕
- 月初仕掛品: 15kg(加工費の進捗度20%)
- 当月投入: 75kg
- 月末仕掛品: 20kg(加工費の進捗度50%)
- 減損: 10kg
- 完成品: 60kg
- 直接材料費: 16,800円(210円/kg × 80kg)
- 直接労務費: 189,600円(790円/時間 × 240時間)
- 製造間接費: 130,000円
解答1
費目 | 計算式 | 標準原価(円) |
---|---|---|
直接材料費 | 200円/kg × 1.1kg | 220 |
直接労務費 | 800円/時間 × 3.3時間 | 2,640 |
製造間接費 | 500円/時間 × 3.3時間 | 1,650 |
合計 | 4,510 |
解答2
費目 | 計算式 | 標準原価(円) |
---|---|---|
直接材料費 | 200円/kg × 1kg | 200 |
直接労務費 | 800円/時間 × 3時間 | 2,400 |
製造間接費 | 500円/時間 × 3時間 | 1,500 |
正常減損費 | 4,100円 × 10% | 410 |
合計 | 4,510 |
解答3
項目 | kgまたは時間 | 単価(円) | 合計(円) |
---|---|---|---|
月初仕掛品 | 15kg | 4,510 | 67,650 |
当月投入 | 75kg | 4,510 | 338,250 |
合計 | 90kg | 405,900 | |
完成品 | 60kg | 4,510 | 270,600 |
月末仕掛品 | 20kg | 4,100 | 82,000 |
減損 | 10kg | 4,100 | 41,000 |
差額(原価差異) | △12,300 |
解答4
項目 | kgまたは時間 | 単価(円) | 合計(円) |
---|---|---|---|
月初仕掛品 | 15kg | 4,100 | 61,500 |
当月投入 | 75kg | 4,510 | 338,250 |
合計 | 90kg | 399,750 | |
完成品 | 60kg | 4,510 | 270,600 |
月末仕掛品 | 20kg | 4,100 | 82,000 |
減損 | 10kg | 4,100 | 41,000 |
差額(原価差異) | △11,950 |
解答5
差異項目 | 計算式 | 差異(円) | 借方/貸方 |
---|---|---|---|
直接材料費価格差異 | (200円 − 210円) × 80kg | △800 | 借方 |
直接材料費消費量差異 | 200円 ×(75kg − 80kg) | △1,000 | 借方 |
直接労務費賃率差異 | (800円 − 790円) × 240時間 | 2,400 | 貸方 |
直接労務費作業時間差異 | 800円 ×(231時間 − 240時間) | △7,200 | 借方 |
製造間接費予算差異 | (132,000円 − 130,000円) | 2,000 | 貸方 |
製造間接費能率差異 | 500円 ×(231時間 − 240時間) | △4,500 | 借方 |
製造間接費操業度差異 | 300円 ×(240時間 − 280時間) | △12,000 | 借方 |
標準原価計算の仕損と減損とは
標準原価計算における仕損と減損は、企業の原価管理において重要な要素である。特に、正常減損と正常仕損は、製品の製造過程で避けられない損失であり、これを適切に原価に組み込むことで、製品のコストをより正確に把握できる。標準原価計算では、これを「第1法」と「第2法」の2つの方法で処理する。
1. 正常減損の処理方法
正常減損とは、製造過程で避けられない材料や作業時間の損失を指し、この費用を製品に分担させることで、より正確なコスト計算が可能となる。正常減損費を原価標準に含める方法には以下の2つがある。
- 第1法:
第1法では、直接材料の標準消費量や直接作業時間を正常減損分だけ増加させる。例えば、完成品1kgを生産するために通常1kgの材料が必要だが、10%の正常減損が発生する場合、標準消費量は1.1kgと設定する。これにより、正常減損費は直接材料費に組み込まれ、製品1kgあたりの標準原価は直接材料費220円、直接労務費2,640円、製造間接費1,650円、合計4,510円となる。 - 第2法:
第2法では、正常減損費を正味標準原価に特別費として別建てで加算する。例えば、製品1kgあたりの正味標準原価が4,100円の場合、正常減損率10%に基づき4,100円 × 10% = 410円を加算し、総標準原価を4,510円とする。この方法は、正常減損費を完成品にのみ負担させるため、より正確なコスト計算が可能となる。
2. 第1法と第2法の比較
第1法では、正常減損費が標準消費量に含まれるため、仕掛品にもその費用が分担されるという欠点がある。一方、第2法では、正常減損費を別建てにするため、仕掛品には正味標準原価を使用し、完成品には総標準原価を使用することで、仕掛品に不要な費用が加算されない。この違いにより、第2法はより正確な原価計算が可能となり、異常減損費も容易に把握できる。
3. 正常仕損の処理方法
正常仕損は、製造過程で発生する製品の不良品であり、これを適切に処理することで原価の正確性が保たれる。正常仕損には評価額がある場合、その評価額を仕損品の標準原価から控除した金額が正常仕損費となる。例えば、製品1個あたりの標準原価が4,100円で、仕損品の評価額が800円の場合、正常仕損費は4,100円 − 800円 = 3,300円となり、これに正常仕損率10%を掛けて製品1個あたりの正常仕損費を330円と計算する。最終的に、正味標準原価4,100円に330円を加算し、総標準原価を4,430円とする。
4. パーシャル・プランによる仕掛品勘定の記入
パーシャル・プランでは、直接材料費、直接労務費、製造間接費の当月発生額を使用し、仕掛品、完成品、および減損の標準原価を計算する。第1法では、月初仕掛品と当月投入量に正常減損費が含まれるため、原価差異が生じやすい。一方、第2法では、仕掛品には正味標準原価を、完成品には総標準原価を使用するため、より正確な計算が可能となる。
5. 標準原価差異の分析
標準原価差異は、直接材料費、直接労務費、製造間接費の各差異を分析することで、コスト管理の精度を向上させる。例えば、直接材料費の価格差異は(標準単価 − 実際単価) × 実際消費量、消費量差異は標準単価 ×(標準消費量 − 実際消費量)で計算される。直接労務費では賃率差異と作業時間差異を、製造間接費では予算差異、能率差異、操業度差異を分析することで、各要因によるコストの影響を明確にできる。第2法を用いることで、異常減損費も把握でき、原価管理の精度が向上する。
6. まとめ
標準原価計算における仕損と減損の処理は、企業のコスト管理において重要な役割を果たす。第1法は計算が簡便であるが、仕掛品にも正常減損費を負担させるため、精度に欠ける。一方、第2法は正常減損費を別建てにすることで、仕掛品と完成品を区別し、より正確なコスト計算を実現する。また、異常減損費も把握できるため、原価管理の精度が向上し、企業の競争力強化に寄与する。
問題解説
解説1
第1法による標準原価カードの作成では、正常減損費を直接材料費、直接労務費、および製造間接費の標準消費量にあらかじめ含める方法を採用します。具体的には、完成品1kgを生産するために必要な直接材料の標準消費量を1kgではなく、正常減損分10%を加えた1.1kgとします。直接労務費と製造間接費についても同様に、標準直接作業時間を3時間から10%増加させて3.3時間に設定します。これにより、1kgあたりの標準原価は次のように計算されます。直接材料費は200円/kg × 1.1kg = 220円、直接労務費は800円/時間 × 3.3時間 = 2,640円、製造間接費は500円/時間 × 3.3時間 = 1,650円となり、合計で4,510円です。この方法は計算が簡便である一方で、仕掛品にも正常減損費を負担させてしまうため、厳密な管理には適していません。
解説2
第2法では、正常減損費を正味の標準原価に別建てで加算する方法を採用します。まず、製品1kgあたりの正味標準原価を計算し(直接材料費200円、直接労務費2,400円、製造間接費1,500円、合計4,100円)、これに正常減損費を加えます。正常減損費は正味標準原価の10%であるため、4,100円 × 10% = 410円です。したがって、製品1kgあたりの標準原価は4,100円 + 410円 = 4,510円となります。この方法では、正常減損費を別建てで計算するため、仕掛品には正常減損費を負担させず、より正確な計算が可能です。
解説3
パーシャル・プランによる仕掛品勘定の記入では、第1法の標準原価を用いて計算します。月初仕掛品(15kg)は1kgあたり4,510円、当月投入(75kg)も同様の単価で計算し、合計405,900円となります。完成品(60kg)は1kgあたり4,510円で計算し、270,600円、月末仕掛品(20kg)は正味標準原価の4,100円を使用して82,000円、減損(10kg)も同様に4,100円で41,000円です。これらを差し引いた差額12,300円は原価差異として処理されます。第1法では正常減損費が仕掛品にも含まれるため、厳密な管理には向きません。
解説4
第2法を用いた場合、仕掛品には正味標準原価(4,100円)、完成品には総標準原価(4,510円)を使用します。これにより、月初仕掛品(15kg)は61,500円、当月投入(75kg)は338,250円で計算し、合計で399,750円となります。完成品(60kg)は4,510円で270,600円、月末仕掛品(20kg)は4,100円で82,000円、減損(10kg)は4,100円で41,000円です。これにより、原価差異は11,950円となります。第2法は正常減損費を別建てで計算するため、仕掛品に不要な費用が加算されず、より正確な管理が可能です。
解説5
標準原価差異の分析では、直接材料費、直接労務費、製造間接費の各差異を計算します。直接材料費の価格差異は(200円 − 210円) × 80kg = △800円、消費量差異は200円 ×(75kg − 80kg) = △1,000円です。直接労務費の賃率差異は(800円 − 790円) × 240時間 = 2,400円、作業時間差異は800円 ×(231時間 − 240時間) = △7,200円です。製造間接費では、予算差異が132,000円 − 130,000円 = 2,000円、能率差異が500円 ×(231時間 − 240時間) = △4,500円、操業度差異が300円 ×(240時間 − 280時間) = △12,000円となります。第2法では正常減損費が別建てで計算されるため、異常減損や標準原価差異をより正確に把握でき、企業の原価管理において優れた方法です。