問1
当社は標準原価計算制度を採用しており、製品Aの製造において、工程の終点で減損が発生します。正常減損率は完成品に対して10%です。直接材料は工程の始点で投入されます。
以下の資料に基づき、第1法による製品A 1kgあたりの標準原価を算出しなさい。
〔資料〕製品A 1kgあたりの正味標準原価
- 直接材料費:@300円/kg × 1kg = 300円
- 直接労務費:@1,000円/時間 × 2時間 = 2,000円
- 製造間接費:@600円/時間 × 2時間 = 1,200円 (製造間接費は直接作業時間を基準に配賦)
問2
問1と同じ資料および設定に基づき、第2法による製品A 1kgあたりの総標準原価を算出しなさい。
問3
当社は標準原価計算制度を採用しており、パーシャル・プランにより記帳しています。製品Bの当月生産データは以下の通りです。
〔資料〕
- 当月の生産データ
- 月初仕掛品:20kg(加工進捗度 40%)
- 当月投入:80kg
- 月末仕掛品:25kg(加工進捗度 60%)
- 減損:15kg
- 完成品:60kg
- 工程の終点で減損が発生する。正常減損率は完成品に対して10%であり、それを超える分は異常減損とする。
- 直接材料は工程の始点で投入される。
- 製品B 1kgあたりの原価標準(第1法による)
- 直接材料費:@440円/kg × 1.1kg = 484円
- 直接労務費:@1,200円/時間 × 2.2時間 = 2,640円
- 製造間接費:@700円/時間 × 2.2時間 = 1,540円
- 合計:4,664円
- 当月の実際発生額
- 直接材料費:43,000円
- 直接労務費:180,000円
- 製造間接費:105,000円
上記の資料に基づき、当月の仕掛品勘定における完成品振替額を計算しなさい。
問4
問3と同じ資料に基づき、当月の直接材料費差異を計算しなさい。ただし、実際価格は@430円/kg、実際消費量は100kgであった。
問5
当社は標準原価計算制度を採用しており、製造工程で仕損が発生します。仕損品には評価額があります。以下の資料に基づき、第2法による製品C 1個あたりの総標準製造原価を算出しなさい。
〔資料〕製品C 1個あたりの正味標準原価
- 直接材料費:@500円/個 × 1個 = 500円
- 直接労務費:@1,500円/時間 × 3時間 = 4,500円
- 製造間接費:@800円/時間 × 3時間 = 2,400円
- 合計:7,400円
〔追加情報〕
仕損品1個あたりの評価額は1,000円である。
工程の終点で仕損が発生する。正常仕損率は完成品に対して5%である。
問1
製品A 1kgあたりの標準原価(第1法)は以下の通りです。
- 直接材料費:330円
- 直接労務費:2,200円
- 製造間接費:1,320円
- 合計:3,850円
問2
製品A 1kgあたりの総標準原価(第2法)は以下の通りです。
- 合計:3,850円
問3
当月の仕掛品勘定における完成品振替額は以下の通りです。
- 完成品振替額:279,840円
問4
当月の直接材料費差異は以下の通りです。
- 価格差異:1,000円(貸方差異)
- 消費量差異:12,540円(借方差異)
- 合計:11,540円(借方差異)
問5
製品C 1個あたりの総標準製造原価は以下の通りです。
- 合計:7,720円
正常減損・仕損と標準原価計算の基本
標準原価計算制度を採用している企業では、製品の製造過程で発生する減損(原材料の消費や加工の過程で発生する目減りや品質低下)や仕損(製造過程で発生する不良品)の費用をどのように扱うかが重要な論点となります。特に正常減損費や正常仕損費は、製造活動を行う上で避けられないものとして、良品(完成品)に負担させるのが一般的です。これは、実際原価計算の場合と同じ考え方です。
正常減損費を良品に負担させるためには、あらかじめ製品1単位あたりの標準原価である「原価標準」に、この正常減損費を織り込んで設定する必要があります。この方法には、主に「第1法」と「第2法」の2種類が存在します。
1. 正常減損の定義と費用負担
正常減損とは、通常の生産工程において避けられない範囲で発生する減損のことを指します。例えば、完成品100kgに対して10kgの正常減損が発生する場合、その割合は10%(=10kg ÷ 100kg)となります。これを正常減損率と呼びます。正常減損費は、完成品を生産するためにやむを得ず発生する費用であるため、完成品が負担すべき費用とされています。
2. 正常減損が⽣じる場合の原価標準の設定方法
正常減損費を良品に負担させるための原価標準の設定方法には、大きく分けて以下の2つの方法があります。
2.1. 第1法:標準消費量・時間を増やす方法
この方法は、原価標準を設定する際に、直接材料の標準消費量や標準直接作業時間などを、正常減損の分だけあらかじめ増やしておく方法です。過去の試験で「第1法」と呼ばれてきたことから、この名称が用いられています。
具体的な例で考えてみましょう。もし完成品1kgを生産するのに、通常は直接材料が1kg必要だが、正常減損率が10%発生するとします。この場合、完成品1kgを生産するためには、実際には1kgの10%増し、つまり1.1kgの直接材料が必要であると計算します。
この考え方に基づき、原価標準における標準消費量を1.1kgとして設定します。例えば、材料の標準価格が@200円であれば、原価標準は@200円 × 1.1kg = 220円と設定されます。直接労務費や製造間接費についても、同様に正常減損分を含む標準直接作業時間を計算し、原価標準を設定します。
この第1法は、原価管理を厳密に行わない場合などにおいて、正常減損費を原価標準に組み込ませないケースもありますが、その場合は正常減損費が標準原価差異の中に含まれることになります。
2.2. 第2法:正味標準原価に特別費として加算する方法
第2法は、正味の標準原価(まだ正常減損費を負担していない段階での製品の標準原価)に、正常減損費を別建てで加算する方法です。こちらも過去の試験で「第2法」と呼ばれています。
例えば、完成品1kgあたりの正味標準原価が200円であるとします。完成品100kgに対して正常減損が10kg発生し、その正常減損10kgの標準原価が2,000円である場合、完成品1kgあたりの正常減損費は20円(=2,000円 ÷ 100kg(完成品))と計算されます。
この場合、製品1kgあたりの総標準原価は、正味標準原価200円に正常減損費20円を加算して、220円と設定されます。第2法では、この総標準原価のことを「総標準製造原価」と呼ぶこともあります。
3. 第1法と第2法の比較と利点
第1法と第2法を比較すると、第2法の方がより正確な原価計算を行うことができるとされています。その主な理由として、以下の2点が挙げられます。
- 正常減損の発生点を考慮した正確な計算 第1法では、原価標準を設定する段階で正常減損分が自動的に含まれるため、仕掛品(未完成の製品)の標準原価にも、完成品と同様に正常減損分が含まれてしまう可能性があります。しかし、総合原価計算では、正常減損の発生点が仕掛品の加工費の進捗度よりも後である場合、その仕掛品に正常減損費を負担させるべきではありません。 これに対し、第2法では正常減損費を「別建て」で設定しているため、正常減損の発生点と仕掛品の加工進捗度との関係に応じて、完成品には総標準原価を、仕掛品には正味標準原価を適用するといった柔軟な対応が可能となり、より正確な計算を行うことができます。
- 異常減損費の把握 第1法では、標準消費量や標準作業時間にあらかじめ正常減損分が含まれているため、当月の実際投入量を計算する際に減損量を除いて計算します。この処理方法では、もし当月の実際の減損量が正常減損量を超えて発生した場合(つまり、異常減損が発生した場合)であっても、異常減損費を個別に計算することができません。 一方、第2法を採用すると、異常減損が明確に区別され、その費用を計算することが可能になります。通常、異常減損費は正常減損費を含まない「正味標準原価」で計算され、非原価項目として損益勘定に振り替えられます。このため、第2法は原価管理の観点からも優れていると言えます。
4. 正常仕損が⽣じる場合の原価標準の設定
これまでは正常減損について見てきましたが、正常仕損(正常な製造過程で発生する不良品)が問題となる場合も基本的な考え方は同じです。しかし、仕損品に評価額(例えば、スクラップ価値や再利用価値)がある場合には、その評価額を考慮して原価標準を設定する必要があります。
具体的には、仕損品にかかる標準原価から、仕損品の評価額を差し引いた金額が、良品に負担させるべき正常仕損費となります。これは原価計算基準による一般的な処理です。
例えば、仕損品1個あたりの標準原価が4,100円で、評価額が800円であれば、仕損品1個あたりの正常仕損費は3,300円(=4,100円 – 800円)となります。この仕損費を、正常仕損率(例えば、完成品に対する割合)に基づいて完成品1個あたりの正常仕損費として算出し、第2法と同様に正味標準原価に加算して総標準原価を設定します。
このように、標準原価計算において減損や仕損を適切に処理することは、正確な製品原価の把握と原価管理の強化に不可欠です。
問題解説
問1:標準原価計算における第1法を用いた正常減損費の組み込み
本問は、標準原価計算において正常減損が発生する場合の原価標準の設定方法のうち、「第1法」を適用して製品1kgあたりの標準原価を算出する問題です。第1法は、原価標準において、製品1単位を生産するために必要な直接材料の標準消費量や標準直接作業時間などを、正常減損の発生分だけあらかじめ増やして設定する方法です。これは、正常減損費を良品(完成品)に負担させるという考え方に基づいています。
具体的な計算手順は以下の通りです。 製品1kgに対して正常減損率が10%であるため、完成品1kgを生産するには、正味の標準消費量または標準直接作業時間に10%の減損分を加算する必要があります。これは正味の標準消費量や標準直接作業時間を1.1倍することに相当します。
- 直接材料費の算出
- 正味の標準消費量は1kgであるため、これを正常減損分だけ増やします。
- \(\text{標準消費量} = 1\text{kg} \times (1 + 0.10) = 1.1\text{kg}\)
- \(\text{直接材料費} = \text{@300円/kg} \times 1.1\text{kg} = \textbf{330円}\)
- 直接労務費の算出
- 正味の標準直接作業時間は2時間であるため、これを正常減損分だけ増やします。
- \(\text{標準直接作業時間} = 2\text{時間} \times (1 + 0.10) = 2.2\text{時間}\)
- \(\text{直接労務費} = \text{@1,000円/時間} \times 2.2\text{時間} = \textbf{2,200円}\)
- 製造間接費の算出
- 製造間接費は直接作業時間を基準に配賦されるため、直接労務費と同様に計算します。
- \(\text{標準直接作業時間} = 2\text{時間} \times (1 + 0.10) = 2.2\text{時間}\)
- \(\text{製造間接費} = \text{@600円/時間} \times 2.2\text{時間} = \textbf{1,320円}\)
- 製品A 1kgあたりの標準原価(合計)
- \(\text{合計} = 330\text{円} + 2,200\text{円} + 1,320\text{円} = \textbf{3,850円}\)
この第1法を用いることで、製品1kgあたりの標準原価に正常減損費が組み込まれ、良品の原価計算がより簡潔に行えるようになります。
問2:標準原価計算における第2法を用いた正常減損費の組み込み
本問は、問1と同じ資料と設定に基づき、標準原価計算における正常減損費の組み込み方法のうち「第2法」を適用して製品1kgあたりの総標準原価を算出する問題です。第2法は、製品の正味の標準原価(正常減損費をまだ負担させていない段階での標準原価)に、正常減損費を「特別費」として別途加算する方法です。この方法は、正常減損費を個別に認識し、より正確な原価計算を可能にするという点で、第1法よりも優れているとされています。
具体的な計算手順は以下の通りです。
- 製品1kgあたりの正味標準原価の算出
- 問題資料より、正味の標準原価は各費用の合計です。
- 直接材料費:300円 [Q1資料]
- 直接労務費:2,000円 [Q1資料]
- 製造間接費:1,200円 [Q1資料]
- \(\text{正味標準原価} = 300\text{円} + 2,000\text{円} + 1,200\text{円} = 3,500\text{円}\)
- 製品1kgあたりの正常減損費の算出
- 正常減損費は、製品1kgあたりの正味標準原価に正常減損率を乗じて計算します。
- \(\text{正常減損費} = 3,500\text{円} \times 10% = \textbf{350円}\)
- 製品1kgあたりの総標準原価の算出
- 総標準原価は、正味標準原価に製品1kgあたりの正常減損費を加算して求めます。
- \(\text{総標準原価} = 3,500\text{円} + 350\text{円} = \textbf{3,850円}\)
この結果は問1の第1法による算出結果と同じですが、第2法では正常減損費が明確に区別されて表示されるため、正常減損の発生点と仕掛品の加工進捗度を考慮した精緻な計算や、異常減損費の把握が可能になるという利点があります。
問3:パーシャル・プランにおける完成品振替額の計算(第1法)
本問は、標準原価計算制度を採用し、パーシャル・プランで記帳している状況において、当月の仕掛品勘定における完成品振替額を計算する問題です。パーシャル・プランでは、当月製造費用は実際発生額で仕掛品勘定に記入し、完成品、月末仕掛品、月初仕掛品の振替額は標準原価で計算します。
今回のケースでは「第1法」による原価標準が設定されています。第1法では、すでに製品1kgあたりの標準原価(4,664円)の中に、正常減損のコストが標準消費量や標準直接作業時間の増加分として組み込まれています。そのため、完成品を仕掛品勘定から振り替える際には、単純に完成品の数量にこの設定済みの標準原価を乗じるだけで済みます。
- 完成品の数量の確認
- 当月完成品数量は資料より60kgです [Q3資料]。
- 完成品1kgあたりの標準原価の確認
- 第1法による製品1kgあたりの標準原価は資料より4,664円です [Q3資料]。
- 完成品振替額の計算
- \(\text{完成品振替額} = \text{完成品数量} \times \text{完成品1kgあたりの標準原価}\)
- \(\text{完成品振替額} = 60\text{kg} \times 4,664\text{円/kg} = \textbf{279,840円}\)
パーシャル・プランでは、月末に仕掛品勘定の貸借差額として原価差異をまとめて計算することになります。この計算によって、完成品および月末仕掛品が標準原価で評価され、原価管理の効率化が図られます。
問4:第1法における直接材料費差異の計算
本問は、問3と同じ資料に基づき、当月の直接材料費差異を計算する問題です。差異分析は、標準原価計算において実際原価と標準原価の差額を分析し、その原因を究明することで、原価管理に役立てる重要なプロセスです。直接材料費差異は通常、価格差異と消費量差異に分解されます。
- 価格差異の計算
- 価格差異は、材料の実際購入価格が標準価格とどれだけ異なったかを示すものです。
- 標準価格は、製品B 1kgあたりの直接材料費の原価標準「@440円/kg × 1.1kg = 484円」から、材料1kgあたりの標準価格が440円であることが分かります [Q3資料]。
- \(\text{価格差異} = (\text{標準価格} – \text{実際価格}) \times \text{実際消費量}\)
- \(\text{価格差異} = (440\text{円/kg} – 430\text{円/kg}) \times 100\text{kg}\)
- \(\text{価格差異} = 10\text{円/kg} \times 100\text{kg} = \textbf{1,000円(貸方差異)}\) (実際価格が標準価格より低いので有利差異、貸方差異となります)
- 消費量差異の計算
- 消費量差異は、実際に投入された材料の量が、生産量に基づいて本来使用されるべき標準消費量とどれだけ異なったかを示すものです。第1法では、標準消費量に正常減損分が含まれていますが、差異計算のための標準消費量を算定する際には、実際減損量を考慮せずに、良品に対する標準を適用します。
- 標準消費量(Std. Quantity, SQ)の算出:
- 当月生産した良品換算量(材料費ベース)を計算します。材料は工程の始点で投入されるため、月初仕掛品、月末仕掛品、完成品はすべて材料は100%消費済みと考えます。
- \(\text{良品換算量} = \text{完成品} + \text{月末仕掛品} – \text{月初仕掛品}\)
- \(\text{良品換算量} = 60\text{kg} + 25\text{kg} – 20\text{kg} = 65\text{kg}\)
- 第1法の標準消費量設定では、完成品1kgあたり1.1kgの直接材料が必要とされています [Q3資料]。この1.1kgには正常減損分が既に含まれています。
- \(\text{標準消費量(SQ)} = \text{良品換算量} \times \text{材料の標準消費量/kg}\)
- \(\text{標準消費量(SQ)} = 65\text{kg} \times 1.1\text{kg/kg} = \textbf{71.5\text{kg}}\)
- \(\text{消費量差異} = \text{標準価格} \times (\text{標準消費量} – \text{実際消費量})\)
- \(\text{消費量差異} = 440\text{円/kg} \times (71.5\text{kg} – 100\text{kg})\)
- \(\text{消費量差異} = 440\text{円/kg} \times (-28.5\text{kg}) = \textbf{-12,540円(借方差異)}\) (実際消費量が標準消費量より多いので不利差異、借方差異となります)
- 直接材料費差異の合計
- \(\text{合計差異} = 1,000\text{円(貸方差異)} + (-12,540\text{円(借方差異)}) = \textbf{-11,540円(借方差異)}\)
今回の分析から、直接材料の購入価格は標準よりも安く抑えられたものの(有利差異)、材料の消費量が標準より大幅に多く発生したため(不利差異)、結果として直接材料費全体としては不利な差異が生じたことが分かります。このような差異分析は、今後の原価管理や生産改善に貴重な情報を提供します。
問5:第2法における正常仕損費の評価額考慮と総標準原価の計算
本問は、製造工程で仕損が発生し、仕損品に評価額がある場合に、第2法を用いて製品1個あたりの総標準製造原価を算出する問題です。正常仕損費も正常減損費と同様に、良品に負担させるべき費用とされます。第2法では、この正常仕損費を正味の標準原価に「別建て」で加算することで、総標準原価を計算します。
仕損品に評価額がある場合、その評価額は仕損によって発生した費用から控除されます。これは、仕損品を売却したり、他の用途に利用したりすることで得られる回収価値を、仕損のコストから差し引くという考え方に基づきます。
具体的な計算手順は以下の通りです。
- 製品1個あたりの正味標準原価の算出
- 資料より、各費用の合計です。
- 直接材料費:500円 [Q5資料]
- 直接労務費:4,500円 [Q5資料]
- 製造間接費:2,400円 [Q5資料]
- \(\text{正味標準原価} = 500\text{円} + 4,500\text{円} + 2,400\text{円} = 7,400\text{円}\)
- 仕損品1個あたりの正常仕損費の算出(評価額控除後)
- 仕損品1個あたりの標準原価は、正味標準原価と同額の7,400円です。
- この金額から仕損品の評価額を控除します。
- \(\text{仕損品1個あたりの正常仕損費} = 7,400\text{円} – 1,000\text{円} = \textbf{6,400円}\)
- 製品1個あたりの正常仕損費の算出
- 正常仕損費は完成品に対して5%の割合で発生するため、製品1個あたりの正常仕損費は、上記の仕損品1個あたりの正常仕損費に正常仕損率を乗じて計算します。
- \(\text{製品1個あたりの正常仕損費} = 6,400\text{円} \times 5% = \textbf{320円}\)
- 製品1個あたりの総標準製造原価の算出
- 総標準製造原価は、正味標準原価に製品1個あたりの正常仕損費を加算して求めます。
- \(\text{総標準製造原価} = 7,400\text{円} + 320\text{円} = \textbf{7,720円}\)
このように、第2法を用いることで、仕損品の評価額が明確に原価計算に反映され、最終的な製品原価がより適切に算出されます。これにより、原価管理の精度が向上し、仕損品の発生に対する意識付けにも繋がります。
【まとめ】
正常減損・仕損の標準原価計算における重要なポイントは以下の通りです。
- ポイント1:正常減損費は良品に負担させる。これは実際原価計算と同様に、製造上避けられないコストとして完成品に含めるべき費用です。
- ポイント2:原価標準への組み込みは2つの方法。
- 第1法:標準消費量や標準作業時間を正常減損の分だけ増やして設定します。差異分析では、標準消費量/時間は減損を除いて計算した良品換算量に基づいて算定します。
- 第2法:正味の標準原価に正常減損費を特別費として別途加算します。差異分析では、減損量を考慮した上で標準消費量/時間を算定します。
- ポイント3:第2法はより正確な原価計算が可能。第2法は、正常減損の発生点を考慮して仕掛品原価を正確に計算でき、また異常減損費を明確に把握・計算できるため、原価管理の観点から優れています。
- ポイント4:異常減損費の処理。第2法では異常減損費を計算でき、通常は正常減損費を含まない正味標準原価で計算し、非原価項目として損益勘定に振り替えられます。
- ポイント5:正常仕損の評価額の考慮。正常仕損が発生し、かつ仕損品に評価額がある場合、その評価額を仕損品にかかった標準原価から控除した金額が、良品に負担させるべき正常仕損費となります。