標準原価計算における項目別分析と要因別分析の基礎

問題

問1

次の資料に基づき、全部標準原価計算における売上高差異、売上原価差異、販売費差異、一般管理費差異を求めなさい。

〔資料(全部原価計算)〕

項目予算実績
製品の販売単価@500円@490円
製品の販売数量200個220個
1個あたりの製造原価@350円(原価標準)@370円(実際発生額)
標準原価差異4,400円(不利差異)
販売費10,000円11,500円
一般管理費15,000円16,000円

問2

次の資料に基づき、直接標準原価計算における売上高差異、変動売上原価差異、変動販売費差異、固定費差異を求めなさい。

〔資料(直接原価計算)〕

項目予算実績
製品の販売単価@400円@380円
製品の販売数量150個180個
1個あたりの変動製造原価@180円(原価標準)@230円(実際発生額)
1個あたりの変動販売費@ 20円(原価標準)@ 25円(実際発生額)
標準変動費差異12,000円(不利差異)
固定費30,000円32,500円

問3

次の資料に基づき、標準変動費差異を直接材料費差異、直接労務費差異、変動製造間接費差異、変動販売費価格差異に分析しなさい。

〔資料(直接原価計算)〕

項目予算実績
製品の販売数量100個120個
1個あたりの変動製造原価@200円(原価標準)@?円
1個あたりの変動販売費@ 25円(原価標準)@?円
標準変動費差異500円(不利差異)
変動製造原価の原価標準の内訳
直接材料費80円
直接労務費70円
変動製造間接費50円
変動費の実際発生額
直接材料費13,000円
直接労務費8,000円
変動製造間接費9,000円
変動販売費3,500円
期首、期末に製品や仕掛品はない(生産量=販売量)。

※注:設問文に「期首、期末に製品や仕掛品はない(生産量=販売量)。」とありますが、これは問題の条件であり、解答の計算に直接影響するわけではありません。

問4

次の資料に基づき、全部標準原価計算における販売数量差異、販売価格差異、販売費差異、一般管理費差異を求めなさい。

〔資料(全部原価計算)〕

項目予算実績
製品の販売単価@500円@490円
製品の販売数量200個220個
1個あたりの製造原価@350円(原価標準)@370円(実際発生額)
標準原価差異4,400円(不利差異)
販売費10,000円11,500円
一般管理費15,000円16,000円

問5

次の資料に基づき、直接標準原価計算における販売数量差異、販売価格差異、固定費差異を求めなさい。

〔資料(直接原価計算)〕

項目予算実績
製品の販売単価@400円@380円
製品の販売数量150個180個
1個あたりの変動製造原価@180円(原価標準)@230円(実際発生額)
1個あたりの変動販売費@ 20円(原価標準)@ 25円(実際発生額)
標準変動費差異12,000円(不利差異)
固定費30,000円32,500円


<答え>

問1

  • 売上高差異:7,800円(有利差異)
  • 売上原価差異:7,000円(不利差異)
  • 販売費差異:1,500円(不利差異)
  • 一般管理費差異:1,000円(不利差異)

問2

  • 売上高差異:8,400円(有利差異)
  • 変動売上原価差異:5,400円(不利差異)
  • 変動販売費差異:600円(不利差異)
  • 固定費差異:2,500円(不利差異)

問3

  • 直接材料費差異:3,400円(不利差異)
  • 直接労務費差異:400円(有利差異)
  • 変動製造間接費差異:3,000円(不利差異)
  • 変動販売費価格差異:500円(不利差異)

問4

  • 販売数量差異:3,000円(有利差異)
  • 販売価格差異:2,200円(不利差異)
  • 販売費差異:1,500円(不利差異)
  • 一般管理費差異:1,000円(不利差異)

問5

  • 販売数量差異:6,000円(有利差異)
  • 販売価格差異:3,600円(不利差異)
  • 固定費差異:2,500円(不利差異)

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標準原価計算における差異分析:項目別分析と要因別分析

標準原価計算を導入している企業では、予算と実績の間に生じた差を「差異」として捉え、その原因を分析することで、業績評価や将来の意思決定に役立てます。この差異分析には、大きく分けて項目別分析要因別分析の二つのアプローチがあります。どちらの分析方法も営業利益差異を詳細に把握するために重要ですが、その分析の視点や構成要素に違いがあります。

1. 標準原価差異の基本理解

標準原価計算を採用している場合、予算策定時には標準原価差異の発生は通常見込まれませんが、実績においては様々な要因で差異が発生し、損益計算書に計上されます。この標準原価差異は、営業利益差異(または貢献利益差異)の一部として扱われます。差異が発生した場合は、その金額が営業利益の増減に影響を与えます。

標準原価差異は、主に製品1個あたりの製造原価や変動販売費といった価格面(単価)の差異に相当します。これは、実際原価計算における売上原価価格差異や変動販売費価格差異と同じ性質を持つものと理解することができます。

2. 項目別分析(標準原価計算)

項目別分析は、損益計算書の各項目(売上高、売上原価、販売費、一般管理費など)ごとに予算と実績の差異を算出し、営業利益差異がどの項目から生じたのかを把握する手法です。

(1)全部標準原価計算における項目別分析

全部原価計算のもとで標準原価計算を採用している場合、実績損益計算書の売上原価は、販売された製品の標準原価で計算されます。

  • 売上高差異: 実績売上高と予算売上高の差額として計算されます。これは、販売単価の差と販売数量の差の両方を含みます。
  • 売上原価差異: 予算売上原価と実績売上原価の差額で計算されます。ここで重要なのは、予算売上原価も実績売上原価も、原価標準(@単位標準原価)に基づいて計算される点です。そのため、売上原価差異には価格面(単価)の差異は含まれず、すべて販売数量の差による数量差異となります。つまり、売上原価差異は「売上原価数量差異」と考えることができます。
  • 標準原価差異: 予算損益計算書には通常計上されませんが、実績損益計算書には計上され、営業利益差異の一部となります。これは、製品1個あたりの製造原価の価格面での差異を示します。
  • 販売費差異・一般管理費差異: これらは、全部実際原価計算の場合と同様に、予算額と実績額の差額として算出されます。
(2)直接標準原価計算における項目別分析

直接原価計算では、損益計算書に変動費と固定費を区別して表示します。直接標準原価計算では、標準変動費差異が計上されます。

  • 変動売上原価差異: 予算変動売上原価と実績変動売上原価の差額です。全部原価計算の場合と同様に、変動売上原価は原価標準に基づいて計算されるため、この差異もすべて販売数量の差による数量差異、すなわち「変動売上原価数量差異」となります。
  • 変動販売費差異: 予算変動販売費と実績変動販売費の差額です。これも同様に、すべて販売数量の差による数量差異、すなわち「変動販売費数量差異」となります。
  • 標準変動費差異: 予算上は計上されませんが、実績では計上され、貢献利益差異の一部となります。この差異は、変動製造原価から生じる部分と変動販売費から生じる部分に分けられ、それぞれ価格面(単価)の差異に相当します。
    • 製造原価に関する標準変動費差異(直接材料費差異、直接労務費差異、変動製造間接費差異)は、当期の実際生産量にもとづいて計算されます。
    • 変動販売費価格差異は、当期の実績販売量にもとづいて計算されます。
    • 「生産量≠販売量」のケースに特に注意が必要です。 期末に製品在庫がある場合など、生産量と販売量が異なる場合は、製造原価の差異計算には生産量を使用し、販売費の差異計算には販売量を使用します。
  • 固定費差異: 予算固定費と実績固定費の差額として算出されます。

3. 要因別分析(標準原価計算)

要因別分析は、営業利益差異(または売上総利益差異や貢献利益差異)が、主に「販売数量の変動」「販売価格の変動」「原価(差異)の変動」といった特定の要因によって、どの程度生じたのかを明らかにする手法です。標準原価計算を採用している場合、標準原価差異も利益差異の要因の一つとして考慮されます。

(1)全部標準原価計算における要因別分析

全部標準原価計算では、売上総利益差異を分析します。売上総利益差異の主な要因は次の3つです。

  • 販売数量差異: 予算と実績の販売数量の差に、予算の単位あたり売上総利益を乗じて計算されます。これは、数量の変動が売上総利益に与えた影響を示します。
  • 販売価格差異: 実績販売数量に、予算と実績の販売単価の差を乗じて計算されます。これは、販売価格の変動が売上総利益に与えた影響を示します。
  • 標準原価差異: 製造原価に関する標準原価差異の金額がそのまま要因の一つとして計上されます。これは、製品1個あたりの製造原価の実際額が標準額と乖離したことが売上総利益に与えた影響を示します。
  • 販売費差異・一般管理費差異: これらは項目別分析と同様に、予算額と実績額の差額として算出されます。
(2)直接標準原価計算における要因別分析

直接標準原価計算では、貢献利益差異を分析します。貢献利益差異の主な要因は次の3つです。

  • 販売数量差異: 予算と実績の販売数量の差に、予算の単位あたり貢献利益を乗じて計算されます。これは、数量の変動が貢献利益に与えた影響を示します。
  • 販売価格差異: 実績販売数量に、予算と実績の販売単価の差を乗じて計算されます。これは、販売価格の変動が貢献利益に与えた影響を示します。
  • 標準変動費差異: 変動製造原価と変動販売費に関する標準変動費差異の合計金額がそのまま要因の一つとして計上されます。これは、変動費の実際額が標準額と乖離したことが貢献利益に与えた影響を示します。
  • 固定費差異: 予算固定費と実績固定費の差額として算出されます。

4. 項目別分析と要因別分析の比較

標準原価計算のもとでの項目別分析と要因別分析には、共通点と相違点があります。

  • 共通点:
    • 販売価格差異固定費差異の計算結果は、どちらの分析方法でも同じになります。
    • 標準原価差異(直接原価計算の場合は標準変動費差異)も、予算実績差異分析とは別に標準原価計算のもとで計算されるため、どちらの分析方法でも計算結果は同じになります。
  • 相違点:
    • 数量面での差異の捉え方が異なります。
      • 項目別分析では、販売数量の増減が売上高、変動売上原価、変動販売費それぞれに与える影響を個別に「売上高差異の一部としての販売数量差異」「変動売上原価数量差異」「変動販売費数量差異」として計算します。
      • 要因別分析では、これらの数量面の影響をまとめて「貢献利益差異の一部としての販売数量差異」として計算します。この要因別分析における販売数量差異は、項目別分析で計算される上記の3つの数量差異の合計に等しくなります。

これらの分析手法を理解し、適切に使い分けることで、企業の業績管理はより精緻なものとなります。




【問題解説】

問1 解説

この問題は、全部標準原価計算における項目別分析を求めるものです。項目別分析では、まず予算と実績の損益計算書を作成し、各項目の差異を算出します。

まず、予算と実績の損益計算書を作成するために必要な数値を計算します。

  • 予算売上高: @500円(予算販売単価)× 200個(予算販売数量)= 100,000円
  • 予算売上原価: @350円(原価標準)× 200個(予算販売数量)= 70,000円
  • 実績売上高: @490円(実績販売単価)× 220個(実績販売数量)= 107,800円
  • 実績売上原価: @350円(原価標準)× 220個(実績販売数量)= 77,000円
    • ポイント: 標準原価計算の場合、実績損益計算書上の売上原価は、販売された製品の標準原価で計算されます。これは、実際の製造コストの過不足は「標準原価差異」として別途計上されるためです。

次に、予算損益計算書と実績損益計算書を整理します。

項目予算 (円)実績 (円)
売上高100,000107,800
売上原価70,00077,000
標準売上総利益30,00030,800
標準原価差異4,400
実際売上総利益30,00026,400
販売費10,00011,500
一般管理費15,00016,000
営業利益5,000-1,100

最後に、各差異を計算します。

  • 売上高差異: 実績売上高 107,800円 - 予算売上高 100,000円 = 7,800円(有利差異)
    • 売上高差異は、実績が予算を上回ったため有利差異となります。
  • 売上原価差異: 予算売上原価 70,000円 - 実績売上原価 77,000円 = △7,000円(不利差異)
    • ポイント: 売上原価差異は、売上原価の予算と実績の差によるものです。標準原価計算では、売上原価そのものは標準原価(@350円)で計算されるため、この差異は販売数量の差に起因する数量差異となります。売上原価が増加(不利)は営業利益を減少させる要因です。
  • 販売費差異: 予算販売費 10,000円 - 実績販売費 11,500円 = △1,500円(不利差異)
    • 販売費の実績が予算を上回ったため不利差異です。
  • 一般管理費差異: 予算一般管理費 15,000円 - 実績一般管理費 16,000円 = △1,000円(不利差異)
    • 一般管理費の実績が予算を上回ったため不利差異です。

問2 解説

この問題は、直接標準原価計算における項目別分析を求めるものです。直接原価計算では、変動費と固定費を分けて分析し、貢献利益に焦点を当てます。

まず、予算と実績の損益計算書を作成するために必要な数値を計算します。

  • 予算売上高: @400円(予算販売単価)× 150個(予算販売数量)= 60,000円
  • 予算変動売上原価: @180円(原価標準)× 150個(予算販売数量)= 27,000円
  • 予算変動販売費: @20円(原価標準)× 150個(予算販売数量)= 3,000円
  • 実績売上高: @380円(実績販売単価)× 180個(実績販売数量)= 68,400円
  • 実績変動売上原価: @180円(原価標準)× 180個(実績販売数量)= 32,400円
    • ポイント: 直接標準原価計算においても、実績損益計算書上の変動売上原価は、販売された製品の標準原価で計算されます。
  • 実績変動販売費: @20円(原価標準)× 180個(実績販売数量)= 3,600円
    • ポイント: 変動販売費も同様に、実績販売量にもとづく標準原価で計算されます。

次に、予算損益計算書と実績損益計算書を整理します。

項目予算 (円)実績 (円)
売上高60,00068,400
変動売上原価27,00032,400
変動販売費3,0003,600
標準貢献利益30,00032,400
標準変動費差異12,000
実際貢献利益30,00020,400
固定費30,00032,500
営業利益0-12,100

最後に、各差異を計算します。

  • 売上高差異: 実績売上高 68,400円 - 予算売上高 60,000円 = 8,400円(有利差異)
    • 実績売上高が予算を上回ったため有利差異です。
  • 変動売上原価差異: 予算変動売上原価 27,000円 - 実績変動売上原価 32,400円 = △5,400円(不利差異)
    • 変動売上原価差異は、販売数量の差に起因する数量差異です。原価が増加(不利)は営業利益を減少させる要因です。
  • 変動販売費差異: 予算変動販売費 3,000円 - 実績変動販売費 3,600円 = △600円(不利差異)
    • 変動販売費差異も、販売数量の差に起因する数量差異です。
  • 固定費差異: 予算固定費 30,000円 - 実績固定費 32,500円 = △2,500円(不利差異)
    • 固定費の実績が予算を上回ったため不利差異です。

問3 解説

この問題は、標準変動費差異を構成する個別の差異(直接材料費差異、直接労務費差異、変動製造間接費差異、変動販売費価格差異)に分解するものです。ここで最も重要なのは、製造原価に関する差異は実際生産量にもとづいて計算され、変動販売費価格差異は実績販売量にもとづいて計算されるという原則です。

資料には「期首、期末に製品や仕掛品はない(生産量=販売量)。」とあるため、当期の実際生産量は実績販売量と同じ120個となります。

各差異を個別に計算します。

  • 直接材料費差異:
    • 標準原価:@80円 × 120個(実際生産量)= 9,600円
    • 実際発生額:13,000円
    • 差異:9,600円 - 13,000円 = △3,400円(不利差異)
    • 標準より実際発生額が多いため不利差異です。
  • 直接労務費差異:
    • 標準原価:@70円 × 120個(実際生産量)= 8,400円
    • 実際発生額:8,000円
    • 差異:8,400円 - 8,000円 = 400円(有利差異)
    • 標準より実際発生額が少なかったため有利差異です。
  • 変動製造間接費差異:
    • 標準原価:@50円 × 120個(実際生産量)= 6,000円
    • 実際発生額:9,000円
    • 差異:6,000円 - 9,000円 = △3,000円(不利差異)
    • 標準より実際発生額が多いため不利差異です。
  • 変動販売費価格差異:
    • 標準原価:@25円 × 120個(実績販売量)= 3,000円
    • 実際発生額:3,500円
    • 差異:3,000円 - 3,500円 = △500円(不利差異)
    • 変動販売費は販売量に基づいて計算される点に注意が必要です。

検算として、これらの個別の差異を合計すると、資料にある標準変動費差異の総額と一致することを確認できます。 △3,400円(直接材料費差異)+ 400円(直接労務費差異)+ △3,000円(変動製造間接費差異)+ △500円(変動販売費価格差異)= △6,500円

※問題文の資料で「標準変動費差異 - 500円(不利差異)」とありますが、これは上記の計算結果を意図しての誤記です。本来は計算結果と合致する数値を提示するべきでした。今回の解説では、計算結果に合わせた合計値「6,500円(不利差異)」として理解してください。

問4 解説

この問題は、全部標準原価計算における要因別分析を求めるものです。要因別分析では、売上総利益差異を「販売数量」「販売価格」「標準原価差異」の3つの要因に分解します。

まず、予算と実績の損益計算書から売上総利益差異を把握します(問1の損益計算書を参照)。

  • 予算売上総利益: 30,000円
  • 実績売上総利益: 26,400円
  • 売上総利益差異: 26,400円(実績)- 30,000円(予算)= △3,600円(不利差異)
    • ポイント: 要因別分析では、この売上総利益差異を分解します。項目別分析で算出された標準原価差異4,400円(不利差異)もこの分解の要因となります。

次に、各要因ごとの差異を計算します。

  • 販売数量差異:
    • 予算の単位あたり売上総利益: @500円(予算販売単価)- @350円(原価標準)= @150円
    • 販売数量差異: @150円 × (220個(実績販売数量)- 200個(予算販売数量)) = @150円 × 20個 = 3,000円(有利差異)
    • 販売数量が予算を上回ったため有利差異です。
  • 販売価格差異:
    • 販売価格差異: (@490円(実績販売単価)- @500円(予算販売単価)) × 220個(実績販売数量)= △10円 × 220個 = △2,200円(不利差異)
    • 販売単価が予算を下回ったため不利差異です。
  • 販売費差異:
    • 予算販売費 10,000円 - 実績販売費 11,500円 = △1,500円(不利差異)
    • 項目別分析と同じ計算方法です。
  • 一般管理費差異:
    • 予算一般管理費 15,000円 - 実績一般管理費 16,000円 = △1,000円(不利差異)
    • 項目別分析と同じ計算方法です。

※補足:売上総利益差異の検算 要因別分析における売上総利益差異は、販売数量差異3,000円(有利)+販売価格差異△2,200円(不利)+標準原価差異△4,400円(不利)で計算されます。 3,000円 - 2,200円 - 4,400円 = △3,600円(不利差異) この値は、最初に計算した売上総利益差異△3,600円と一致します。

問5 解説

この問題は、直接標準原価計算における要因別分析を求めるものです。要因別分析では、貢献利益差異を「販売数量」「販売価格」「標準変動費差異」の3つの要因に分解します。

まず、予算と実績の損益計算書から貢献利益差異を把握します(問2の損益計算書を参照)。

  • 予算貢献利益: 30,000円
  • 実績貢献利益: 20,400円
  • 貢献利益差異: 20,400円(実績)- 30,000円(予算)= △9,600円(不利差異)
    • ポイント: 要因別分析では、この貢献利益差異を分解します。項目別分析で算出された標準変動費差異12,000円(不利差異)もこの分解の要因となります。

次に、各要因ごとの差異を計算します。

  • 販売数量差異:
    • 予算の単位あたり貢献利益: @400円(予算販売単価)- @180円(変動製造原価標準)- @20円(変動販売費標準)= @200円
    • 販売数量差異: @200円 × (180個(実績販売数量)- 150個(予算販売数量)) = @200円 × 30個 = 6,000円(有利差異)
    • 販売数量が予算を上回ったため有利差異です。
  • 販売価格差異:
    • 販売価格差異: (@380円(実績販売単価)- @400円(予算販売単価)) × 180個(実績販売数量)= △20円 × 180個 = △3,600円(不利差異)
    • 販売単価が予算を下回ったため不利差異です。
  • 固定費差異:
    • 予算固定費 30,000円 - 実績固定費 32,500円 = △2,500円(不利差異)
    • 項目別分析と同じ計算方法です。

※補足:貢献利益差異の検算 要因別分析における貢献利益差異は、販売数量差異6,000円(有利)+販売価格差異△3,600円(不利)+標準変動費差異△12,000円(不利)で計算されます。 6,000円 - 3,600円 - 12,000円 = △9,600円(不利差異) この値は、最初に計算した貢献利益差異△9,600円と一致します。


【まとめ】

  • ポイント1:標準原価差異は営業利益差異(または貢献利益差異)の一部。予算段階では通常計上されないが、実績では発生し、損益に影響を与える。
  • ポイント2:項目別分析では売上原価差異は数量差異に限定される。標準原価計算では、売上原価(または変動売上原価、変動販売費)の予算額と実績額がどちらも標準単価に基づいて計算されるため、単価差異は含まれず、販売数量の差のみが差異の要因となる。
  • ポイント3:標準原価差異は価格面(単価)の差異である。全部原価計算では製造原価の、直接原価計算では変動製造原価と変動販売費の価格面の乖離を示す。
  • ポイント4:製造原価に関する標準原価差異は実際生産量で計算する。変動販売費価格差異は実際販売量で計算する。特に「生産量≠販売量」の場合に、どの数量を用いるかに注意が必要。
  • ポイント5:要因別分析は「販売数量」「販売価格」「標準原価差異」の3つの要因で利益差異を分解する。項目別分析が費目ごとの差異を見るのに対し、要因別分析は利益変動の根本原因をより広範な視点から捉える。

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この記事を書いた人

簿記2級を取得し、現在簿記1級を勉強中。
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