単一基準配賦法と複数基準配賦法の違いと計算問題

問題 

問1:単一基準配賦法(実際配賦)による仕訳

当社は、補助部門費の配賦について、単一基準配賦法による実際配賦を採用している。当月の各部門の実際発生額および動力消費量は以下のとおりである。 このとき、動力部門費を製造部門へ配賦する際の仕訳を解答しなさい。

資料

  1. 各部門費(第1次集計費)の実際発生額:
    • 第1製造部門:9,000円
    • 第2製造部門:8,000円
    • 動力部門:1,800円
  2. 補助部門費の配賦基準(当月の動力消費量):
    • 第1製造部門:600kwh
    • 第2製造部門:300kwh

問2:単一基準配賦法(予定配賦)による配賦額の計算

当社は、補助部門費の配賦について、単一基準配賦法による予定配賦を採用している。以下の資料に基づき、当月の各製造部門への動力部門費予定配賦額を計算しなさい。

資料

  1. 動力部門の年間予算データ(変動予算):
    • 予算額:21,600円(うち固定費12,000円)
    • 基準操業度:12,000 kwh
  2. 当月の実際動力消費量:
    • 第1製造部門:600kwh
    • 第2製造部門:300kwh

問3:補助部門費配賦差異の分析

問2の資料に加え、当月の動力部門の実際発生額が1,800円であった場合、補助部門費配賦差異(借方差異または貸方差異)を計算し、さらに予算差異と操業度差異に分解してそれぞれの金額と有利・不利を答えなさい。 ただし、月間基準操業度は年間基準操業度を12ヶ月で割って計算すること。

問4:複数基準配賦法(予定配賦)による配賦額の計算

当社は、補助部門費の配賦について、複数基準配賦法による予定配賦を採用している。以下の資料に基づき、当月の各製造部門への動力部門費予定配賦額(変動費と固定費を分けて)を計算しなさい。

資料

  1. 動力部門の年間予算データ(変動予算):
    • 予算額:21,600円(うち固定費12,000円)
    • 基準操業度:12,000 kwh
    • 消費能力:第1製造部門 9,000kwh、第2製造部門 6,000kwh
  2. 当月の実際動力消費量:
    • 第1製造部門:600kwh
    • 第2製造部門:300kwh

問5:配賦方法の選択に関する記述

補助部門費の配賦方法には複数の選択肢が存在します。特に、「単一基準配賦法と実際配賦」および「単一基準配賦法と予定配賦」にはそれぞれ欠点があります。 以下の選択肢のうち、「単一基準配賦法と予定配賦」における欠点として最も適切なものを一つ選びなさい。

a. 補助部門費の実際発生額に含まれる原価の無駄を製造部門が負担してしまう可能性がある。

b. ある製造部門への配賦額が他の製造部門の補助部門用役消費量の大小に左右されてしまう。

c. 補助部門に管理不能な操業度差異が生じる可能性がある。

d. 変動費と固定費を区別せず配賦するため、固定費の性質が考慮されない。


<答え>

問1:単一基準配賦法(実際配賦)による仕訳

動力部門費の実際配賦率は、実際発生額を実際配賦基準数値(動力消費量合計)で割って計算します。 実際配賦率 = 1,800円 ÷ (600kwh + 300kwh) = 1,800円 ÷ 900kwh = \(2円/kwh\)

第1製造部門への配賦額 = \(2円/kwh\) × 600kwh = 1,200円 第2製造部門への配賦額 = \(2円/kwh\) × 300kwh = 600円

借方科目金額貸方科目金額
第1製造部門費1,200動力部門費1,800
第2製造部門費600

問2:単一基準配賦法(予定配賦)による配賦額の計算

予定配賦率は、年間の補助部門費予算額を年間の予定配賦基準数値(基準操業度)で割って計算します。 予定配賦率 = 21,600円 ÷ 12,000kwh = \(1.8円/kwh\)

各部門への予定配賦額は、予定配賦率に各部門の実際配賦基準数値(実際用役消費量)を掛けて計算します。 第1製造部門への配賦額 = \(1.8円/kwh\) × 600kwh = 1,080円 第2製造部門への配賦額 = \(1.8円/kwh\) × 300kwh = 540円

合計予定配賦額 = 1,080円 + 540円 = 1,620円

問3:補助部門費配賦差異の分析

年間予算額のうち固定費12,000円、変動費は21,600円 – 12,000円 = 9,600円です。 変動費率 = 9,600円 ÷ 12,000kwh = \(0.8円/kwh\) 固定費率 = 12,000円 ÷ 12,000kwh = \(1.0円/kwh\)

月間基準操業度 = 12,000kwh ÷ 12ヶ月 = 1,000kwh 月間基準操業度に対する固定費予算額 = 12,000円 ÷ 12ヶ月 = 1,000円 実際操業度(製造部門の実際用役消費量合計)= 600kwh + 300kwh = 900kwh

補助部門費配賦差異 = 予定配賦額 – 実際発生額 = 1,620円 (問2の合計) – 1,800円 = △180円 (借方差異)

予算差異 = 実際操業度に対する予算額 – 実際発生額 実際操業度に対する予算額 = 変動費率 × 実際操業度 + 月間固定費予算額 = \(0.8円/kwh\) × 900kwh + 1,000円 = 720円 + 1,000円 = 1,720円 予算差異 = 1,720円 – 1,800円 = △80円 (借方差異)

操業度差異 = 予定配賦額 – 実際操業度に対する予算額 = 1,620円 – 1,720円 = △100円 (借方差異) または、固定費率 × (実際操業度 – 基準操業度) = \(1.0円/kwh\) × (900kwh – 1,000kwh) = \(1.0円/kwh\) × (△100kwh) = △100円 (借方差異)

問4:複数基準配賦法(予定配賦)による配賦額の計算

変動費の配賦

変動費の予定配賦率 = 9,600円(変動費) ÷ 12,000kwh = \(0.8円/kwh\)

第1製造部門への配賦額 = \(0.8円/kwh\) × 600kwh = 480円

第2製造部門への配賦額 = \(0.8円/kwh\) × 300kwh = 240円

固定費の配賦

月間固定費予算額 = 12,000円 ÷ 12ヶ月 = 1,000円

消費能力合計 = 9,000kwh + 6,000kwh = 15,000kwh

第1製造部門への配賦額 = 1,000円 × (9,000kwh ÷ 15,000kwh) = 1,000円 × 0.6 = 600円

第2製造部門への配賦額 = 1,000円 × (6,000kwh ÷ 15,000kwh) = 1,000円 × 0.4 = 400円

問5:配賦方法の選択に関する記述

c. 補助部門に管理不能な操業度差異が生じる可能性がある。

解説 a. は「単一基準配賦法と実際配賦」の欠点①です。 b. は「単一基準配賦法と実際配賦」の欠点②です。 d. は複数基準配賦法の目的と対極にあるため、欠点としては不適切です。


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補助部門費の配賦基準と配賦方法

簿記1級の原価計算では、部門別計算における補助部門費の扱いが重要になります。特に、補助部門費を製造部門へ配賦する際の「配賦基準」と「配賦方法」の選択は、原価管理や部門の業績測定に大きな影響を与えます。ここでは、これらの基準と方法について、それぞれの特徴や欠点、そしてどのように欠点が解消されるのかを詳しく解説していきます。

1. 配賦基準の種類

補助部門費の配賦基準は、補助部門費が変動費と固定費に区分されるかどうかに基づいて、「単一基準配賦法」と「複数基準配賦法」の2種類に大別されます。

単一基準配賦法

単一基準配賦法は、補助部門費に含まれる変動費と固定費を区別せず、まとめて一つの基準で配賦する方法です。この方法では、原則として、他部門による補助部門用役の消費量を配賦基準として用います。例えば、動力部門であればkwh、修繕部門であれば修繕時間といった具体的な用役の消費量がこれに該当します。簿記2級までの学習では、基本的にこの単一基準配賦法を前提としていました。

複数基準配賦法

これに対し、複数基準配賦法は、補助部門費の変動費と固定費に別々の配賦基準を用いる方法です。具体的には、変動費については単一基準配賦法と同様に他部門による補助部門用役の消費量を配賦基準とします。しかし、固定費については、他部門による補助部門用役の消費能力を配賦基準とします。消費能力とは、補助部門用役をどれだけ消費することがありえるか、という潜在的な能力を指します。これについては後ほど詳しく説明します。

2. 配賦方法の種類

補助部門費を配賦する際には、実際に発生した金額に基づいて配賦するのか、それとも事前に設定した予算に基づいて配賦するのかによって、「実際配賦」と「予定配賦」の2つの方法があります。

実際配賦

実際配賦は、各補助部門で実際に発生した補助部門費の金額を、そのまま製造部門に配賦する方法です。これは、実際の原価をそのまま反映させるため、計算が比較的シンプルであるという特徴があります。問1の計算例では、動力部門で実際に発生した1,800円を、実際の動力消費量に基づいて配賦しています。

予定配賦

一方、予定配賦は、各補助部門費の予算に基づく金額を配賦する方法です。この方法では、まず会計期間の期首に、年間予算額を年間の予定配賦基準数値(基準操業度)で割って「予定配賦率」を計算します。そして、毎月の原価計算期間には、この予定配賦率に各部門の実際配賦基準数値(実際補助部門用役消費量)を掛けて「予定配賦額」を算出します。予定配賦を用いることで、原価の安定化や迅速な原価計算が可能になります。

3. 各配賦方法の組み合わせと特徴・欠点・解消

上記で説明した「配賦基準」と「配賦方法」の組み合わせによって、補助部門費の配賦には以下の4通りの方法が考えられます。

  • 単一基準配賦法&実際配賦
  • 単一基準配賦法&予定配賦
  • 複数基準配賦法&実際配賦(一般的にはあまり用いられません)
  • 複数基準配賦法&予定配賦

それぞれの組み合わせには、メリットとデメリットが存在します。特に重要なのが、それぞれの方法が持つ「欠点」と、それをどのように「解消」するのかという点です。

単一基準配賦法 & 実際配賦

この組み合わせは、最も基本的な配賦方法です。しかし、実際配賦を用いることによる次のような欠点があります。

  • 欠点①:補助部門費の実際発生額に含まれる原価の無駄を製造部門が負担してしまう可能性がある
    • 例えば、動力部門で電力の無駄な消費があったとしても、そのコストは実際発生額としてそのまま製造部門に配賦されてしまいます。これにより、製造部門は自らの管理努力とは関係なくコストを負担することになり、適切な原価管理や部門の業績測定が困難になります。動力部門における原価の無駄の原因と金額を分析し、原価管理に活かすことが重要ですが、実際配賦ではその点が曖昧になりがちです。
  • 欠点②:ある製造部門への配賦額が、他の製造部門の補助部門用役消費量の大小に左右されてしまう
    • 実際配賦率は、すべての用役消費部門の消費量合計に基づいて計算されます。そのため、もしある製造部門が用役消費を節約しても、他の製造部門の消費量が増えたり減ったりすることで、全体の配賦率が変動し、結果として自部門への配賦額が増減する可能性があります。これは、自部門の努力が配賦額に反映されにくいという問題を生じさせ、やはり適切な原価管理や業績測定を阻害します。

解消法:これらの欠点は、実際配賦ではなく、予定配賦を用いることで解消されます。

単一基準配賦法 & 予定配賦

この組み合わせは、上記の「単一基準配賦法&実際配賦」の欠点を解消することができます。

  • 欠点①の解消: 予定配賦によれば、補助部門で発生した原価の無駄は、補助部門の予算差異として明確に把握されるため、製造部門がこれを負担することはありません。これにより、補助部門の責任を明確にし、原価管理を適切に行うことが可能になります。
  • 欠点②の解消: 予定配賦では、事前に定められた一定の予定配賦率を用いて配賦が行われます。そのため、ある製造部門への配賦額が他の製造部門の用役消費量に影響されることがなくなり、各製造部門は自部門の努力に応じた配賦額を認識できます。

しかし、「単一基準配賦法&予定配賦」には、新たな欠点が生じます。

  • 新たな欠点:補助部門に管理不能な操業度差異が生じる可能性がある
    • 単一基準配賦法では、補助部門費の変動費と固定費を区別せず、一つの基準(用役消費量)で配賦します。このため、補助部門の費用はすべて用役消費量に連動するものとして扱われます。しかし、補助部門費には固定費が含まれており、固定費は操業度(用役消費量)とは直接連動しません。
    • 例として、動力部門の固定費は、製造部門の電力消費量に関わらず発生します。もし製造部門の実際の電力消費量(実際操業度)が、当初見込んでいた消費量(基準操業度)と異なると、補助部門において「操業度差異」が発生します。この操業度差異は、製造部門の操業状況によって生じるものであり、補助部門自身ではコントロールできない(管理不能な)差異です。にもかかわらず、その差異が補助部門の業績に影響を与えるため、原価管理や業績測定の面で問題が生じます。

解消法:この欠点は、単一基準配賦法ではなく、複数基準配賦法を用いることで解消されます。

複数基準配賦法 & 予定配賦

この組み合わせは、上記の「単一基準配賦法&予定配賦」の欠点を解消し、最も望ましい配賦方法とされています。

  • 消費能力の概念:複数基準配賦法では、固定費を配賦する際に「消費能力」を基準とします。原価には変動費と固定費があり、固定費は「一定の生産能力を維持するためのコスト(キャパシティ・コスト)」であると考えられます。補助部門の固定費も同様に、特定の用役提供能力を維持するためのコストです。この提供能力は、その用役を消費する部門の「消費能力」、つまり「補助部門用役をどれだけ消費することがありえるか」という能力によって決まると考えられます。したがって、補助部門費の固定費は、実際にどれだけ消費したかという「消費量」ではなく、どれだけの用役を受け入れる能力を持っているかという「消費能力」に基づいて配賦すべきである、というのが複数基準配賦法の考え方です。
  • 操業度差異の解消: 複数基準配賦法では、補助部門費の変動費は用役消費量に基づいて配賦し、固定費は用役消費能力に基づいて配賦します。固定費は予算額を各部門の消費能力比率で配賦するため、製造部門の実際の操業度(消費量)が変動しても、補助部門に操業度差異が発生することがありません。なぜなら、固定費は実際消費量とは直接関係なく、能力に対して発生する費用とみなされるからです。これにより、補助部門には管理不能な操業度差異が生じなくなり、補助部門の責任を明確にした適切な原価管理と業績測定が可能となります。

4. 最も望ましい配賦方法

これまでの解説を踏まえると、「複数基準配賦法と予定配賦を組み合わせた方法」が、補助部門費の配賦において最も望ましい方法であると言えます。この方法によって、実際配賦によって生じる2つの欠点と、単一基準配賦法によって生じる操業度差異の欠点がすべて解消されるためです。。


【4. 問題解説】

問1:単一基準配賦法(実際配賦)による仕訳

この問題は、最も基本的な補助部門費の配賦方法である「単一基準配賦法」と「実際配賦」の組み合わせを理解しているかを確認するものです。単一基準配賦法では、補助部門費の変動費と固定費を区別せず、一つの基準(ここでは動力消費量)で配賦します。また、実際配賦は、実際に発生した補助部門費を、実際の配賦基準数値に基づいて配賦する方法です。

解法手順と考え方:

  1. 実際配賦率の計算: 動力部門で実際に発生した費用1,800円を、各製造部門が実際に消費した動力量(600kwh + 300kwh = 900kwh)の合計で割ることで、1kwhあたりの配賦率を求めます。この配賦率は \(2円/kwh\)となります。
  2. 各製造部門への配賦額の計算: 算出した実際配賦率 \(2円/kwh\)に、それぞれの製造部門の実際の動力消費量を掛け合わせることで、配賦されるべき費用を計算します。第1製造部門は \(2円 \times 600kwh = 1,200円\)、第2製造部門は \(2円 \times 300kwh = 600円\)です。
  3. 仕訳の作成: 補助部門費(動力部門費)を製造部門費に振り替える仕訳を切ります。動力部門費という費用勘定が減少(貸方)し、第1製造部門費と第2製造部門費という費用勘定が増加(借方)します。

この方法の欠点として、動力部門に無駄な費用が含まれていても、それがそのまま製造部門に配賦されてしまう点が挙げられます。また、第2製造部門の消費量が減少すれば、全体での動力消費量が減るため配賦率が上昇し、第1製造部門への配賦額が増えてしまう可能性もあります。これらの欠点は、適切な原価管理を困難にする要因となります。

問2:単一基準配賦法(予定配賦)による配賦額の計算

この問題は、単一基準配賦法に予定配賦を組み合わせた場合の基本的な計算プロセスを問うものです。予定配賦の導入により、原価の安定化や迅速な計算が可能になります。

解法手順と考え方:

  1. 予定配賦率の計算: 予定配賦では、まず年間の予算額と基準操業度を用いて、年間の予定配賦率を算出します。年間予算額21,600円を年間基準操業度12,000kwhで割ることで、予定配賦率は \(1.8円/kwh\)となります。この予定配賦率は、会計期間の期首に設定され、毎月の原価計算で用いられます。
  2. 各製造部門への予定配賦額の計算: 毎月の予定配賦額は、算出した予定配賦率に各部門の「実際」の用役消費量(当月の動力消費量)を掛けて計算します。第1製造部門は \(1.8円 \times 600kwh = 1,080円\)、第2製造部門は \(1.8円 \times 300kwh = 540円\)となります。

問1の実際配賦と異なり、予定配賦を用いることで、補助部門に発生した原価の無駄が製造部門に転嫁されることを防ぐことができます。また、他の部門の消費量変動によって自部門の配賦額が影響を受けることもありません。これは、より公平な業績測定に繋がり、各部門の原価管理努力を適切に評価するための重要なステップと言えます。

問3:補助部門費配賦差異の分析

この問題は、単一基準配賦法と予定配賦を組み合わせた場合に発生する補助部門費配賦差異を計算し、さらに予算差異と操業度差異に分解する能力を測るものです。差異分析は、原価管理において非常に重要なプロセスであり、何が原因で差異が生じたのかを特定し、将来の改善に役立てることを目的とします。

解法手順と考え方:

  1. 月間基準操業度の算出: 年間基準操業度12,000kwhを12ヶ月で割って、月間の基準操業度1,000kwhを算出します。
  2. 変動費率・固定費率の算出: 動力部門の年間予算額21,600円から固定費12,000円を差し引き、変動費9,600円を特定します。変動費率(\(0.8円/kwh\))と固定費率(\(1.0円/kwh\))を計算します。
  3. 実際操業度の確認: 当月の実際動力消費量合計(900kwh)が実際操業度となります。
  4. 全体差異(補助部門費配賦差異)の計算: 予定配賦額合計1,620円(問2で計算済み)から、当月の実際発生額1,800円を差し引きます。結果は△180円となり、これは「借方差異」(不利差異)です。
  5. 実際操業度に対する予算額の計算: 変動費は実際操業度900kwhに変動費率\(0.8円/kwh\)を掛け、固定費は月間固定費予算額1,000円を加えます。これにより、実際操業度に対する予算額1,720円が算出されます。
  6. 予算差異の計算: 実際操業度に対する予算額1,720円から実際発生額1,800円を差し引くと、△80円の借方差異(不利差異)となります。この差異は、補助部門の管理努力(費用を予算内に抑えられたか)を示すものです。
  7. 操業度差異の計算: 予定配賦額1,620円から実際操業度に対する予算額1,720円を差し引くと、△100円の借方差異(不利差異)となります。この差異は、固定費率と実際操業度と基準操業度の差からも計算できます。操業度差異は、製造部門の操業度が変動したことにより、補助部門の固定費の回収に過不足が生じたことを意味します。この差異は、補助部門にとっては管理不能な差異であり、この点が「単一基準配賦法と予定配賦」の欠点となります。

問4:複数基準配賦法(予定配賦)による配賦額の計算

この問題は、複数基準配賦法と予定配賦を組み合わせた場合の配賦計算を問うものです。この方法は、「単一基準配賦法と予定配賦」の欠点である管理不能な操業度差異の発生を解消できる、より洗練された方法です。

解法手順と考え方: 複数基準配賦法の最大の特徴は、変動費と固定費を別々の基準で配賦する点にあります。

  1. 変動費の配賦: 変動費の予定配賦率(\(0.8円/kwh\))は、単一基準配賦法の場合と同様に、年間の変動費予算額を年間基準操業度で割って計算します。この変動費率を各製造部門の「実際」の動力消費量に掛けて配賦額を算出します。第1製造部門は480円、第2製造部門は240円となります。
  2. 固定費の配賦: 固定費は「消費能力」を基準に配賦します。まず月間固定費予算額(1,000円)を算出します。次に、各製造部門の消費能力比率(第1製造部門:9,000kwh / (9,000kwh + 6,000kwh) = 0.6、第2製造部門:6,000kwh / (9,000kwh + 6,000kwh) = 0.4)を用いて、固定費を配賦します。第1製造部門は600円、第2製造部門は400円となります。

このように変動費と固定費を分離して配賦することで、固定費は実際操業度ではなく、各部門の「能力」に対して割り当てられるため、製造部門の操業度変動が補助部門の操業度差異に繋がるという問題が解消されます。これにより、補助部門の管理責任がより明確になり、原価管理が容易になります。

問5:配賦方法の選択に関する記述

この問題は、補助部門費の配賦方法に関する理論的な理解を問うものです。特に、各配賦方法が持つ欠点と、それを解消するための次のステップを理解していることが重要です。

考え方と解説:

  • 選択肢aとbは、「単一基準配賦法と実際配賦」の欠点として挙げられています。これらは、補助部門の無駄が製造部門に転嫁される、または他部門の消費量に配賦額が左右されるという問題です。これらの欠点は、予定配賦を導入することで解消されます。
  • 選択肢cは、「単一基準配賦法と予定配賦」を採用した場合に新たに発生する欠点です。固定費を含む補助部門費を単一の用役消費量基準で予定配賦すると、製造部門の実際の操業度が計画と異なる場合に、補助部門にとって管理不能な操業度差異が生じてしまいます。これは、補助部門の業績評価を困難にする要因となります。
  • 選択肢dは、単一基準配賦法の性質自体を述べており、欠点というよりは複数基準配賦法との比較で示される特徴です。

したがって、この問題では「単一基準配賦法と予定配賦」の固有の欠点である「補助部門に管理不能な操業度差異が生じる可能性がある」が正解となります。この欠点は、変動費と固定費を分離して、固定費を消費能力に基づいて配賦する「複数基準配賦法」を導入することで解消されます。


まとめ

ポイント1:補助部門費の配賦基準は2種類

補助部門費の配賦基準には、補助部門費の変動費と固定費を区別するかどうかによって、「単一基準配賦法」と「複数基準配賦法」の2つがあります。単一基準配賦法は、変動費と固定費をまとめて用役消費量を基準に配賦するのに対し、複数基準配賦法は変動費を用役消費量で、固定費を用役消費能力で配賦します。

ポイント2:補助部門費の配賦方法も2種類

補助部門費の配賦方法には、発生額をそのまま配賦する「実際配賦」と、予算に基づいて事前に設定した金額を配賦する「予定配賦」の2つがあります。これらの基準と方法の組み合わせにより、補助部門費の配賦には合計4通りの方法が存在します。

ポイント3:「単一基準配賦法&実際配賦」の2つの欠点

最も基本的な「単一基準配賦法&実際配賦」には、主に2つの欠点があります。1つ目は、補助部門の原価の無駄が製造部門に転嫁されてしまうこと。2つ目は、ある製造部門への配賦額が、他の製造部門の用役消費量の大小に左右されてしまうことです。これらは、適切な原価管理や業績測定を困難にします。

ポイント4:「単一基準配賦法&予定配賦」の欠点と解消

「単一基準配賦法&実際配賦」の2つの欠点は、「単一基準配賦法&予定配賦」を用いることで解消されます。しかし、この方法では、製造部門の操業度変動によって補助部門に管理不能な操業度差異が生じてしまうという新たな欠点が発生します。これは、固定費が用役消費量に連動しない性質を持つにもかかわらず、単一基準で配賦されるために起こる問題です。

ポイント5:最も望ましい「複数基準配賦法&予定配賦」

上記の欠点は、「複数基準配賦法&予定配賦」を組み合わせることで解消されます。この方法では、固定費を「用役消費量」ではなく「用役消費能力」を基準に配賦するため、製造部門の実際の操業度変動が補助部門の操業度差異に影響を与えることがなくなります。これにより、補助部門の管理責任が明確になり、より正確な原価管理と業績測定が可能となるため、この組み合わせが最も望ましいとされています。

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この記事を書いた人

簿記2級を取得し、現在簿記1級を勉強中。
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