問1:第1次集計における部門費の計算
次の資料にもとづき、部門別計算の第1次集計後の各部門費(第1次集計費)を求めなさい。
〔資料〕
1.当月の製造間接費の実際発生額:35,000円
2.部門個別費:
◦第1製造部門:12,000円
◦第2製造部門:7,000円
◦動力部門:4,000円
◦修繕部門:2,000円
3.部門共通費:
◦間接材料費:3,000円
◦建物減価償却費:5,000円
◦工場消耗品費:2,000円
4.部門共通費の配賦基準:
部門 | 第1製造部門 | 第2製造部門 | 動力部門 | 修繕部門 |
---|---|---|---|---|
従業員数(人) | 30 | 20 | 15 | 5 |
占有床面積(m²) | 70 | 20 | 5 | 5 |
消耗品消費量(単位) | 20 | 15 | 10 | 5 |
——————————————————————————–
問2:直接配賦法による補助部門費の配賦計算
次の資料にもとづき、直接配賦法および単一基準配賦法によって補助部門費を配賦した場合の、各製造部門費(補助部門費配賦後)を求めなさい。
〔資料〕
1.各部門費(第1次集計費):
◦第1製造部門:18,000円
◦第2製造部門:15,000円
◦動力部門:3,000円
◦修繕部門:2,000円
2.
補助部門費の配賦基準:
部門 | 第1製造部門 | 第2製造部門 | 動力部門 | 修繕部門 |
---|---|---|---|---|
動力消費量(kwh) | 700 | 300 | – | 200 |
修繕時間(時間) | 40 | 30 | 10 | – |
——————————————————————————–
問3:簡便的な相互配賦法による補助部門費の配賦計算
次の資料にもとづき、相互配賦法(第1次配賦では補助部門相互の用役授受を考慮し、第2次配賦は直接配賦法による方法)および単一基準配賦法によって補助部門費を配賦した場合の、各製造部門費(補助部門費配賦後)を求めなさい。 解答は、円未満を四捨五入して整数で答えること。
〔資料〕
1.各部門費(第1次集計費):
◦第1製造部門:9,000円
◦第2製造部門:8,000円
◦動力部門:1,800円
◦修繕部門:1,200円
2.
補助部門費の配賦基準:
部門 | 第1製造部門 | 第2製造部門 | 動力部門 | 修繕部門 |
---|---|---|---|---|
動力消費量(kwh) | 600 | 300 | – | 100 |
修繕時間(時間) | 30 | 20 | 10 | – |
——————————————————————————–
問4:部門別計算に関する記述の正誤判定
次の記述のうち、最も適切なものを一つ選びなさい。
ア.部門別計算の主な目的は、製品原価計算を簡素化し、原価計算の作業効率を高めることである。
イ.製造部門とは、製品の製造作業が直接行われる部門であり、補助部門は製造部門に用役を提供する部門である。
ウ.第1次集計では、製造間接費を各部門に集計する際、部門個別費と部門共通費の区別なく、すべて配賦基準に基づいて集計する。
エ.直接配賦法は、補助部門間の用役授受を完全に考慮するため、最も正確な部門費の計算方法である。
——————————————————————————–
問5:部門費配賦に関する仕訳
次の取引に関する仕訳として最も適切なものを解答欄に記入しなさい。
•
当月の部門共通費(従業員数基準で配賦される間接労務費2,500円、占有床面積基準で配賦される減価償却費4,000円)を各部門に配賦した。各部門の従業員数は第1製造部門30人、第2製造部門20人、工場事務部門5人である。また、占有床面積は第1製造部門50m²、第2製造部門40m²、工場事務部門10m²である。
•
なお、部門別計算では第1次集計において、部門個別費はすでに各部門に賦課されているものとする。
————————————
問1:第1次集計における部門費の計算
- 第1製造部門費: 17,586円
- 第2製造部門費: 9,457円
- 動力部門費: 5,293円
- 修繕部門費: 2,664円
問2:直接配賦法による補助部門費の配賦計算
- 第1製造部門費(補助部門費配賦後): 21,243円
- 第2製造部門費(補助部門費配賦後): 16,757円
問3:簡便的な相互配賦法による補助部門費の配賦計算
- 第1製造部門費(補助部門費配賦後): 10,921円
- 第2製造部門費(補助部門費配賦後): 9,079円
問4:部門別計算に関する記述の正誤判定
- 最も適切な記述: イ
問5:部門費配賦に関する仕訳
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
---|---|---|---|
第1製造部門費 | 3,364 | 製造間接費 | 6,500 |
第2製造部門費 | 2,509 | ||
工場事務部門費 | 627 |
部門別計算とは? – 製品原価計算の流れと概要
1. 部門別計算の全体像
原価計算は、大きく分けて3つの手続きによって行われます。
費目別計算(第1の手続き)
費目別計算は、材料費、労務費、経費といった原価要素を、その発生源泉別に集計します。さらに、それぞれの原価が特定の製品に直接結びつく「製造直接費」なのか、複数の製品や部門に共通して発生する「製造間接費」なのかを区分します。
部門別計算(第2の手続き)
費目別計算で集計された原価、特に製造間接費を、発生した「部門」ごとに集計し、その後、製造部門で発生した原価を「製品」へと配賦する手続きが部門別計算です。例えば、第一製造部門と第二製造部門に甲製品と乙製品を製造している場合、各製造部門で発生した製造間接費をそれぞれの部門に集計し、最終的に甲製品と乙製品に適切な方法で割り振ることで、より精度の高い製品原価を算出することが可能になります。
製品別計算(第3の手続き)
部門別計算を経て、各部門に集計された原価が製品に配賦された後、最終的に各製品の完成品原価や月末仕掛品原価を計算するのが製品別計算です。これは、製品単位での最終的な原価を確定し、売上原価の計算や棚卸資産の評価に用いられます。
2. 部門別計算の目的
部門別計算を実施することには、主に以下の2つの重要な目的があります。
正確な製品原価計算
部門別計算を省略した場合、工場全体で発生した製造間接費を、単一の基準(例えば、直接作業時間など)や一つの配賦率を用いて、すべての製品に一括して配賦することになります。しかし、製造間接費は多岐にわたる性質を持ち、その発生要因もさまざまです。小規模な工場であれば問題ないかもしれませんが、規模が大きくなると、この総括配賦率だけでは、個々の製品にかかる真の原価を正確に計算することが困難になります。
部門別計算を導入することで、各製造部門が持つ固有の活動内容や特徴に応じて、より適切な配賦基準や配賦率を選択することが可能になります。例えば、機械作業が中心であれば機械運転時間を配賦基準として採用することで、各製品の製造に実際に貢献した作業内容に応じた、より精度の高い原価計算が実現します。これは、価格設定や製品ポートフォリオの決定など、経営上の意思決定に大きな影響を与えます。
原価管理の強化
部門別計算では、原価を各製造部門や補助部門に集計します。これにより、各部門がどれだけの原価を発生させたのかを明確に把握できるようになります。この情報を活用することで、各部門の予算と実績を比較したり、原価差異を分析したりすることが可能になります。
例えば、ある部門で予想以上に原価が発生した場合、その原因を特定し、改善策を講じることができます。また、各部門の責任者が自部門の原価発生状況を把握し、管理する意識を高めることにも繋がります。このように、部門別計算は、単に製品原価を計算するだけでなく、各部門の業績評価を通じて、より効果的な原価管理体制を構築するための強力なツールとなるのです。
3. 部門の種類
部門別計算において「部門」は、その役割によって大きく2種類に分けられます。
製造部門
製造部門とは、文字通り、製品の製造作業が行われる部門を指します。製品の加工、組み立て、検査など、物理的に製品の価値を付加する活動が行われる場所です。 例:切削部門、組立部門、塗装部門
これらの部門で発生した原価は、最終的に製造された製品に直接的に負担されることになります。
補助部門
補助部門は、製造部門の活動を円滑に進めるために、何らかの用役(サービス)を提供する部門です。製品を直接製造するわけではありませんが、製造活動を間接的にサポートする役割を担っています。補助部門は、さらに以下の2種類に分類されます。
- 補助経営部門: 製造活動に必要な動力の供給、機械設備の修理・保守、運搬作業など、工場運営に直接的に貢献するサービスを提供する部門です。 例:動力部、修繕部、運搬部
- 工場管理部門: 工場全体の管理運営に関わる事務作業、計画策定、資材調達など、工場運営を間接的にサポートする部門です。 例:工場事務部、材料倉庫部、研究部門
補助部門は、製造部門だけでなく、他の補助部門に対しても用役を提供することがあります。例えば、動力部が修繕部に電力を供給したり、修繕部が動力部の機械を修理したりするケースがこれに当たります。この「補助部門間の用役授受」を計算上どのように扱うかが、部門別計算、特に第2次集計における重要な論点となります。
4. 部門別計算の具体的な手続き
部門別計算は、以下の3段階の段階を経て行われます。それぞれの段階には、特定の目的と計算内容があります。
第1次集計(第1の手続き)
第1次集計は、製造間接費を各部門に集計する手続きです。費目別計算で集計された製造間接費は、まだ特定の部門に紐付けられていない「工場全体」の費用として認識されています。これを、各部門に割り振っていく作業が第1次集計です。
製造間接費は、その発生源が特定の部門に直接結びつくかどうかによって、以下の2種類に分けられます。
- 部門個別費: 製造間接費のうち、どの部門で発生したかが直接的かつ明確にわかるものを指します。例えば、特定の部門で使用された消耗品費や、その部門に常駐する間接作業員の賃金などが該当します。部門個別費は、発生した部門に直接**賦課(直課)**されます。
- 部門共通費: 製造間接費のうち、2つ以上の部門で共通して発生するものを指します。例えば、工場全体の建物の減価償却費や、工場全体の警備費用などが該当します。これらの費用は、特定の部門に直接結びつけられないため、従業員数や床面積など、適切な配賦基準を用いて各部門に配賦されます。
第1次集計では、部門個別費の賦課と部門共通費の配賦によって、すべての製造間接費が各製造部門と補助部門に集計されます。
第2次集計(第2の手続き)
第2次集計は、第1次集計で集計された補助部門費を、製造部門に配賦する手続きです。補助部門は製品を直接製造しないため、その費用は最終的に製品原価の一部となる製造部門費に転嫁される必要があります。
もし補助部門が1つしかない場合は、その補助部門費を単に製造部門に配賦するだけで済みます。しかし、複数の補助部門が存在し、補助部門間で用役の授受(例えば、動力部が修繕部に電力供給し、修繕部が動力部の機械を修理するなど)がある場合、この用役授受を計算上どこまで考慮するかが問題となります。この考慮の度合いによって、主に以下の3つの配賦方法があります。
- 直接配賦法: 補助部門間の用役授受を一切無視して、補助部門費を製造部門のみに配賦する方法です。最も簡便な方法ですが、正確性には欠けます。
- 相互配賦法: 補助部門間の用役授受をすべて考慮して、補助部門費を配賦する方法です。計算は複雑になりますが、最も正確性が高いとされます。これには、「簡便的な方法」と「純粋な相互配賦法」があります。
- 階梯式配賦法(段階式配賦法): 補助部門に順位付けを行い、上位の補助部門から下位の補助部門への用役提供は考慮し、下位の補助部門から上位の補助部門への用役提供は無視する方法です。直接配賦法と相互配賦法の中間的な性格を持ちます。
これらの方法は、計算の複雑さと正確性のトレードオフ関係にあります。簿記1級では、これらの配賦方法を正確に理解し、計算できることが求められます。
製品への配賦(第3の手続き)
部門別計算の最後の段階では、第2次集計によって各製造部門に集計された製造部門費を、それぞれの製造部門の活動実態に応じた適切な配賦基準を用いて、各製品に配賦します。
製造部門費を製品に配賦する方法には、大きく分けて2種類あります。
- 実際配賦: 実際に発生した製造部門費の金額と、実際の活動量に基づいて配賦率を計算し、製品に配賦する方法です。最も実態を反映しますが、原価が確定するのが遅くなるという欠点があります。
- 予定配賦: あらかじめ設定された予定配賦率(過去の実績や予算に基づいて算出)を用いて、製品に配賦する方法です。迅速に原価を把握できますが、実際との差異が生じる可能性があります。
予定配賦を行った場合には、製造部門費配賦差異(予定配賦額と実際発生額の差額)が発生します。この差異は、さらに「予算差異」と「操業度差異」に分析され、原価管理上の重要な情報となります。
5. 第2次集計の詳細な方法
第2次集計は部門別計算の中でも特に複雑で、試験でも重点的に問われる部分です。ここでは、主要な配賦方法である直接配賦法と簡便的な相互配賦法について、さらに詳しく見ていきましょう。
直接配賦法
直接配賦法は、補助部門費を製造部門に配賦する際、補助部門間の用役授受を一切考慮しない最もシンプルな方法です。例えば、動力部門が修繕部門に電力を供給していても、修繕部門が動力部門の設備を修理していても、これらの用役のやり取りは計算上無視されます。動力部門の費用はすべて製造部門へ、修繕部門の費用もすべて製造部門へと直接配賦されます。
特徴:
- 計算が簡便: 補助部門間の計算が不要なため、計算プロセスが非常にシンプルです。
- 正確性が低い: 補助部門間の用役授受を無視するため、各部門の実際に応じた原価配賦とはならず、特に補助部門間の用役授受が大きい場合に、製品原価の正確性が損なわれる可能性があります。
実務では、補助部門間の用役授受が軽微である場合や、迅速な原価計算が求められる場合に採用されることがあります。しかし、簿記1級の学習としては、この方法の限界も理解しておくことが重要です。
相互配賦法(簡便的な方法)
相互配賦法は、補助部門間の用役授受をすべて考慮して配賦を行う方法です。これにより、より正確な部門費の集計と配賦が可能になります。相互配賦法には「簡便的な方法」と「純粋な相互配賦法」の2種類がありますが、ここでは簡便的な方法に焦点を当てて解説します。
簡便的な相互配賦法は、補助部門費の配賦を2段階に分けて行います。
- 第1次配賦: この段階では、補助部門間の用役授受をすべて考慮して、各補助部門の費用を、製造部門だけでなく他の補助部門にも配賦します。これにより、各補助部門は自部門で発生した費用に加えて、他の補助部門から受けた用役の費用も集計することになります。同時に、自部門が他の補助部門に提供した用役の費用も配賦します。
- 第2次配賦: 第1次配賦で各補助部門に集計された費用(自部門の費用+他の補助部門からの受入費用)のうち、**他の補助部門へ配賦された分を、直接配賦法と同様に製造部門のみに配賦します。**この段階では、補助部門間の用役授受はもう一度無視されます。この方法では、最終的にすべての補助部門費が製造部門に集計されます。
特徴:
- 正確性の向上: 直接配賦法よりも補助部門間の用役授受を考慮するため、より正確な配賦が可能です。
- 計算の複雑さ: 2段階の配賦計算が必要となるため、直接配賦法に比べて計算が複雑になります。しかし、純粋な相互配賦法(連立方程式などを使用)に比べれば簡便です。
この方法は、補助部門間の用役授受がある程度重要であるものの、計算の複雑さを抑えたい場合に用いられます。
補助部門費の配賦基準
補助部門費を配賦する際には、その費用の性質に応じて適切な配賦基準を選ぶことが重要です。配賦基準の選択には、主に以下の2つのアプローチがあります。
- 単一基準配賦法: 補助部門費全体を、変動費と固定費に分けずに、一つの配賦基準(補助部門用役の消費量など)を用いて配賦する方法です。シンプルであるため、通常の問題で変動費と固定費が区分されていない場合は、この方法を用いることが多いです。
- 複数基準配賦法: 補助部門費を変動費と固定費に分けて、それぞれ異なる配賦基準を用いる方法です。変動費には補助部門用役の消費量(例:電力消費量、修理時間)を、固定費には補助部門用役の消費能力(例:最大供給可能電力、保有する機械の能力)を配賦基準として用いるのが一般的です。より実態に即した配賦が可能になりますが、計算はより複雑になります。問題資料で変動費と固定費が明確に分けられて提示されている場合は、この複数基準配賦法を用いると判断できます。
【問題解説】
問1:第1次集計における部門費の計算
本問は、部門別計算における最初のステップである第1次集計の考え方を問う問題です。第1次集計の目的は、製造間接費を各部門に集計することにあります。ここで重要になるのは、製造間接費を部門個別費と部門共通費の2種類に区別して処理する点です。
部門個別費は、どの部門で発生したかが直接的に特定できる費用であり、例えば特定の部門のみが使用する消耗品費などがこれに該当します。これらの費用は、**発生した部門に直接賦課(直課)**されます。つまり、特定の部門の領収書を見れば、その費用がどの部門に帰属するかが一目瞭然なため、計算の必要なくそのまま各部門へ配分されるというわけです。
一方、部門共通費は、複数の部門にまたがって共通して発生する費用であり、例えば工場全体の建物減価償却費や間接労務費などが該当します。これらの費用は、各部門の利用度や恩恵の度合いを測る適切な配賦基準を用いて各部門に「配賦」されます。配賦基準の選定は、費用の性質を考慮して最も合理的であると判断されるものを選ぶことが肝要です。例えば、間接労務費は従業員数、建物減価償却費は占有床面積、電力料は機械運転時間など、費用と部門の活動との因果関係を考慮します。
この問題では、部門個別費は与えられた金額をそのまま各部門に割り当て、部門共通費は資料に示された配賦基準(従業員数、占有床面積、消耗品消費量)を用いて、それぞれの部門の割合に応じて配賦を行いました。各部門の最終的な第1次集計費は、部門個別費とその部門に配賦された部門共通費の合計となります。この手順を通じて、製造間接費という多岐にわたる費用を、その発生源や利用実態に応じて各部門に集約することで、次段階以降のより正確な原価計算の基盤を築くことができるのです。
計算過程:
- 部門個別費の賦課:
- 第1製造部門: 12,000円
- 第2製造部門: 7,000円
- 動力部門: 4,000円
- 修繕部門: 2,000円
- 部門共通費の配賦:
- 間接材料費 (3,000円) → 従業員数:
- 総従業員数: \(30 + 20 + 15 + 5 = 70\)人
- 配賦率: \(3,000 \text{円} \div 70 \text{人} \approx 42.857 \text{円/人}\)
- 第1製造部門: \(42.857 \times 30 \text{人} = 1,286 \text{円}\) (四捨五入)
- 第2製造部門: \(42.857 \times 20 \text{人} = 857 \text{円}\)
- 動力部門: \(42.857 \times 15 \text{人} = 643 \text{円}\)
- 修繕部門: \(42.857 \times 5 \text{人} = 214 \text{円}\)
- 建物減価償却費 (5,000円) → 占有床面積:
- 総占有床面積: \(70 + 20 + 5 + 5 = 100 \text{m}^2\)
- 配賦率: \(5,000 \text{円} \div 100 \text{m}^2 = 50 \text{円/m}^2\)
- 第1製造部門: \(50 \times 70 \text{m}^2 = 3,500 \text{円}\)
- 第2製造部門: \(50 \times 20 \text{m}^2 = 1,000 \text{円}\)
- 動力部門: \(50 \times 5 \text{m}^2 = 250 \text{円}\)
- 修繕部門: \(50 \times 5 \text{m}^2 = 250 \text{円}\)
- 工場消耗品費 (2,000円) → 消耗品消費量:
- 総消耗品消費量: \(20 + 15 + 10 + 5 = 50\)単位
- 配賦率: \(2,000 \text{円} \div 50 \text{単位} = 40 \text{円/単位}\)
- 第1製造部門: \(40 \times 20 \text{単位} = 800 \text{円}\)
- 第2製造部門: \(40 \times 15 \text{単位} = 600 \text{円}\)
- 動力部門: \(40 \times 10 \text{単位} = 400 \text{円}\)
- 修繕部門: \(40 \times 5 \text{単位} = 200 \text{円}\)
- 間接材料費 (3,000円) → 従業員数:
- 各部門費の合計(第1次集計費):
- 第1製造部門費: \(12,000 + 1,286 + 3,500 + 800 = 17,586 \text{円}\)
- 第2製造部門費: \(7,000 + 857 + 1,000 + 600 = 9,457 \text{円}\)
- 動力部門費: \(4,000 + 643 + 250 + 400 = 5,293 \text{円}\)
- 修繕部門費: \(2,000 + 214 + 250 + 200 = 2,664 \text{円}\)
問2:直接配賦法による補助部門費の配賦計算
本問は、部門別計算の第2のステップである第2次集計のうち、直接配賦法の適用について問う問題です。第2次集計の目的は、補助部門費を製造部門に配賦することにあります。補助部門は製品を直接製造するわけではなく、製造部門に対して動力の供給や修繕などの用役(サービス)を提供することで、製造活動を支援しています。そのため、補助部門で発生した費用は、最終的に製品原価に含めるために、サービスを受けた製造部門に負担させる必要があります。
直接配賦法は、最も簡便な補助部門費の配賦方法の一つとして知られています。この方法の最大の特徴は、補助部門間の用役授受を一切無視する点です。例えば、動力部門が修繕部門に電力を供給していたとしても、直接配賦法ではこの相互のサービス提供を考慮せず、動力部門の費用は直接、製品を製造する製造部門にのみ配賦されます。これは、計算の手間を大幅に削減できる一方で、補助部門間のサービスの連鎖を考慮しないため、精度の面では他の方法に劣る可能性があります。しかし、計算の単純さから、簿記2級レベルの学習内容としても頻繁に出題され、簿記1級でも基礎として重要視されています。
問題の意図としては、この「補助部門間の用役授受を無視する」という直接配賦法の核心的な考え方を理解しているかを確認することにあります。配賦率を計算する際には、補助部門からサービスを受ける製造部門の消費量(動力消費量や修繕時間など)のみを合計し、補助部門間の消費量は計算から除外します。
計算過程:
- 各部門費(第1次集計費):
- 第1製造部門: 18,000円
- 第2製造部門: 15,000円
- 動力部門: 3,000円
- 修繕部門: 2,000円
- 動力部門費 (3,000円) の配賦:
- 直接配賦法では、修繕部門への動力消費量100kwhを無視します。
- 製造部門の動力消費量合計: \(700 \text{kwh} + 300 \text{kwh} = 1,000 \text{kwh}\)
- 配賦率: \(3,000 \text{円} \div 1,000 \text{kwh} = 3 \text{円/kwh}\)
- 第1製造部門への配賦額: \(3 \text{円/kwh} \times 700 \text{kwh} = 2,100 \text{円}\)
- 第2製造部門への配賦額: \(3 \text{円/kwh} \times 300 \text{kwh} = 900 \text{円}\)
- 修繕部門費 (2,000円) の配賦:
- 直接配賦法では、動力部門への修繕時間10時間を無視します。
- 製造部門の修繕時間合計: \(40 \text{時間} + 30 \text{時間} = 70 \text{時間}\)
- 配賦率: \(2,000 \text{円} \div 70 \text{時間} \approx 28.5714 \text{円/時間}\)
- 第1製造部門への配賦額: \(28.5714 \times 40 \text{時間} = 1,143 \text{円}\) (四捨五入)
- 第2製造部門への配賦額: \(28.5714 \times 30 \text{時間} = 857 \text{円}\) (四捨五入)
- 補助部門費配賦後の各製造部門費:
- 第1製造部門費: \(18,000 \text{円} + 2,100 \text{円} + 1,143 \text{円} = 21,243 \text{円}\)
- 第2製造部門費: \(15,000 \text{円} + 900 \text{円} + 857 \text{円} = 16,757 \text{円}\)
問3:簡便的な相互配賦法による補助部門費の配賦計算
本問は、補助部門費の配賦方法のうち、簡便的な相互配賦法の適用について問う問題です。この方法は、直接配賦法よりも複雑ですが、補助部門間の用役授受をある程度考慮することで、より実態に即した費用配賦を目指す点が特徴です。
簡便的な相互配賦法は、2段階の配賦計算を行います。 第1次配賦では、まず各補助部門が提供した用役を、サービスを受けたすべての部門(製造部門と他の補助部門を含む)に対して配賦します。これにより、補助部門間で発生した用役の授受が費用計算に反映され、より正確な補助部門ごとの費用負担の実態が明らかになります。この段階では、補助部門間の相互作用を完全に考慮するため、例えば動力部門の費用を修繕部門にも配賦し、修繕部門の費用を動力部門にも配賦します。
しかし、第1次配賦が終わった時点では、まだ補助部門の費用が完全にゼロになったわけではありません。なぜなら、他の補助部門から受けた用役の対価として、その補助部門に費用が再び集計されるからです。そこで、次に第2次配賦を行います。
第2次配賦では、第1次配賦で補助部門に集計された費用(つまり、他の補助部門から受けた用役の費用分)を、直接配賦法と同じ考え方で製造部門にのみ配賦します。この段階では、補助部門間の用役授受は一切無視されます。この2段階のプロセスにより、相互のサービス提供を考慮しつつも、最終的には製造部門にすべての補助部門費を集約することができます。
簿記1級では、この簡便的な相互配賦法と、より正確な純粋な相互配賦法(連立方程式を用いて完全に相互の用役授受を考慮する方法)とを区別して理解することが求められます。本問を通じて、簡便的な方法の特徴である「2段階配賦」と、各段階での配賦対象の違いをしっかりと理解することが重要です。
計算過程:
- 各部門費(第1次集計費):
- 第1製造部門: 9,000円
- 第2製造部門: 8,000円
- 動力部門: 1,800円
- 修繕部門: 1,200円
- 第1次配賦(補助部門間の用役授受をすべて考慮):
- 動力部門費 (1,800円) の配賦:
- 全消費量合計: \(600 \text{kwh} (\text{第1製造}) + 300 \text{kwh} (\text{第2製造}) + 100 \text{kwh} (\text{修繕}) = 1,000 \text{kwh}\)
- 配賦率: \(1,800 \text{円} \div 1,000 \text{kwh} = 1.8 \text{円/kwh}\)
- 第1製造部門へ: \(1.8 \times 600 = 1,080 \text{円}\)
- 第2製造部門へ: \(1.8 \times 300 = 540 \text{円}\)
- 修繕部門へ: \(1.8 \times 100 = 180 \text{円}\)
- 修繕部門費 (1,200円) の配賦:
- 全修繕時間合計: \(30 \text{時間} (\text{第1製造}) + 20 \text{時間} (\text{第2製造}) + 10 \text{時間} (\text{動力}) = 60 \text{時間}\)
- 配賦率: \(1,200 \text{円} \div 60 \text{時間} = 20 \text{円/時間}\)
- 第1製造部門へ: \(20 \times 30 = 600 \text{円}\)
- 第2製造部門へ: \(20 \times 20 = 400 \text{円}\)
- 動力部門へ: \(20 \times 10 = 200 \text{円}\)
- 動力部門費 (1,800円) の配賦:
- 第1次配賦後の補助部門費残高:
- 動力部門残高: 修繕部門から受けた配賦額 \(200 \text{円}\)
- 修繕部門残高: 動力部門から受けた配賦額 \(180 \text{円}\)
- 第2次配賦(補助部門間の用役授受を無視して製造部門に配賦):
- 動力部門費残高 (200円) の配賦:
- 製造部門の動力消費量合計: \(600 \text{kwh} + 300 \text{kwh} = 900 \text{kwh}\)
- 配賦率: \(200 \text{円} \div 900 \text{kwh} \approx 0.2222 \text{円/kwh}\)
- 第1製造部門へ: \(0.2222 \times 600 = 133 \text{円}\) (四捨五入)
- 第2製造部門へ: \(0.2222 \times 300 = 67 \text{円}\) (四捨五入)
- 修繕部門費残高 (180円) の配賦:
- 製造部門の修繕時間合計: \(30 \text{時間} + 20 \text{時間} = 50 \text{時間}\)
- 配賦率: \(180 \text{円} \div 50 \text{時間} = 3.6 \text{円/時間}\)
- 第1製造部門へ: \(3.6 \times 30 = 108 \text{円}\)
- 第2製造部門へ: \(3.6 \times 20 = 72 \text{円}\)
- 動力部門費残高 (200円) の配賦:
- 補助部門費配賦後の各製造部門費:
- 第1製造部門費: \(9,000 \text{円} (\text{第1次集計費}) + 1,080 \text{円} (\text{動力1次}) + 600 \text{円} (\text{修繕1次}) + 133 \text{円} (\text{動力2次}) + 108 \text{円} (\text{修繕2次}) = 10,921 \text{円}\)
- 第2製造部門費: \(8,000 \text{円} (\text{第1次集計費}) + 540 \text{円} (\text{動力1次}) + 400 \text{円} (\text{修繕1次}) + 67 \text{円} (\text{動力2次}) + 72 \text{円} (\text{修繕2次}) = 9,079 \text{円}\)
問4:部門別計算に関する記述の正誤判定
この問題は、部門別計算の基本的な概念と各計算段階の目的、および配賦方法の特性に関する理解度を試すものです。
- ア.部門別計算の主な目的は、製品原価計算を簡素化し、原価計算の作業効率を高めることである。
- この記述は誤りです。部門別計算の主な目的は、より正確な製品原価計算を行うことと、各部門の原価管理を適切に行うことです。特に製造間接費のように多岐にわたる費用を工場全体で一括して配賦すると、個々の製品の原価が不正確になるため、部門別に細かく集計・配賦することで精度を高めることを目指します。これは、計算作業を簡素化するのではなく、むしろ複雑化させる側面があるため、誤った認識と言えます。
- イ.製造部門とは、製品の製造作業が直接行われる部門であり、補助部門は製造部門に用役を提供する部門である。
- この記述は正しいです。製造部門は「製品の製造作業が直接行われる部門」と定義され、具体例として切削部門や組立部門が挙げられています。また、補助部門は「他の部門の活動のために、何らかの用役(サービス)を提供する部門」であり、動力部や修繕部、工場事務部などが例示されています。補助部門は製造部門の活動を補助する役割を持ちます。
- ウ.第1次集計では、製造間接費を各部門に集計する際、部門個別費と部門共通費の区別なく、すべて配賦基準に基づいて集計する。
- この記述は誤りです。第1次集計では、製造間接費を部門個別費と部門共通費に明確に区別します。部門個別費は、その発生源が特定の部門に直接紐付けられるため、**配賦基準を用いることなく直接その部門に「賦課(直課)」**されます。一方、部門共通費は複数の部門にまたがって発生するため、**適切な配賦基準に基づいて各部門に「配賦」**されます。このように、区別して処理される点が重要です。
- エ.直接配賦法は、補助部門間の用役授受を完全に考慮するため、最も正確な部門費の計算方法である。
- この記述は誤りです。直接配賦法は、補助部門費の配賦計算において補助部門間の用役授受を一切無視する方法です。そのため、最も簡便である反面、用役の相互関係を無視するため、最も正確な計算方法ではありません。最も正確なのは、補助部門間の用役授受をすべて考慮する純粋な相互配賦法です。
以上の分析から、選択肢「イ」が最も適切な記述となります。
問5:部門費配賦に関する仕訳
この問題は、部門別計算の第1次集計において、特に部門共通費を各部門に配賦する際の仕訳を問うものです。部門共通費は、複数の部門で共通して発生した製造間接費であり、これを適切な配賦基準を用いて各部門に割り振る必要があります。
仕訳の背景にある考え方としては、まず、当月に発生した製造間接費の総額が「製造間接費」という勘定に一時的に集計されています。第1次集計の段階では、この製造間接費(特に部門共通費に該当する部分)を、実際に費用が発生した各部門(製造部門や補助部門など)の費用として認識し直すことになります。
したがって、仕訳としては、費用を配賦される側の各部門費勘定(例: 第1製造部門費、第2製造部門費、工場事務部門費)が借方に計上され、集計元である「製造間接費」勘定が貸方に計上されます。これにより、製造間接費勘定の残高が減少し、代わりに各部門費の残高が増加するという費用の振り替えが行われます。
本問では、間接労務費を従業員数で、減価償却費を占有床面積で配賦するという具体的な指示があります。各費用の合計額を配賦基準の総量で割って配賦率を算出し、それを各部門の基準量に乗じて個別の配賦額を計算します。この計算結果に基づいて、各部門への配賦額を借方に、部門共通費の合計額を貸方に記帳することになります。この仕訳は、費用をより詳細な管理単位である「部門」に落とし込むための重要なステップであり、原価管理の精度を高める上で不可欠な手続きと言えます.
計算過程:
- 間接労務費 (2,500円) の配賦:
- 総従業員数: \(30 \text{人} (\text{第1製造}) + 20 \text{人} (\text{第2製造}) + 5 \text{人} (\text{工場事務}) = 55 \text{人}\)
- 配賦率: \(2,500 \text{円} \div 55 \text{人} \approx 45.4545 \text{円/人}\)
- 第1製造部門へ: \(45.4545 \times 30 = 1,364 \text{円}\) (四捨五入)
- 第2製造部門へ: \(45.4545 \times 20 = 909 \text{円}\) (四捨五入)
- 工場事務部門へ: \(45.4545 \times 5 = 227 \text{円}\) (四捨五入)
- 減価償却費 (4,000円) の配賦:
- 総占有床面積: \(50 \text{m}^2 (\text{第1製造}) + 40 \text{m}^2 (\text{第2製造}) + 10 \text{m}^2 (\text{工場事務}) = 100 \text{m}^2\)
- 配賦率: \(4,000 \text{円} \div 100 \text{m}^2 = 40 \text{円/m}^2\)
- 第1製造部門へ: \(40 \times 50 = 2,000 \text{円}\)
- 第2製造部門へ: \(40 \times 40 = 1,600 \text{円}\)
- 工場事務部門へ: \(40 \times 10 = 400 \text{円}\)
- 各部門への合計配賦額:
- 第1製造部門費: \(1,364 \text{円} + 2,000 \text{円} = 3,364 \text{円}\)
- 第2製造部門費: \(909 \text{円} + 1,600 \text{円} = 2,509 \text{円}\)
- 工場事務部門費: \(227 \text{円} + 400 \text{円} = 627 \text{円}\)
- 部門共通費合計: \(2,500 \text{円} + 4,000 \text{円} = 6,500 \text{円}\)
- 仕訳: 製造間接費を各部門に配賦するため、部門費を増加させ(借方)、製造間接費を減少させます(貸方)。
借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 |
---|---|---|---|
第1製造部門費 | 3,364 | 製造間接費 | 6,500 |
第2製造部門費 | 2,509 | ||
工場事務部門費 | 627 |